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説明

 猪熊先生の家に戻った僕は、みんなに『夢所』の能力について説明した。

 なんせ10秒未満とはいえ電話中に突然消えたのだ。

 元気な声で会話していたので部屋の中まで僕の声が聞こえていたらしく、会話の流れからまず大丈夫だと思われていたけどね。

 けど、家族的には少し心配したようだ。

 最近の僕の行動を考えると無理もないか……

 逆の立場だったらそうとう心配してるもんな。


 その後、僕は一路君の状況や過去の話、そして今後について皆に話した。

 もちろん一路君からは承諾を得ている。


 「――――といった感じで話を進めてみました。一路君が二菜ちゃんに説明するので明日連絡をくれることになってます」


 一路君の心の整理も必要だったのだろう。

 自分の重荷を他人と分けあうのは結構勇気がいる。


 「断りもなく先に一緒に暮らす約束をしてしまいました。相談していたら一路君が遠慮しそうな気がしたので勝手に話を進めたのですが……渡、知ってたよね?」


 『一路についてか?もちろん調べてある。転校でも養子縁組でも即日完了状態だ。ちなみにこの中で知らなかったのイチだけだな』


 ……そんな気はしていたよ。

 周りの顔を見るとみんなニッコリ笑顔だ。


 「……で、どんな案がある?」


 『養子縁組は様子見での方が良いだろう。相性の問題もあるしな。移住場所の候補としておっちゃん所の離れを用意してるが、マンションも確保している。一応イチの家も大丈夫だが、メディア関係が落ち着くまで数日は欲しい』


 僕の家と顔は世界中に放送されて、動画もネット上にあふれている。

 そのせいで猪熊先生の家に御厄介になっているのだが、そんな大注目の家に一路君達をご招待するのは火に油だ。


 『予想以上に関係が良好なら初めから一緒に生活することも視野にいれているが、焦る必要はないだろ?』


 「いきなり環境が変わり過ぎてもストレスが大きくなるだけだしね。いきなりの話だったけどみんなに無理させてないかな?」


 僕は顔色を伺いながらみんなに問いかける。


 「わしの所は問題ない。子供もとうに家を出て部屋も余ってるからな。咲さんも楽しみにしてるが縁があればって奴だな」


 猪熊先生はニヤリと笑いながら目を光らせた。

 たぶん先の見えないこの状況を楽しんでいるんだろう。

 冒険とか好きそうだもんな。


 「渡君から先にこうなるかもって話を聞いていたからね。家も問題ないよ。お世話になったようだし、必要なことだろうから……正直な話、初めての事だから自信はないけど、一路君達が選択したならお互いに幸せになれるよう精一杯対応させてもらうつもりだよ。ね、母さん」


 「ええ、でもいっちゃんが二人になったら何て呼ぼうかしら?」


 もっと別の問題が山ほどあると思うんだけど……母さんならしかたない。


 「私も大丈夫だよ。こう見えても子供から人気があるんだから。今度からはお姉ちゃんって呼んでよ?」


 いや、仮に一路君と兄弟になったとしても二美が僕の姉になる訳じゃないからね……


 『難易度の問題を除けば一路の力を借りられるのはデカイ。いろいろと検証がはかどりそうだな。とりあえず幼稚園のことを含めてこっちで出来ることはしとくから、イチはイチにしか出来ないことをしていくぞ』


 「……それって恋愛ゲームのこと?」


 『それも含めた色々だ。ダンジョンもリニューアルしたみたいだし、これからもゲーム三昧の生活だぞ。人も羨む夢の生活だな。英雄』


 「……悪夢だ。夢なら早く覚めてくれ……」



 それから僕はみんなと少し話をして、ダンジョンに出掛けることにした。

 移動のついでに何体かモンスターを倒して行くつもりだ。

 家族の見送りを背に00023のダンジョン、熊怪獣のダンジョンを目指して走っていると胸元から声が聞こえてきた。


 『ダンジョンの情報を集めてみてるが、難易度が星の数で表示されるらしい。星一つはチュートリアルだな。倒されても移動距離半減するだけで出てこれる。星二つは倒されたときアイテムのロストと移動距離半減、星三つはそれに大怪我を加えたもの、星四つは……倒された者の話はない』


 「それって……」


 『普通に考えたら命をロストしたんだろ。星10まであるらしいが果敢にも星9に挑んで生還した猛者がいる。動画付きでなかなかの再生数だぞ』


 「えっ?星9?どうだったんた?」


 『入ったとたんに入口が消えてレベル0からスタート。移動距離5km、アイテム無しで職種は有り。ショップ使用不可。

 初めはスケルトン5体と戦って逃走。逃げ込んだ先に宝箱があり、開く暇もないので宝箱をいつの間にか数が増えたスケルトン12体に投げつけると爆発。爆発の余波で怪我をするが、爆心地に謎の黒い球体があったので拾う。

 爆発の音を聞きつけたのか団体さんがご到着で黒い球体を使用。それが帰還用のアイテムだったらしく生還ってとこだ』


 「それはまた……大変な場所だね」


 『そうだな。例えるならローグ系、不思議のダンジョン系だろう。命をチップにするには、なかなかの鬼畜難易度といえる。

 星七つのダンジョンは同じ仕組みだが、アイテム鑑定有りでやられても大怪我だけで帰還できる。だが再入場にはある程度の時間経過が必要とのことだ。

 職種や本人の能力はもちろん、確実に必要なのはある程度以上の運といった感じだな。ちなみに星8以上に行くと宣言して行方不明になった人数は、わかってるだけで36人だ。実際の数は最低でもその5倍はいるだろう』


 「……世の中は広いんだね」


 命をチップに謎だらけのゲームに身を投じるとは……


 『本物の冒険ゲームには危険が付き物なんだろ?そのうちイチも参加する可能性が高い。小さい頃の将来の夢が叶うかもな。頑張れよ、冒険家』


 「期待で胸がはち切れそうだよ……」


 なぜ僕は冒険家なんて夢見てたんだろう。

 たぶん本当の危険を想像できなかったんだな……



 それからスケルトンや芋虫を数匹倒して体とスマフロの調子を確かめた。


 「うん、問題ないようだね」


 『……確かにいまのところ問題はなさそうだな。だが『限界突破』でシステムの壁を乗り越えた影響があるかもしれん。検証はしたいが無闇に使わない方がいいかもな』


 「もう一度成功するとは限らないし、できれば二度とやりたくないから嬉しいけど……大丈夫かな?」


 もしもの時にぶっつけ本番でやるのも怖いしなぁ。


 『まずは『限界突破』を二、三回重ねてシステムの壁を探る程度にしとけ。耐性も付くかもしれんしな。

 あと、HPは買わない方向で行くぞ』


 「えっ?買わないのか?便利そうだと思うけど」


 説明を読んだ感じ、欠点はなかったのに……


 『普通は買うだろうな。でもイチに望むのは普通の強さじゃないからな。キツいがスマフロのバグを探して行く方向だ。初心者でもしないような事を真面目にやるぞ』


 「……了解。これでスマフロの運営側に悪気がなかったら、ただのバカだね」


 『ああ、だが運営側はバカな行動を好む筈だ。装備とダンジョンの傾向からもまず間違いない。……そろそろダンジョンに着くが、他にしたいことや話したい人はいないのか?』


 「縁起でもないこと言うなよな。……いまのところは大丈夫、かな」


 『……そうか。ならダンジョンに入る前の準備と対策をはじめるとしよう』


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