ブューミュダーボの呪い
『ブューミュダーボを倒した』『職種無しExpボーナス』『レベルアップ』『エリアモンスター討伐ボーナス』『エリアモンスターソロ討伐ボーナス』『『地形無視』を取得』『00053エリアにダンジョンを配置』
せめてもの供養にと『町をキレイに』の旗を地面に刺したまま、僕はスマホの吹き出しを確認していた。
時間は後25分は大丈夫だ。
帰る時間を考えても10分は余裕がある。
『レベル9 Exp1532』
「お~、やっぱり黄色は750Expか。ランクで決まっているのかな?」
職種も……旗使い、ゴミの天敵が増えている。
どちらも当然選ばないよ。
さて、楽しく不安な宝箱の時間だ。
目の前にはゴミスライムの色をした毒々しい宝箱と、半透明の緑色したドクロが、半分溶けているようなフォルムの宝箱? がある。
……帰るか
本当にそう言いたいところだが、30日以内なら危険な罠もないって言ってたからなぁ。
おそるおそる毒々しい宝箱を開くと、中には毒々しい黒色のブレスレットが入っていた。
「……色は悪いがシンプルなデザインだし、今までで一番マシだな」
あの毒々しい宝箱から出た装備が、一番まともなのは釈然としないが仕方がない。
効果は移動距離を消費することで、毒の無効化と放出ができるらしい……
これはとても良いものだ。
見た目で疑ってすいません、毒宝箱先輩。
次は緑ドクロだ。
毒宝箱先輩が素晴らしいということは、お前が罠だな!
緑ドクロ!
……開けるけどね。
中に入っていたのは透明のロープ?
なんだ、これ?
説明をみると、どうやら鞭のようだ。
移動距離は消費するが伸縮可能で、粘着性を自由に変えることも可能らしい……
すいませんでした!
緑ドクロ先輩!
二人の優しい先輩に出会えた喜びと、見た目の大切さを胸に、僕は家路を急いだ。
家に帰り、朝食を食べている途中で二美にメールが入る。
二美はスマホを見ながらパンを食べていたので、僕は軽く注意した。
「二美。行儀が良くないぞ」
「ん、ん~ぶっ! っっっ、ごほっごほ……」
喉をつまらせたのか、二美がいきなりパンを吹き出した。
「だ、大丈夫か? 二美?」
僕は心配して二美に近付いた。
しかし、二美は片手を突きだして僕を止める仕草をした。
「だ、大丈夫……も、もう、ご飯いい……」
二美もやっぱり女の子だし、パンを吹き出した顔を見られたくないのだろう。
顔をうつ向けたまま部屋に急ぐ。
「片付けしとくからなー」
二美に声をかけると、苦しそうな声でお礼を言っているのが聞こえた。
本当に大丈夫か?
「行ってきます」
昨日、二美が恥ずかしいと言ってたので、今日は一人で家を出る。
僕は骨を二匹と芋虫一匹を倒し、余裕をもって学校に着いた。
骨の落とし物は久しぶりの鎖と安定のこん棒だった。
ごちそうさま。
「おはよう、長子」
「あっ、おはよう。いっくん」
長子は小さい頃から学校に来るのが早い。
昔は二美と三人で小学校に登下校してたよな。
みんな変わっていくんだよな……
駄目だ、駄目だ。
二美の変化のせいか、少し感傷的になってるな。
「ん? 何かあった? いっくん?」
「え? ああ、二美も大きくなったなぁと思ってたんだ」
長子はくすりと笑うと僕に言った。
「そうだね。二美ちゃんは本当に強く大きくなったんだよ」
「あの二美がねえ……」
僕の中ではいつまでも守るべき妹だ。
しかし建築家の件もあるし、本当に成長していると思うと感慨深いものがある。
「……いっくん。今度の土曜か日曜日、何か用事あるかな?」
「ん? 別にないよ」
「それなら一緒に図書館にいかない?」
「うん? 大丈夫だぞ」
「また、メールしとくね」
最近はゲームばっかりしてるけど、いま高三なんだよなぁ。
進路はいくつか決めてるし、準備もそれなりにしてるけど……
どうしようかな……
僕が進路について悩んでいると、隣から渡の声が聞こえてきた。
「おい! 何かあったか!? イチ?」
いつにもない真剣な渡の声に、僕は驚きながら隣を見た。
「なんか隠してることはないのか? イチ」
本当に真剣な顔だ。
僕は驚きながらも思い当たることを探す。
「え? え~と……渡のことをツンデレだと思ったこと?」
すると渡は、にや~っと笑い。
「そうかぁ、そんなこと思ってたかぁ…… まあ、頭は大丈夫そうだな」
何のことを言っているのか分からない僕に、渡はスマホを渡してきた。
そこには『町をキレイに』の旗を振りながら、ぐるぐると塩田跡地を走りまわる男がいた……僕だ。
その男はぐるぐる走りまわるのが飽きたのか、中心部分に少し近付いて旗をブンブン振っている……僕だ!
旗を振るのも飽きたのか、走りまわってた中心部分にゆっくりと駆け寄ると、『町をキレイに』の旗を突き刺して、良い笑顔をしている男がいた……僕だぁぁぁぁぁああ!!
「朝、二美ちゃんに送っといたから」
僕は砕け散った……




