白い靴
興奮が収まってきた僕は宝箱から下りるとスマホを手に取った。
さて、そろそろ宝箱を開けるか……
宝箱に片手をかけ押し上げると、中には羽の生えた白い靴があった。
これは……駄目だろ……
羽の生えた白い靴を履いた高3男子。
人が避ける効果と職務質問率upなどの多数の効果が期待できるね……
そう思ってげんなりしていると、痛い靴が宝箱から飛び出して僕の足に迫ってきた。
しまった!罠だ!
必死に後ろ向きに飛びだすと……えっ?予想より飛んでないか?
少し体勢を崩したが、なんとか体勢を持ち直すと僕は逃げ出した。
あきらかに先ほどより速度が出ているぞ。
走りながらカーブミラーをスマホ越しに見てみると白い靴が飛んで来ていた。
追ってきてる!
僕は少し遠回りをしながらも全速力で家に向かった。
火事場の馬鹿力だろうか、少し苦しかったが凄いタイムで家に着いた。
「ハァ、ハァ、カ、カギ……」
カギをポケットから取り出しカギを回すと扉を開けると、素早く中に入り扉を閉めて鍵をかけた。
「ハァハァ……たっ助……かった……」
膝に両手を当てて息を整えていると、母さんがやってきた。
「あら?いっちゃん、おかえりなさい。そんなに疲れて……何かあったの?」
「ハァ……大丈夫。少し、ペースを、早くしただけだから…」
スマホのゲームに詳しくない母さんに、白い羽の生えた靴に追われたなどと言ったら余計に心配するに違いない。
僕なら冗談じゃないとわかった時点で、家族会議の後に病院コースで心配する。
呼吸が少し落ち着いたので、軽く整理体操をして家に上がった。
母さんが持ってきてくれたタオルで顔を拭く。
母さんにお礼を言った後に、リビングを通り台所に行った。
そして、いつもの様に冷蔵庫を開けて豆乳と麦茶を飲む。
リビングに戻るとお風呂から上がったばかりであろう二美が、パジャマでミネラルウォーターを飲んでいた。
父さんはもう寝室かな?
「お兄ちゃん。今日はやけに急いで帰ってきたんだね?母さんが言ってたよ」
「そ、ああ……ちょっと限界を攻めてみた」
ゲームのことを言ってしまいそうになった。
あぶない、あぶない。
兄ちゃんは約束を守る男だぞ。
「ふ~ん……まっいいか。お風呂空いたよ?」
「おお、ありがたい。すぐに入るよ」
二美が少し怪しそうな目でこっちを見てくる。
このままではついついゲームのことを話してしまいそうだ。
その前にさっさとお風呂に入ろうと、僕は脱衣場に逃げ込んだ。
脱衣場で服を脱いで最後の一枚に手を掛けようとしたとき、ふっと思い付いたかのように足元をスマホで見てみた。
「うわっ!いつの間に!?」
僕の足に白い靴が履かされていた。
驚いて後ろに下がると、棚に背中をぶつけていくつか物が落ちてくる。
しまったと思いながら、落とした物を片付けていると声が聞こえた。
「いっちゃん?物音がしたけど大丈夫?」
「あっごめん。少し物を落としただけだから大丈夫だよ」
「そう?なら良いのだけど無理しちゃ駄目よ」
「だ、大丈夫だよ。ありがとう母さん」
たぶんスマホ越しでないと見えないだろうが、万が一の確率でも母さんにこの姿を見せる訳にはいかない。
パンツ一枚で白い羽の生えた靴を履く息子を目撃した親の気持ち……理解はできないがとても良くないものだろう。
優しくされても辛く当たられても、今後の生活がとても苦しくなるに違いない。
その後、僕は装備品の映像化OFFを探し当てるまで、パンツ一枚でスマホを操作した。




