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二匹目の黄色

 ピピピ、カチ


 5時30分になって目覚まし時計が鳴り出す。

 僕はそれよりも早く目が覚めて、あと何分だ? あと何秒だ? とベッドの中で待っていた。

 子供時代に行った遊園地の朝を思い出させるが、悪くない気分だな。


 さあ、今日もやりたい事がいっぱいだ!


 僕はガバッと飛び起きると、素早く外に出る準備をした。


 「行ってきます!」


 早くダンジョンに行きたいのだが、今朝は一時間しか時間に余裕がない。

 だから昨日見つけた色別にモンスターを探せる機能を使い、黄色モンスターを狙ってみることを出掛ける前から決めていたのだ。

 青色はたった3Expだからなぁ……

 黄色の750Expは魅力的だよね。


 調べてみると、10km先のゴミ処理場の近くに黄色はいるみたいだ。

 以前なら往復だけで一時間ぐらいかかる距離だけど……

 行ってみるか。


 僕はゴミ処理場に向かって走り出した。


 ふぅ~全力で走ると15分ちょっとか……って単純計算でも時速40kmか!?

 どうりで景色の流れが速いはずだ。

 まさかスマホが新人類を生み出す鍵だったとは……

 ダーウィン先生も予想できなかっただろう……


 ピピピピ……


 そんなことを考えていると、モンスターから300m以内に入ったことを伝えるアラームが鳴り出した。

 さて、今度はどんなモンスターかな?

 熊怪獣の件もあるし、200m付近から確認した方が良いよね。


 ゴミ処理場は10年ほど前に建てられた、温水プールと併用した建物だ。

 ゴミを燃やしたときに出る熱で、水を温めて温水プールに使っている。

 小学生の頃は、市民割り引きでお世話になった懐かしい場所である。

 そこから少し離れた場所、昔の塩田を埋め立ててできた塩田跡地にそれはいた。


 それは小さな地獄だった。


 まるでゴミ処理場のゴミを凝縮したかのような毒々しい黒が朝日に照らされる。

 ヘドロが可愛くみえるような嫌らしい粘着性を想像させる物体が、地獄の沼から助けを求めるように腕を伸ばしていた。

 そんななだらかな丘のように巨大な……でも小さな地獄……


 「……あれは……スライム?」


 バウアードベアの暴力的な死とは違う、嫌悪感を絡めたじわじわと染み込んでくる死の感覚が、僕の奥から漏れ出してくる。

 正直逃げ出したい。


 僕は地図を確認しながら200m手前で止まると、スマホの画面をズームにして敵を確認する。


 「やっぱり黄色は違うなぁ……」


 こいつが目の前にいて、ここは地獄ですって説明されたら、みんな納得するに違いない。


 う~ん困ったぞ。

 定番ならどこかに核があるはずだけど見えないし、剣や打撃は通用しそうじゃない。

 巨岩ですら無理そうだもんなぁ……

 普通に戦っても勝てそうもないぞ、こりゃ。

 まあ、とりあえず情報収集かな。


 僕は200mラインをゆっくりと越えると、スマホの画面に『?????と遭遇』の吹き出しが表示された、と同時に僕は右後方に飛び込んだ。


 ジュュュュ……ゴォォォオ!


 200mラインより外に逃げ出した僕が振り返ったときに見たものは、黒い炎を上げながら燃える見えない壁だった。


 時間にして一分ぐらいだろうか、呆然と見つめていた黒い炎が消え、奥の景色が見えてきた。

 ついさっき僕がいた場所には、半径3mぐらいの黒い半円の染みができていた。

 良く見ると溶けたアイスのようにえぐれながら、まだグシュグシュと音を立てている。

 その惨状を引き起こしたゴミスライムは、最初いた場所から一歩も動かずうねうね伸縮を繰り返していた。


 「は、反則だろ? これ」


 僕は黄色を倒しに来たことを少し後悔しながら、これからも黄色に対峙するときは絶対に安全策でいこうと心に強く決めるのだった。


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