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楽しむ

 コンビニの中で一息ついた僕は、先ほどの出来事を思い返していた。


 確かに周りには誰もいなかったはずだ。周囲に隠れる場所もない。


 飛び道具?


 僕が立っていたのは中央広場の中心に近かったはず、左側の茂みは30mは離れているぞ。

 腹部に受けた衝撃は砂を詰めたバスケットボールの様だった。

 ポケットに意識を向けた一瞬で到達するぐらいの飛び道具だったら今頃は……


 しばらく考えた僕は、とりあえず猪熊先生に話してみようとスマホを取り出した。

 すると、スマホの画面に『ダークビットと戦闘』『ダークビットから逃げ出した』と書いてある吹き出しが見えた。

 まさかと思いながらも吹き出しをタッチしてみると、戦闘の詳細情報が出てくる。


 「なんてこった……」


 落ち着いた僕はコンビニを出て、スマホを確認しながら青い丸が表示された臨海公園に向かった。



 そして何事もなく公園に着き、中央広場に近づくとスマホは自動でカメラモードになった。

 画面越しに黒く丸まった何かが見える。

 画面から目を外し、自分の目で中央広場を見てみるが何も見えない。

 もう一度画面を見たら黒い何かがこちらに向かって移動してくる……


 ウサギだ!


 赤く光る目をした黒いウサギは速度を上げながら僕に頭突きをしてくる。

 僕は体を半身にして横に避けると、さっきまで僕の腹部があった場所を結構な速度で横切るウサギ。

 僕は横切ろうするウサギの横腹を手で押してみた。


 か、感触がある!?


 横から押されたウサギは着地に失敗すると少し転がった。

 僕は画面と自分の目で交互にウサギを確認するが、やはり画面越しでなければウサギは見えない。


 その後も何回かウサギを避ける、触る、確認するを繰り返す。


 毛の感触まで再現しているのか……まるで魔法だな。

 科学が発達していくと魔法と変わらない……か。


 先ほどから胸の奥であふれようとする何かがある。

 心臓の鼓動を体全体で感じる。

 鼓動が速く大きいためか、体中のエネルギーが膨らんで発散できる場所を探している。

 口は震え、声を出すと叫び出しそうだ。


 充分ウサギを触った僕は、触る代わりに震える指をスライドして魔弾石をウサギに当ててみた。

 するとウサギは光る霧のように消えていった。


 その光景を見たままの姿勢で、僕はしばらく固まっていた。

 するとスマホからポーンと音が鳴る。


 はっ!と気付きスマホを確認するとと『ダークビットを倒した』『レベルアップ』『初回討伐限定宝箱』等の吹き出しが表示されている。

 地図上の青い丸が消えていることを確認すると、カメラモードにしてウサギが消えた位置を見てみた。


 木でできた宝箱がある。


 「……う、うぉぉぉぉぉ!」


 僕は変なガッツポーズをとりながら、子供の様に跳び跳ねた。


 凄い!凄い!凄い!


 この感動や興奮をいろんな言葉にしたいが、脳が凄い以外の言葉を出してくれない。


 そりゃ冥王星まで行くはずだよ。

 まさか自分がこんなにも世の中から取り残されていたとは……恥ずかしくて皆には言えないな。



 しばらくして宝箱に手を伸ばしてみたらやはり感触がある。

 手で叩くとスマホから音がでて少し笑えた。

 そして手以外でも触ることができるか確かめた。

 結果はどこでも可能、スマホを地面に置いて宝箱の上に上ることもできる。

 見た目は空中に浮かんでいるので、いろんなポーズをとってみた。

 是非とも写真に撮って欲しいところだ。


 妹よ、兄は楽しんでいるぞ。


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