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一石二鳥



 攻略されそうなダンジョンには初見殺しの部屋を設置して時間稼ぎをしながら、僕は解決策を模索していた。


 星二つ以下のダンジョンは30ヵ所。

 これらの難易度を上げるには手持ちのダンジョンポイントが九割必要。

 そのうえ多くの人達が亡くなることになる……論外だな。


 だからって高難易度ダンジョンに人を呼び込んでも結局は人が死んでしまうのだ。

 お客さまが来ないと維持費でこっちが死ぬわけだし……


 星二つ以下でも装備品だけ放置して帰ってくれたら利益がでるのになぁ……ポイ捨て大歓迎の看板でも立てるか?


 ……ん?もしかして……


 僕は床に落ちている小石を見ながら、一つのアイデアを頭に描いた。


 ――――とにかく時間が必要だ。

 僕はダンジョンポイントの半分を使用して、時間稼ぎ用のギミック付き迷路部屋を配置する。


 全体的に狭く滑りやすい迷路。

 行き着く先は行き止まりでスイッチを配置。

 それを押すと新しいスイッチがスタート地点の壁に現れる。

 それを押したらまた別のスイッチが……みたいな感じで配置した。

 謎解きとしては単純だが、とにかく時間がかかる部屋だ。


 二つ以上のスイッチを使った謎解きや行き止まり以外でのスイッチの設置は、ダンジョンポイントを大量に消費してしまう。

 仮に低ポイントで解けない謎を作れたとしても、タイムリミットは最大で3日後なのだ。

 試行錯誤している時間が惜しい。

 今回の改造で半分のポイントも消費して、タイムリミットは一日と半分以下になってしまった……せめて半日は持ってくれよ。


 ダンジョンが攻略されませんようにと祈りつつ、僕はマスタールームを飛び出した。



 「渡!聞こえるか?」


 渡を呼び出しながら移動を始める。


『聞こえてるぞ。どうした?』


 「ゴミが必要なんだ!集めて指示したダンジョンに捨ててくれ!」


『……すまない。ゴミをダンジョンに捨てろと言ったのか?』


 「そう言ってる!時間がないんだよ!理由は説明できないけど、とりあえず持っていって良いゴミの確保とゴミをダンジョンに捨てる人員も頼む」


『了解だ。ゴミを捨てるダンジョンを教えろ。ゴミの種類に希望はあるのか?』


 「ゴミの種類はいろんなタイプをお願い。場所は……」


 僕はアイテム持ち込み可能にした様々な難易度のダンジョンを渡に教えた。


 「扉は開けておくから裏側から投げ込んどいて。表側からも10Kgぐらい投げ込んどくか……高難易度ダンジョンには保険で『結界』を『人』指定で設置しとくけど絶対に入ったら駄目だぞ。本気で死ぬからな!」


 特にアイテム持ち込み可能にした星10のダンジョンは、生身かつ状態異常(ランダム、回復無し)の即死級ダンジョンになっている。


『立ち入り禁止、と。ダンジョン入口に『結界』を張るのは初めてだろ?検証してなくていいのか?』


 「あっ、そうだね。低レベルで検証しとこう。いや、結界を全面でなくて扉を囲む壁のようにコの字型に配置しとこうか?」


『安全対策はこちら側に任せてみないか?未知の技術に頼るよりは安全に出来るはずだ。

 ダンジョンの出入り口に関するデータもあるしな。コンクリートで完全封鎖とか、結構色々やってるとこもあるぞ?』


 「そんなことしている所もあるの!?」


『ああ、様々な実例を元にした安全対策が可能だと思う。どうする?』


 「わかった。それでお願い。あと、少くなったら喜ばれる生物っているかな?」


 渡のおかげで思ったより時間が出来そうだ。

 可能なら生物も試してみよう。


『ヒアリとかカミツキガメみたいな奴か?たしか離島ではヤギもそうだったはずだが……侵略的外来種ワースト100選定種のデータを送る。

 ついでにダンジョンで消費しても良いように手続きもしとくぞ。指定した範囲内にいるそいつらは好きにしても構わん。文句どころかお礼状が届くぞ』


 「渡……ありがとう」


『ん?必要だからやるだけだ。もしイチがいきなり外来生物の横暴に憤りを感じただけなら言ってくれ。仕事をくれたお礼にネット上に写真集ばらまくから』


 「そんなわけないだろ。何があったらそんな心境の変化が起きるんだよ……」


『いや、思考の誘導とかでな……うっ、駄目だ。俺にも思考の誘導が……イチの恥ずかしい秘密を暴露したくなってきた』


 「絶対お前の意思だろ!」


『うっ……全部終わってクリスマスになったら……二人で遊びに行かないか?』


 「はぁ?何をいってるんだ?

 男二人だけでクリスマスの約束するぐらいなら家族で祝うよ」


 やっぱり調子が悪いのか?

 いつもの渡なら僕の恥ずかしい言動を的確に攻めてくるはずなのに……


『嘘に決まってるだろ。相手のいないイチをからかっただけだ。

 ……いくつか駆除の許可が出た。誘導する』


 「了解。渡、体は大丈夫なのか?」


 渡の指示に従って僕は移動を開始する。


『イチの頭の中よりはまともだな』


 「なんだよそれ。言っとくけどゴミ捨ては考えあってのことだからね」


『はいはい。将来は害獣駆除と産廃処理の革命児でテレビに出られるんじゃないんですか?

 ダンジョン経営と環境の一石二鳥の作戦を考えていたとは、流石イチ様!!』


 「……ダンジョン経営についての話はしてなかったよね。絶対バカにしてるよ……」


 それから僕はゴミや駆除の許可が出た生物を『結界』で囲ってダンジョンへと送り続けた。

 他の人員も配置に付き、ゴミが安全にダンジョンへと捨てられているのを確認してから、僕は銀色の扉へと走り出す。

 時間を確認するとダンジョンのマスタールームから出て、3時間が経過していた。


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