死亡フラグ
ピピピ……ピピピ……
朝6時30分にセットした目覚まし時計のアラームを止めながら、僕は少しだるさを感じさせる動きでゆっくりとベッドから起き上がる。
昨日寝たのが深夜の2時前だから4時間30分ぐらいは寝れたか……眠い。
スマホを充電器から外し、メールを確認する。
渡は今日も学校を休むらしい。
僕は感謝の気持ちと罪悪感を渡に感じながら、眠気を覚ますように頬を叩いた。
さあ、まずは洗面所で顔を洗って朝食だ。
「おはよう」
「ああ、おはよう。一、昨日は遅かったようだけど体は大丈夫かい?」
「大丈夫だよ、父さん。ちょっと眠かったけど、今日は遅くならないと思うから」
「……やはり、理由は言えないか?」
「うん…… ごめん」
頭の楔を避けながら説明はできるけど、それはアップデートの前で良いだろう。
余計な心配を掛けたくない。
僕がそんなことを考えていると、重い空気を変えるためか二美が少し大きな声でつぶいた。
「あーあ、お兄ちゃん。今日から学校お休みか~」
「はっはっは、うらやましいか? 二美。でも、今日は学校に行って先生とお話をする予定だぞ。代わってくれるのか?」
「学校行くの? うえ~、お兄ちゃんって真面目だよね。私なら父さん達に全部まかしちゃうよ」
「人との正しい繋がりは己の力になる。猪熊先生にこれも護身術の一つだって教え込まれたからな」
「うっ、言ってることは分かるけど~」
そんな話をしながら僕は朝食を終えて、学校に行く準備をする。
この制服を着るのも最後になるかもしれないんだな……
僕はハンガーに掛けてある制服を見ながら、寂しいような懐かしいような変な気分になっていた。
まさか、こんな風に学校を休むなんて……
少し前までは想像もしてなかった。
それどころか運が悪ければ死……
いや、そうならない為にも学校を休むんだろ!
運じゃない!
しっかりしろ!
僕は制服を素早く着ると、急いで玄関を飛び出た。
学校での先生との会話は意外とすんなりと終わった。
最近は受験を控えて自宅や塾で受験勉強をする人も少しずつ増え、この時期から休む人もちらほらいるらしい。
親の承諾書もあるし、出席日数も足りているらしく、「卒業式には来なさい」と何事もなく終わった。
なに? この温度差?
思ったより早く話が済み、授業が始まるだいぶ前に教室に入ると長子が声をかけてきた。
「おはよう。いっくん」
「ああ、おはよう。長子」
長子は僕の顔を見ると、うんうんと頷いて少し笑った。
「二美ちゃん情報、回ってきてるよ。凄く心配してたよ? 何か知らないかって……」
「……そうか」
朝はやっぱり無理してたんだな……
「渡君は知ってるよね? ……理由言えないの?」
「……まだ言わない方が良いと思う」
本当に最悪の事態が起きるかどうかは分からないし、言ったところで何処が安全な場所かも分からない。
それに多少の備えでは、とても黄色モンスターの攻撃に耐えれないだろう……
「……わかった。いっぱい悩んでたもんね。渡君と一緒なら大丈夫だと思うし……」
渡と一緒なら大丈夫?
……なんか、心にひっかかるものがあるぞ?
「……渡の方が信用あるのか?」
「信用度なら断然いっくんの勝ちだよ。……信用じゃなくて知ってるの。いっくんが人を頼りにしてるときはまだ無茶はしてないって」
「……そうか。知ってるのか……」
「うん、知ってるの。小さい頃からの付き合いだもんね。だから土曜日は気にしないでいいから」
こんな状況になってから……
いや、こんな状況だからこそ長子のありがたみが良く分かる。
……僕は幸せ者だったんだ。
「ああ……もし、もし僕がおかしくなったら、その時は教えてくれないか?」
「え? ……うん。その時は叩いて治してあげるよ」
「ありがとう。遠慮なしにやってくれ」
「……本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫になった」
僕の顔を怪しそうな顔で見てくる長子に幸せを感じながら、僕は勇気を出して言葉を紡いだ。
「長子、全部終わってクリスマスになったら……二人で遊びに行かないか?」
長子は少し驚いた後、下を向きながら「わかった」と答えてくれた。




