表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/89

戦いの始まり

 僕は夕飯を終えた後、自分の部屋に戻ると机に向かって職種と特殊能力を書き出した。

 以前『再生』を獲得した後に、二美に「何でも30秒前に『再生』できたとしたらどうする?」と聞いたことがあった。

 間違いなくスマフロに関する内容なのに、そのときは楔は反応しなかったのだ。

 ならばスマフロ攻略を効果的にするための相談も、やり方次第では可能かもしれない。

 その発想を思い付いたとき、僕の頭に初めに浮かんだのは渡の顔だった。

 渡なら……いろいろ頼りになるに違いない。


 ちなみに二美の答えは「プリンを永遠に食べ続ける」だった。

 ……こちらに相談することはたぶん無い。


 保険をかける意味で『仮に、本当に仮に、絶対仮に、こんな職種や特殊能力があったら渡ならどうする? 仮に』みたいなメールを渡に送信した。

 それから3分ぐらいで渡からのメールが届いた。


 『了解。考えとく。隠密の効果を調べとけ。仮に多すぎww』


 僕は『了解』と打ち込み送信すると、『隠密』を発動してリビングに向かった。


 僕がリビングに入ってもこちらを見ない。

 試しに「にゃ~」と猫の泣き声を真似てみる。

 父さんがこちらに振り向いたが、すぐにまた視線をテレビに戻す。

 音には反応するのかも……


 僕はその後もばんざーいばんざーいと手を上げてみたり、プラスチックで出来たボックスを落としてみたりした。

 結果は音や物の移動には気付くが、僕自身には気付けないようだ……


 これは凄い!


 そこで僕は調子に乗って、リビングで反復横跳びをしてみた。

 一応、激しい動きでもバレないかの実験であって、ふざけてるわけではない。

 時速40kmで部屋の中を走り回ることはできないからね。


 ……しかし……なかなかに苦しいぞ。

 精神的に……


 食器の片付けも終わり、「今日もごくろうさま」と声を掛ける父さんと、その言葉に笑顔で応える母さん。

 ドラマの最終回に夢中で、テレビに釘付けの二美。

 そんな普通のリビングで、僕は真剣に反復横跳びをしているのだ。


 みんな気付いてないよね?

 気付いてて無視してたら僕、立ち直れないよ?


 反復横跳びも97回目に到達してラスト3回になったとき、僕のスマホからメールの受信を知らせる音がする。

 僕はリビングから飛び出した。


 ……大丈夫だな。

 『隠密』君はなかなかの優等生だ。

 僕は木の葉の形をした蝶に再度感謝しながら、渡から来たメールを確認する。


 『駅前のカラオケ店で待ってる。カメラの心配はしなくていい。人に見つからないようにできる限り早く来い』


 僕は『了解』と打ち込み送信すると、母さんに渡の所に行くことを伝え家を出た。

 母さんは少し心配そうな顔をしてた……


 地図を見ると家から駅前のカラオケ店まで、直線で10kmぐらいだ。

 できる限り早くと書いてあったので、僕は『隠密』と『地形無視』を発動する。

 カラオケ店を目指して僕は一直線に走り出した。

 『地形無視』君も非常に有能な能力で、屋根でも壁でも、数歩なら空でも走れる。

 僕が家を出て10分後には駅前のカラオケ店に着いていた。

 僕は人の目がない場所を探し『隠密』『地形無視』を解除した。


 僕はカラオケ店に入り店員に確認してもらうと、メールで教えてもらった番号の部屋に入った。


 「お待たせ、渡」


 「いや、なかなかの見世物だったぞ。イチ」


 渡がこちらに画面を向けたノートパソコンを見てみると、壁を走り、空を駆ける男がいた。

 当然僕だった。


 「今度のは二美に送らないのか?」


 僕がそう聞くと、渡がくっくっと笑いながら言った。


 「現実感があるから笑えるんだよ。これは…… 楽しい映像じゃないだろ?」


 まったくだ。

 こんな映像は二美に不安しか与えないだろうな……

 いや、もしかしたら二美なら喜ぶかも?

 少し落ち込む僕を見て、渡が慰めの言葉を掛けてくれた。


 「まあ、気にするな。映画会社が土下座しながらスカウトしにきてくれるかもな。サーカス団員でも充分に金を取れるぞ?」


 僕は熊怪獣か!


 このカラオケ店はフリードリンク制を取り入れている店で、僕はカルピスを選び席についた。


 「で、仮の話はどこまで話せる? ……仮にな」


 渡が砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲みながら、くっくっくと笑っていた。


 「いま確かめているとこ……仮の話なんだけど、危険な可能性が高い気がする。情報だけでも充分だよ?」


 僕は渡をこの厄介事に深く巻き込むつもりはなかった。

 しかし渡はにやりと笑うとこう言った。


 「貸し一だ。面白かったらサービスしてやる。さあ、一つ一つ話せる所まで話してみろ。仮の話を、な?」


 こうして、僕達の長く短い戦いは始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ