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似た者同士

 このハムスターの着ぐるみはヒマワリの種を食べることが出来る。

 そんな無駄な機能を発見した僕は、ハム助と一緒に黄金ヒマワリの種を食べていた。


 「……前から気になってたんだけど、ハム助は何処からきたんだ?」


 もちろん卵から生まれたのは知ってるけど、生まれてからの行動が明らかに生まれたてのものではなかった。

 それに、もしかしたら着ぐるみに動物ハムスターと話せる機能も付いているかもしれない。


 「キュ~?」


 頬袋を膨らませたハム助が首を傾げる。やっぱり可愛いなぁ。


 「ごめん、ごめん。ゆっくり食べて良いよ。少し気になっただけだから」


 「キュッ」


 ……ハム助の事もそうだが、スマフロやあの男の事、これからの未来など分からない事が一杯だ。


 僕は良い未来に向かって進んでいるのだろうか?


 もしかしたら全く逆の方向に進んでいるんじゃないか?


 もしくは僕の行動なんか一切関係なく、未来は決まっているのかもしれない。


 不安が僕の中で膨れ上がるのを感じる。

 すぐにでも動き出さなきゃいけないような衝動と、動いた事で生ずる不幸な未来への想像が混じり合い、気持ちは焦るばかりだ。


 「とりあえず、こんな着ぐるみを着て考えることじゃないな。『限界突破』でシステムの壁を探って寝よ」


 僕は意外と着心地の良い着ぐるみを脱いで、無理矢理にでも寝ることを選択した。



 ピッピッ、ピッピッ……


 暗闇に光るスマホの画面に手をやり、僕は目覚ましのアラームを止める。

 ……午前3時30分か、四時間は寝たはずだ。

 起きて体を動かしてみる。


 「よし、問題ない」


 僕は静かに出掛ける準備をした。



 昨日の『限界突破』でのシステムへの探りは、無理をしなかった事もあり、ほとんど進展がなかった。

 無理をして一日中寝てた、何てことになったら大変だ。

 今日は一路君との約束もあるし、せめてダンジョン関係がもう少し安定してから試すことにしよう。


 「でも……何となくだけど壁が通りやすい気がする」


 以前は完全に拒絶されていた壁だが、何となく隙間というか糸のような繋がりを感じた。

 今度は霧ぐらいでもいけるかもしれない。


 やった方が良さそうな事や考える事など色々あるが……


 パンッ


 僕は頬を軽く叩く。


 「今やれることからだな」


 まずは扉を購入だ。

 銀色の扉を購入した僕は、玄関をでて庭の隅に扉を取り出してみる。

 純和風の庭の片隅に銀色の扉が現れたが、正直に言って似合わない。


 「異物感が半端ないな」


 シンデレラのお城に金のシャチホコが乗ってる感じだ。

 とりあえず出し入れできるみたいなので、少しの間は勘弁してもらおう。


 一応、無敵モードで扉をくぐるとそのまま通過してしまったので、普通に扉をくぐる。

 やはりというか予想道理、扉の中では白い部屋と黒い球体が待っていた。


 「さて、朝御飯までにやれるだけやっとこう」


 僕は黒い球体が変化するのを見ながら、これからのダンジョン経営をどうするか考えをまとめる。


 まず、死者を出したくない。

 閉鎖している難易度の高いダンジョン、通称ゴミ箱ダンジョンに無理矢理潜り込む人は仕方ないが、基本的に死者0を目指そう。

 なんか交通安全の活動みたいだな。


 次に楽をしたい。

 ダンジョン経営が今後の役に立つなら頑張るが、正直に言うとチマチマした建設にあまり興味がない。

 できれば自動化オートメーションでの経営が理想的なんだけど。


 そして、出来れば利益も出したい。

 欲な話だが、無償の労働は疲れる。

 攻略されたときのリスクが大きすぎるので頑張るが、目に見えるメリットも欲しい。


 つまり『安全かつ楽チンに儲ける』といった、欲望に忠実な経営を目指すのだ。


 その為には……まず質問だな。

 僕はダンジョンのサポーターさんに質問しまくった。


 ―――――――――


 「二美。ダンジョンの建設と経営をしてみないか?」


 朝ご飯を食べた後、二美に声をかけて僕の寝室まで来てもらった。

 ダンジョンマスターのレベルが上がって出てきた新しいシステム、ダンジョンの管理人へとスカウトする為だ。


 「……それ、私に出来ることなの?」


 二美は興味があるのか、少し身を乗り出して僕を見ている。


 「ああ、と言うか僕より上手なんじゃないか? 建設系や経営系のゲーム得意だろ? 昔なんか変なカクカクした人が動く3Dのゲームでも、凄い建造物を作ってたじゃないか」


 「まあ、そりゃそうだけどさ……ゲームの話だよ?」


 「こっちもゲームの話だけど?」


 「うーん……詳しく聞かせて?」


 二美をダンジョン経営に巻き込もうとするのは、それなりのメリットを知ったからだ。


 まず、二美はまだスマフロが使用できない。

 今回のアップデートでは自力で歩行出来ない人々は、良くも悪くもスマフロのプレーヤーになれなかった。

 こんな危ないゲームをやらしたくないが、前回のアップデートで何故か二美は狙われている。

 今後も狙われる可能性が有るのに、何の力もないのは危険だろう。

 僕以外にもスマフロのプレーヤーが増えたとはいえ、自衛の手段は持っていた方が良いと思う。


 次にデメリットの少なさだ。

 ダンジョン攻略時のリスクなどは、基本的に管理人ではなくダンジョンの持ち主である僕に影響を与える。

 このゲームに参加させること自体でのリスクも考えたが、スマフロのプレーヤーでないときも二美は殺されかけた。

 『ゲームに参加しない=安全』ではないのだ。


 最後に……ぶっちゃけ信頼できる協力者で二美が一番暇である。

 学校は休みにしているし、スマフロは出来ない。

 もちろん勉強や手伝いなど出来ることはしているみたいだが、本人もこの騒動の中で何か他に出来ることを探している様子だった。

 このシステムを聞いたとき初めは渡に頼んでみようかと思ったが、過労死しそうなので止めておく。


 「―――みたいな感じで、今のところ安定しているから調整だけでも大丈夫だと思うけど、正直言って困ってるんだよ。

 何かあれば相談してくれたら良いし、二美ならやれると思うんだ。

 それに今決めなくて……」


 「わかった。やる」


 「えっ? 良いのか? 不安だったら無理しないで良いんだぞ?」


 「大丈夫。任せて。私が世界一のダンジョンにしてみせるから」


 「そ、そうか。まだ父さん達に相談していないから、許可がおりてからにしような」


 「わかった。それも含めて私に全部任せて」


 どうしよう……

 凄く不安なんだけど……


 「ほら、何してるの? お兄ちゃん。お父さん達を説得しに行くよ?」


 「あ、ああ……」


 やけにやる気を見せる二美を追いかけ僕はリビングに付いていく。

 その後、二美の変な迫力に押されっぱなしの父さんは、10分後には渋々許可を出していた。

 その後ろ姿は二美のために本気で動いていた時の母さんを思い出させるもので、なんか頼もし恐かった。

 ……言わないけどね。

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