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会話2

 


 知らない間にスマフロの関係者から興味を持たれ落ち込む僕に、渡は笑いながら声をかけてきた。


 『そうだ、イチ。お前、最後の攻撃どうやった?俺の聞いた話ではあんな攻撃出来なかったはずだが……』


「……ああ、アレか。アレは―――」


 僕は渡に褒められ、猪熊先生と咲さんには笑われ、家族には心配された。


『くっくっ、そうか……そんな方法でシステムの壁を越えたか……イチ、スマフロを起動して全部調べてみろ。何か少しでも変化があれば報告だ』


「わかった……ん? HPが移動距離で買えるって」


『それは今回のアップデートから始まった機能だ。HPが無くなるまでは身体的な攻撃が無効になるみたいだな。後で予測と鑑定』


「了解。……特殊能力の横に【好?? 30】【友?? 40】とかが表示されてるよ。『限界突破』は【好?? 70】【友?? 75】だね。それぞれ数値が違うみたいだ」


『なにっ? 確か移動距離は1万km以上あるって言ってたな。……『鑑定』と『予測』をかけろ。『録画』を忘れるなよ』


「わかった。『カウントダウン』発動。……だめだ。文字化けして読めないぞ。解読をやってみようか?」


『いや、とりあえず文字化けのまま見せろ。……よし、『解読』頼む』


「……駄目だ。少しも変化なし。『予測』も無理みたいだね」


『……修正しきれないバグか……表示されるということは、もともとバグも想定してるのか? なら……』


 渡が考え事をしている間にスマフロの変化を調べたが、後は特殊能力に『?』が一つ加わっていただけだった。

 こちらも『鑑定』『予測』とも変化なし。


『すまん、イチ。他に変わったことはないか?』


「後は特殊能力に『?』が一つ増えたぐらいかな。その横には【好??】【友??】は付いてないよ。鑑定しても文字化けすら出なかった。あとは……あっ! そういえば変な夢を見たぞ」


『夢? どんな夢だ?』


 僕は夢の内容を説明した。

 様々な世界の人々や動物がスマフロを手に入れ、それに翻弄される夢だ。

 関係ないかもしれないけどね。


『そうか……それなら繋がるか……』


「なんか役に立った?」


『ああ、たぶん【好??】【友??】は好感度と友好度的な意味合いだろう。あくまで予想だが、特殊能力はもともと異世界の人や動物だった可能性がある。イチがシステムの壁を越えた影響で記憶の閲覧が可能になったのかもしれないな』


「そ、それならあの夢は……」


『その夢は特殊能力の過去……たぶんスマフロは今まで何度も違う世界で行われたゲーム……だな』


 渡は自分の考えをまとめるかのように呟いた。


 スマフロが違う世界で何度も行われた?


 ……たしかにスマフロはよく出来たゲームだ。

 何度も不具合を確認したかのような所も説明がつく。

 でも、特殊能力がスマフロに巻き込まれた人や動物だったってことは……


「……僕達も特殊能力に組み込まれる」


 『その可能性は高い。特にイチはその候補の筆頭だろう。鑑定出来ない特殊能力を発現したからな。夢の終わりはどうだった?』


 夢の終わり……夢の終わりは……


「アップデートが終わって世界は活気に溢れる所で終わりだったような……

 いや、歌姫の夢だけは真っ暗な空に黄金色の目が見えたところで終わりだった」


 『それは殺されたってことか?』


「いや、その場面で途切れた感じだった。戦ってもない状況で終わるんだ。見た瞬間に死んでしまうのなら殺られたってことになるけどね」


 『勝てそうか?』


「……目隠しして戦おうか?」


 見た瞬間に死ぬなら、見ないで戦うしかない。

 『心眼』でも駄目かな?……試したくはないけど。


 『……最優先事項はそのイベントだな。現実世界は後回しだ。それと並行して神様への対策を行う。相手は通常の手段では太刀打ちできない。普通に戦えば間違いなくゲームオーバーだろう。

 したがって、ゲームの穴を突きつつ、神様を接待しようと思う。神様はイチの言動を楽しんでるみたいだから、もっと楽しくしてやろう。な、イチ?』


「えっ?なにするんだ?」


 なんか打ち合わせしてたっけ?


『くっくっく、好感度と友好度が出てきてるんだぞ。恋愛ゲームに決まってるだろ?』



「………………はい?」



 ………渡は何を言ってるんだ?



「恋愛ゲーム……ってゲームの中で恋愛して告白するアレか!?」


 『ああ、きっと面白がるぞぉ。あの装備品にあのダンジョンを用意した性格だしな。くっくっく』


「わ、渡が面白がってるだけだろ! それに夢に出てきたのは女の子だけじゃないんだぞ! おじさんやお爺さん、犬や子猫もいるんだよ!?」


 『わかってる、わかってる。英雄色を好むってやつだろ?さすがイチ様。守備範囲も英雄級とはな』


「わかってないから! 勘違いを深めているだけだから!」


 守備範囲ってレベルじゃないぞ!


「お兄ちゃん! 私はわかってるよ!」


 おお妹よ。こんなところに味方が……


「どんな物体を連れて来たって、私はお兄ちゃんの気持ちを尊重するよ」


 違った! 敵だった!


 『まあ聞け。位置情報恋愛ゲームだ。当然、数々の有名なデートスポットに行き、画面に向かって愛を語ったりしなくちゃいけないはずだ。

 難易度の件があるから周囲にミッションのことは極秘だな。俺も楽し……いや、辛いが皆の為だ。頑張れよ、イチ!』


「それって恋愛ゲーム!? 罰ゲームだよね!?」


 僕は思わずノートパソコンを両手でつかんで揺らす。


「英雄って苛酷なんだね……頑張ってお兄ちゃん。お兄ちゃんなら勝てるよ!」


 二美は両手を胸の前で組んでお祈りのポーズをとっている。


「何に勝てばいいんだよ!? 罰ゲームに勝ち負けってあるのか!?」


 『くっ、さすがに恋愛系のプロフェッショナルは呼んでないな。イチ、本当にすまん』


「謝る場所が違うだろ!!」


 画面越しに渡は考えてる振りをして言葉を撰ぶ。


 『……顔ださなくてゴメン?』


「なんでこの状況で顔見せを気にするんだよっっ!!」


 駄目だ。渡も二美も面白がっている。

 この二人が手を組んだら最悪だぞ。


 そのとき、手を叩く音が2回聞こえた。


「おい、わた坊。それぐらいにしとけ。まだ話すべきこともあるんだろ?」


 猪熊先生の声が静かに響き渡る。


 『うっ……わかった。真面目にやろう。今後のイチの行動だが……俺はバグを攻めながら、ダンジョンでレベル上げをしていくのがベストだと考えている。

 あの男、スマフロの運営側を楽しませるのも本気だ。後はイベントを探りながら、強力なプレーヤーが犯罪行為をしたときの保険になってもらうぐらいか……別の意見があれば言ってくれ』


 さすが猪熊先生だ。

 あの状態の渡を真面目モードにするなんて……僕も手を叩く練習しようかな?


 ――その後も、多少の意見は出たがおおむね渡の計画が採用された。


「ま、わた坊はふざけて言ってたが、綻びを攻めるってのは普通に有効だからな。ゲームの力だけで勝てるなら一路って坊主が最強なんだろ?

 それでも戦いにならないなら戦わないで調略ってのも定石だ。それで一路って坊主はどうする? あの男はいち坊と戦わせたいんじゃねえのか?」


 『そうだな……英雄と悪魔の対決は充分ありえる話だ。そちらの対策も並行してやっていこう』


「戦いはできるだけ避けよう。気持ち的にもだけど、勝てる気がしないよ。……もうそろそろ一路君に連絡したいけど気を付ける事あるかな? できれば正直に全部話したいと思うけど……」


 『この状況で無視の選択は無いか。……一路は相手の感情を読み取る能力持ちだ。いや、最悪思考すら読める可能性もある。イチの希望通り正直に話して信用を勝ち取るのもありだな。

 運営側の動向が気になるが、不都合なら楔みたいにアプローチをかけてくるだろう。その時は……イチの主人公補正に期待だな』


「……了解。あと僕的には主人公というよりピエロだけどね」


 『ならピエロ補正に期待だな。しっかり笑わせてくれよ?』


 画面越しにニヤニヤしている渡の顔が見える。

 思わずため息をつく僕に猪熊先生が話しかけてきた。


「一路って坊主がいくら強かろうが、いち坊が人生の先輩ってのはかわらん。腹に肝すえて自然体で迎えてやれや」


「……はい!」


 確かに一路君はまだ小学二年生なんだよな。

 まずは落ち着いて、一路君を安心させてあげたい。

 そしてきちんとお礼を言おう。


「大丈夫だよ。お兄ちゃんは失敗しても面白いから」


 二美が笑顔で声をかけてくる。


「一がお世話になったのなら、父さんからもお礼を言わなきゃな」


 父さんが少し真面目な顔をつくって、コホンと咳き込んだ。


「いっちゃん、一路くんはどんなお菓子が好きなのかしら?」


 母さんが咲さんと小学生が喜ぶお菓子について話していた。


 僕は家族といる日常を久しぶりに実感し……少し鼻をすすった。

 それに気付いた父さんが、母さんと二美をつつく。

 そして、三人でこちらを向くと息を合わせて


「一」

「いっちゃん」

「お兄ちゃん」

「「「おかえりなさい」」」


「…………ただいま」


 これは……卑怯だよ。

 僕はたぶん変な顔で笑っているのだろう……


 みんなが優しい目で僕を見ていた。

 ノートパソコンからも祝福の声が聞こえてくる。


 『よかったな。いっちゃん』


「……いっちゃんって呼ぶな」


 部屋は笑い声に包まれた。


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