驚き
スマホを充電したまま部屋を出た僕は、歯磨きなどをして再び部屋に戻ってきた。
「ん?」
気のせいだろうか、スマホの周りに黒い霧と小さな稲妻のようなものが見える。
もしかしてショートして燃えているのか!?
僕はあわててスマホに近づくが、黒い霧は初めから無かったように消えていた。
「あれ?おかしいな……」
僕は机の上にあった物差しでスマホをゆっくりとつついた。
なにも変化はないので、少しニオイを嗅いでみる、変なニオイもない。
今度は指先でつついてみたが、熱くもなく普通のスマホだった。
「見間違いかな?」
一言つぶやいた僕は、スマホを手に取り電池残量をみる。
「おっ、100%だ」
充電して10分ぐらいしか経っていないけど、スマホって充電が早かったんだな。
そう思いながら画面を見たら新しいマークが増えていた。
それは銀色の扉が開き、その奥に草原と青空が広がるようなマークだった。
こんなマークあったかな?と考えていると、そのマークはどんどん大きくなっていきスマホの画面いっぱいに……
いや、画面を超えて本物の扉のようになって僕の目の前に現れる。
僕は口をあんぐりと開けてその光景を見ていたが、扉はまるで動く歩道に乗っているかのように近づいてきた。
そして逃げる間もなく扉をくぐった僕は草原に……
いや、自分の部屋にいた。
「……ゆ……め?」
スマホ片手にしばらく立っていた僕が、もう一度スマホの画面を見る。
そこには『スマフロの世界へようこそ』と書かれた文字と眼鏡に白衣といった学者風の男性。
そして位置情報ゲームと書かれた注意書の看板が写し出されていた。
「これが位置情報ゲーム……」
凄い……
スマホって凄い……
位置情報ゲームって凄い……
科学はここまで進歩したんだ……
そりゃ二美が連絡だけに使うのがもったいないと怒るわけだよ……
僕は今までの自分を反省すると共にワクワクしていた。
今の段階でもう二美に話すことは沢山ある。
すぐにでも二美の部屋をノックして自分の驚きと感動を話したい。
そう思い部屋を出ようとしたが、ふと思い直した。
高校三年にもなった兄がゲームの導入画面で興奮して妹に熱弁をふるう……ないな。
僕は少し冷静になってベッドの上に座りスマホの画面にタッチした。
『ようこそスマフロの世界へ。
このソフトは君の世界とスマフロの世界を繋ぐための扉だ。
これから君は様々な場所で多くのものに出合うだろう。
そこで、これからスマフロを楽しむ為のルールをいくつか教えようと思う』
学者風の男性が説明を始めると、画面が地図の様になった。
そして画面の上の方に0.0㎞の文字が表示される。
『まずスマフロは位置情報を元にこれからの君の移動距離を測定する。
その移動距離は様々なものを買うためのお金や、特殊能力を発動させるための力になるだろう。
ちなみに自分の足で移動する以外の方法では測定されない。
自分の足で歩けない人達はすまないが今は諦めてくれ。
今後のバージョンアップ時に検討していく』
画面が変わり、目付きが悪い上に目が赤黒く光るウサギや古ぼけた西洋の鎧、ガイコツや大きな石像、デロデロ何か……スライム?などなど様々な姿をしたものが写し出される。
それらはそれぞれ小さな丸印になり、地図上に配置され赤、黄、青の色に変化した。
『次はモンスターについてだ。
モンスターは地図上に表示され、危険度は上から赤、黄、青だ。
モンスターと戦いたくない場合は設定でモンスターをオフにするといい。
モンスターは基本的に現れる場所が決まっているが、現れた場所を中心に半径200メートル以内で行動している。
例外はあるが中心から200メートル以上離れると追って来ないので上手く活用してくれ。
攻撃方法は素手でも可能だが、現実の道具を使用したい場合はソフト内にある写真機能で写真を撮るといい。
道具に応じて必要な移動距離が表示される。
今回は初回サービスで魔弾石を10個プレゼントしよう。
戦闘中は画面下に装備した魔弾石が表示されるので、スライドさせてモンスターに当てるとダメージを与えることができる。
モンスターを倒すと特典があるのでぜひ狙うといいだろう』
また画面が変化し今度は写真を撮るときの画面、つまり僕の部屋が写し出される。
その画面の右端のショップと書かれた文字が点滅し、部屋の中に宝箱が現れた。
『次にアイテムについてだ。
アイテムは写真機能以外にショップでも販売している。
先ほどプレゼントした魔弾石もこちらで購入できる。そして地図上には出ないが、様々な場所に宝箱が落ちている場合がある。
こちらはスマホの画面で運良く確認できたらアイテムを入手できる可能性がある。
ただし罠が仕掛けられている場合もあるため気を付けて開けたまえ。
始めて30日間は危険な罠も無いので、その間に挑戦することをお勧めする』
僕の部屋の画面はそのままで、今度は左端にある人の形をしたマークが点滅する。
そして人の形をしたマークが大きくなると……僕の全体写真が写し出される。
その隣に学生、冒険者、兄、見習い武道家、見習い整体士、見習い医療家、ランナーが表示された。
『最後は特殊能力についてだ。
スマフロではある条件を満たすと特定の職種に変更できるようになる。
そしてその職種ごとに特有の能力が設定され、移動距離を消費して能力を発動することができる。
職種は進化することはできるが変更はできない。
現時点で選べる職種を決定するもよし、未知なる職種を求めて職種なしで突き進むのも良いだろう。
職種は触れることにより、簡易的な説明が表示されるので参考にするといい。
また宝箱やモンスター討伐、イベントなどから特殊能力が獲得できる場合もある』
画面に学者風の男性が現れてこちらを見てきた。
そしてダンスを踊る前の様なお辞儀を大袈裟にすると、顔を上げニヤリと笑って口を開ける。
『それではスマフロの世界を存分に楽しんでくれたまえ』
僕は衝撃の展開に驚きを隠せず、目を見開いてスマホを見つめていた。
なんてことだ……
これって妹の言ってたゲームと違うかも!?