敵は……
「……ダンジョンってこんなに白かったけ?」
いままで攻略してきたダンジョンとは全く違う風景に驚き、誰もいないのを知りながらも思わず疑問を投げ掛ける。
「渡から聞いていたリニューアルされたダンジョンとも雰囲気が違うみたいだし……」
『心眼』や『罠発見』『宝箱感知』に『限界突破』を掛けながら周囲を見渡すが、危険も宝もないようだ。
とりあえず『地形無視』×『限界突破』は発動させながら中央にある黒い球体に手を触れる。
すると黒い球体がウネウネ動き出し、横幅が1m程の長方形に変化した。
その変化に対して身構えていると、変化した黒い長方形がディスプレイ画面のように画像を映す。
「えっと、ダンジョン育成ゲーム……」
目の前に表示された文字を確認していると、画面から声が聞こえてくる。
『マスタールームにようこそ。この部屋では攻略済みダンジョンの各種設定や改造、育成などを行うことが出来ます。現在あなたが所有しているダンジョンは110ヵ所です。疑問点があればどうぞご自由に質問してください』
……逆に疑問点しかないのだが。
僕は分からないことはもちろん、理解しているであろうことも一応質問していく。
なんせ初めての経験だし、こちらの常識がダンジョンでは非常識なんてことがあるかもしれない。
知った気になって行動するのは、知らないで行動するより危ないのだ。
――それから一時間以上は質問を繰り返し次の事が分かった。
1:ダンジョンを改造、操作、育成するにはダンジョンポイントが必要。
2:ダンジョンポイントはダンジョン内に他の生物が滞在するだけで時間と共に貯まる。貯まるポイントは生物のレベル(微生物はカウントしない)に比例する。
3:ダンジョン内で生物が死亡するとポイントが多くもらえる。
4:装備品などの持ち物は所有者が死亡、もしくは放棄して一時間以上経過するとダンジョンに飲み込まれてポイントになる。
5:ダンジョンの難易度が高い(星が多い)ほどポイント獲得量が多く、格安で様々なものを設置できる。
6:アイテム持ち込み不可やレベル0、職種無し、特殊能力リセット、倒されたときの状態、時間の流れ等々の制約をもうけることでダンジョンの難易度が決定される。
7:ダンジョンを所持していると、時間経過で勝手にダンジョンポイントを消費してしまう。
なお、ダンジョンポイントが無くなるとダンジョンは自動的に放棄される。
まだまだ聞いたことはあるが、基本的にダンジョンは入って来たものを喰ってポイントに変換し、それを元手に色々していく様になっている。
そして所持しているダンジョンを他人が攻略、または自分で放棄すると管理側にペナルティーが発生し、レベルや特殊能力と装備品、命などをロストしたりするらしい。
……最後のロストは厳しすぎないか?
「うーん……どうするべきか」
いや、何をしたくないかだな。
人が自分のダンジョンで死ぬのは嫌だろ。
だからってダンジョンを簡単にして攻略されて死亡……なんてことは避けたい。
事情を説明するにしても、また頭の楔君がお仕事してるよ……ってヤバい!
所持してる星一つダンジョンが80%攻略されている。
あっ!こっちの星二つダンジョンは85%だ。
一日しか経ってないのに頑張り過ぎだろ!
星一つと星二つの倒されたときに発生する制約は……移動距離半減とアイテムロスト。
……よし、追い出そう。
僕はせめて痛くはないように、眠ったままご退場できる初見殺しの部屋を作成した。
―――――――――――
……これはダメだ。
ダンジョン経営的には難易度が低いと赤字になってしまう。
なんせ低難易度ダンジョンは、何をするにもポイントが多く必要な上にリターンが少ない。
星三つレベルで損得無しか、少し利益が出る程度である。
それなのに人気があるのは星二つ以下……
このまま行けば三日後には破産&ペナルティーで死亡だぞ。
……倒しても倒しても復活してダンジョンに群がる人達がゾンビの集団に見えてきた。思わず難易度を上げてしまいそうになる。
せめて使いやすい星三つと星七つに設置制限が無かったら、怪我人覚悟で時間稼ぎするのだが……
あっ!また80%越えてるよ。
まさか安全思考で頑張り屋の日本人を敵にすることがこんなにキツいとは……
どうしよう。




