信用
ゲームを続けよう。
そう決心した僕は、これからどのようにスマフロと付き合うべきかを考えた。
やるからには本気でやってやる。
しばらく考えた後、時間を確認するとまだ19時30分過ぎのようだ。
二美には悪いが楽しいことを見つけるのは後回しにしよう。
僕が目指す未来には、楽しむための遊びでは到達できない可能性が高い。
いまの僕がやるべきことは、楽しい未来を掴むための効率的な……仕事だ。
僕は少し迷ったが部屋を出ると、階段を下りてリビングに入る。
僕がいきなり現れたので驚いたのか、みんながこちらを振り向いた。
そして、みんなが……特に二美が気まずそうな顔をしている。
「あ、あの……お兄ちゃん! ごめんなさい!」
「はぁ? ……ああ、動画の事か」
「……うん。私がちょ……」
「大丈夫、大丈夫。心配しなくても、悩んでたのはそのことじゃないから。……まあ、少し恥ずかしかったけど」
「でも……」
「まあ、次回は気をつけろよ。長子にも聞かれたぞ。それよりもお腹がすいたよ。ご飯ある?」
腹が減ってはなんとやら、まずはご飯だ。
いつものように話しながら夕飯の麻婆豆腐を食べ終わると、僕は本題を切り出した。
「父さん、母さん、それと二美……ちょっと大切な話があるんだ」
「ん? どうした? そんなに改まって」
見ていたテレビから目を離して、父さんが僕の方に顔を向ける。
「これから話すことはよく考えて決めた事なんだけど……本気で聞いて欲しいんだ」
「……ああ、わかった」
父さんはテレビの電源を切ると、体ごとこちらに向き直す。
母さんも食器を片付けるのを止め、椅子に座ってこちらを見つめる。
二美は、いきなりの真剣な雰囲気に驚いているのだろう。
父さんと僕の顔をキョロキョロと交互に見ていた。
「詳しくは言えないけど、やりたいこと……違う、やらなきゃいけないことが出来たんだ。その為には、どうしても時間が必要だと思う。だから学校を休ませて欲しい」
僕の言葉を境に部屋の空気が変わったのを感じる。
父さんと母さんは僕を見つめる目を強め、二美は口を手で塞いでいた。
「冗談じゃ、ないようだな……その理由は言えないのか?」
「ごめん、絶対に言えない」
本当は全て話してしまいたい。
しかし僕の思考とは違う場所にある何かが、それの結果を知らせてくる。
死
確実に起こるであろうその結果を振り払うように、僕は頭を横に振った。
「そんな説明でみんなの理解が得られると……本気で思っているのか?」
「……思ってない。だから……お願いします。どうか僕に……時間を下さい!」
頭を下げる僕の向こうから、父さんのため息が聞こえてきた。
二美は何故か泣いているようだ。
二美の鼻をすする音しか聞こえないリビングで、僕は頭を下げ続ける。
しばらくすると、父さんの声が静かに部屋を響かせた。
「……父さんは信用を貯金の様なものだと思ってる。一は……いままで貯めた信用を全部失うとしても、それをやらないといけないのか?」
「……はい」
「人に迷惑をかける訳じゃないんだな?」
「はい!」
「…………ふぅ、わかった。やりたいことをやりなさい。母さんもいいだろ?」
「ええ。一、困ったらちゃんと言うのよ」
「うん…… ありがとう、本当に……」
僕は涙が出そうなのを必死で我慢していた。
父さん…… 母さん…… 本当にありがとう……
後で二美も学校を休めるか父さんに聞いていたが、貯金残高が足らなかったらしい。
二美はほっぺを膨らませていた。




