mission:35 黄色を倒せ
深夜0時13分、日付も変わりタイムリミットが後26日になった頃、僕は山の中腹にある墓地公園に来ていた。
中学校の春の遠足で毎回登らされた見慣れた山は、ただ太陽の光がない……
それだけなのに、その存在感をがらりと変えていた。
幽霊などを見たことも感じたこともないが、目の前に広がる多数の墓地はいつもは身近に感じない死を容易に想像させ、先の見えない闇と共に僕の胸を締め付ける。
分かりやすく言うと……凄く怖い。
「……なかなか雰囲気あるな」
僕がぼそりと呟くと、僕の胸の辺りから聞き慣れた声が聞こえてきた。
『今後もこんな状況があるかもしれんからな。慣れろ。評価が高いホラー映画のバックミュージックもあるぞ。一曲いっとく?』
「渡! 絶対かけるなよ!」
『分かってる分かってる。さすがイチだ。前振りが上手いぞ』
「絶対分かってないだろ! 本当にかけるなよ!」
『そこまで期待されたら、曲選びもプレッシャーだな。くっくっ……』
「渡!! 笑っただろお前!」
暗闇に支配された墓地公園で二人の場違いな話し声が響く。
墓地公園の支配者はそのことを不服に感じたのか、その声を消すかのようにスマホのアラーム音が鳴り出した。
ピピピ……ピピピ……
モンスターの300m以内に入ったのだろう。
僕はスマホの画面で前方を確認する……いた。
「渡…… 仮に墓地公園の焼き場に寄り添う、青白い炎に包まれた巨大な骸骨がいたらどうする?」
『……俺はもっと精神的にくるホラーの方が好みかな。墓地に巨大な骸骨とか…… 子供の発想だろ?』
「ぷっ……そうだね」
『ああ、青白い炎もマイナス点だ。初めから見えてるなんて、ホラー映画を100作借りてきて出直せってとこだ』
「ぷっ……くっ」
200m付近から見た骸骨は10m以上の大きさで、青白い炎に包まれていた。
目のあったであろう二つの暗闇の中に赤い……赤よりも闇に近い色をした炎が揺れている。
その右手には電信柱を10本まとめたぐらいの太さのこん棒が握られ、その巨体を半分隠すほどの大きな盾が左半身を覆い隠していた。
……いままでだったら絶対に逃げ出したくなるはずだけど、渡の話を聞いた後だと少し間抜けに見えるな。
僕は少し笑いながら渡に声をかける。
「じゃあ……行ってくる」
『ああ……行ってこい』
僕は200mラインを越えた。
『?????と遭遇』
スマホの画面に吹き出しが表示される。
僕は骸骨巨人の様子を確認しながら素早く吹き出しをタップした。
『グリドリムス:位置固定モンスター:ランクD』
僕が吹き出しを確認していると、骸骨巨人はこちらに向かってゆっくり歩き始めていた。
良く見ると右手に持つ巨大なこん棒に青白い炎を集めているようで、こん棒全体が青白い輝きを少しずつ強めているのが確認できた。
速度は速くない……
あの大盾から考えても防御重視型か?
あのこん棒に集めている炎は要注意だな……
よし! やってやる!
僕はスマホを構えると魔弾岩に指を置く。
すると、わずかではあるが骸骨巨人は、大盾で左上半身を隠す動作をした。
そこかっ!
僕は骸骨巨人に向かって全力で走り出した。
骸骨巨人は歩くのを止め、僕を迎え撃つように大盾を構えると右手の青白い炎に包まれたこん棒を天に掲げた。
僕と骸骨巨人の距離が後50m程になったとき、骸骨巨人のこん棒から出た青白い炎が……
空を燃やした!
僕の頭上40m程に広がる青白い炎の空……
その燃える空は骸骨巨人のこん棒の一部だと主張するかのように、こん棒の動きに合わせて走る僕に襲いかかる!
『地形無視』×『限界突破』
ドゴゴジュォォゥゥオオオオ……
僕の走る地面が砕け、焼け、蒸発する音を聞きながら、僕は青白い炎の海を走っていた。
その姿を赤い闇のように光る両目の炎で確認した骸骨巨人は、左手に持つ大盾を前に突き出すと守りを固める。
僕は躊躇することなくその鉄壁の大盾に飛び込んだ!
鉄壁の大盾が目の前を透過し、僕の後ろに現れる。
そのまま骸骨巨人の体の中を駆け抜けると、僕は骸骨巨人の背中側にいた。
こん棒を振り終え、前屈みに大盾を前に突き出した骸骨巨人の左胸にある黒い焔が、その背後からも確認できる。
僕は魔弾岩を発射した。
『魔弾岩』×『限界突破』
巨岩となった魔弾岩は正確に黒い焔に吸い込まれていった……
『グリドリムスを倒した』『職種無しExpボーナス』『ショップレベルアップ』『エリアモンスター討伐ボーナス』『エリアモンスターソロ討伐ボーナス』『エリアモンスター無逃討伐ボーナス』『『移動距離使用軽減』を取得』『00093エリアにダンジョンを配置』




