守護獣
僕の左手に現れた守護獣の卵は、淡い光を帯びていた。
その光が段々と強く眩しくなっていき、卵を持つ左手に胎動のような震動をドクン……ドクン……と感じさせる。
そしてその胎動に合わせるかのようにピシリ……ピシリ……と卵にひびが走り出す……
僕の心にもその胎動が伝わってきたようで思わずゴクリと咽をならした。
ピシ……パリ……パリ……バリ……
卵に走ったひびは徐々に幅を広げ隙間になり、そこから何かモゾモゾ動いているものが見える。
僕が卵にスマホを近付けて確認しようとすると、かぱっと卵の上半分がずれ落ちて、中から手のひらサイズの可愛い黄金色のハムスターが現れた。
「……ハ、ハムスター、ハムスターが出た……」
まん丸の焦げたお餅のようだったハムスターは立ち上がると、鼻をクンクンさせてキョロキョロ辺りを見渡している。
そして、僕の存在に気付いたのか目を細めて「キュッ」と鳴いて頭を下げた。
ダメだ…… この守護獣はヤバイぞ。
……僕はこのハムスターに守護されるのか?
……無理だ。
どうみてもこの守護獣、守護される側だよ……
あっ、敬礼したぞ。
僕は今目の前で起きている現状をそのまま渡に話した。
すると渡は少し黙った後に大きな声で笑い出した。
『くっくっく、はっはっはっ……はぁー…… 久々にここまで笑ったぞ。くっくっくっ……そうかハムスターか、くっ……イチにはぴったりだな』
「えっ? 僕ってそういうイメージなの? って違うよ! 守護獣だよ。守護獣」
『ああ、そのハムスターに守護してもらえ。良かったな、イチ。くっくっ』
「無理だよ! 手のひらサイズだよ! 焦げたお餅だよ!」
僕の言葉が不満なのか、僕の左手の上でハムスターが頬を膨らませて片足をテシテシさせている。
僕はこの瞬間、この子を守ることを心に決めた。
『まあ待て。とんでもない能力があるかもしれんだろ。とりあえずスマホで調べてみろ。虹色チケットも使えよ』
いまだに頬を膨らませているハムスターを見ながら、僕はスマホで守護獣の情報を探した。
あっ! もしかしてこれか?
ハムスターをカメラモードで確認するときだけ出てくるドラコンのマークを、僕はタップしてみた。
『名前をつけて下さい』
『守護と幸運のハムスター:よく走ります』
やっぱりハムスターなんだ……
守護と幸運は良いけど、良く走りますって何だ?
とりあえず名前か……
「ハム助……とか?」
僕がぽつりと呟くと『ハム助で登録しました』と表示が変わった。
あっ、まあ良いか。
僕が渡に情報を伝えようとすると、ハム助が高速で両足をテシテシしだした。
頬は膨れて目も少し恐い。
渡に現状を説明すると『メスじゃないのか?』と言ったので、僕はおそるおそる「もしかして女の子ですか?」とハム助に聞くと高速で頭を上下させる。
しまったと思い、スマホを操作したが一度決めた名前は変えることは出来ないようだった……
機嫌を直してもらうためにも僕はショップ画面を開き、虹色チケットを使用する。
するとスマホから空中に回し車が飛び出した。
ハム助は僕の左手から空中に浮かぶ回し車に飛び移ると、怒りをぶつけるようにかなりの速度でカラカラ走り出す。
スマホを確認すると移動距離がぐんぐん増えていた。
「おお、凄いぞハム助」
僕が声を掛けてもハム助はフンッと向こうを向いたままだった。
どうやらハム助に嫌われてしまったようだ……
落ち込む僕をカメラで確認したのか、渡が僕に声をかける。
『そんなに落ち込むな。イチ。人間サイズの回し車も探せば……おっフランスのホテルにあるぞ。良かったな!』
「なんで僕が回し車を羨ましがらなきゃいけないんだよぉぉぉ!」
抗議の声をあらげる僕を尻目に、ハム助はカラカラと回し車を回していた。




