ああだこうだ
僕の力の限りの叫びは、想像を遥かに越えた声……
いや、もはや爆音のように鳴り響き、森中の鳥たちが一斉に飛び立った。
「……なんだ……これ……ハッ!?」
驚いた僕は一つの可能性を思い付く。
もしかして『限界突破』?
移動距離を確認すると……減っていた。
0.5kmを消費して無駄に能力を発揮した僕は、おとなしく映像化OFFを選択した。
『限界突破』さんは融通が利かないタイプらしい……
ズボンについて調べてみると、このズボンは見た目の代わりに脚力補整が大きいらしい。
呪いの装備は強いってやつかも。
実際、ジャンプしてみたが洒落にならん跳躍力だった。
次のオリンピックではドーピングと一緒にスマホも禁止だね。
銀色の宝箱はどうだろう。
また変な装備じゃないだろな。
嫌な意味でドキドキしながら僕は銀色に光る宝箱を開けた。
中に入っていたのは秘伝書と書かれた和風の巻物だった。
僕は巻物を手に取ると帰りを急ぐ。
下手に巻物を開いて、前回のように選択制だったら夕飯に間に合わなくなる。
ダンジョンも気になるがまた明日だな。
帰りは大量のレベルアップと呪われたズボンのおかげで 普通に走ってかかる時間の半分以下になっていた。
正直まだまだ余裕がある。
「ただいま」
帰ってみるとちょうど夕飯の用意が出来るタイミングのようだ。
あわてて洗面台に行き、手洗いなどをしてリビングに急ぐ。
今日は餃子だ。
「……そしたら、お兄ちゃんがスマホ片手にモンスターと戦ってたんだって。こう、えい! えい! って」
「ハッハッハッ! それは面白そうだね。父さんも見たかったよ」
「見たいの? ほら、渡さんが送ってくれたんだよ」
「へぇ、どれどれ……くっ……ほ、ほら、母さんも」
「あら? お父さん、そんなに笑っちゃ悪いですよ……ふふふ」
……針のむしろだ。
そんなに僕の遊び方はおかしいのだろうか?
今さっき戦ったバウアードベアなんか、魔弾石で倒せるのか?
いや、もしかしたら弱点に当てたら一発で倒せるのかも……
「普通の遊び方……調べてもいいか?」
「え~ダメだよ。せっかく渡さんも協力してくれてるのに。それに今のほうが楽しいんでしょ?」
確かに指先でビュンビュンするだけよりは、今の戦い方のほうが楽しいのは間違いない。
「それにお兄ちゃんは調べ出したら、結構念入りに調べちゃうでしょ? 先がわかったら面白さ半減だよ。……私達も」
最後の一言は余計だが、確かに知らないから楽しいってのは良く理解できる。
いくら凄い技術のゲームでも、全部調べてやったら遊びというより作業になってしまうもんな。
骨退治みたいに……
明日はやっぱりダンジョンに行くとしよう。
夕飯も食べてお風呂などの用事も済ませると、ベッドに横になりスマホをいじった。
さて、山で開けなかった和風の巻物から調べるか。
左手に巻物を出すと結んでいた紐をスマホの画面でタップする。秘伝書と書かれた巻物はするするっと広がり、巻物の中心から黒い墨で書かれた木葉の形をした蝶が、僕の胸目掛けて飛び込んできた。
「つっ! ……あれ?」
胸を触るが異常はない。
スマホの画面には「『隠密』を習得」の吹き出しが表示されている。
調べてみると『隠密』は移動距離を消費しない特殊技能らしい。
その分効果が少ないが読んでの通りの効果だ……
素晴らしい!!
これで今までより笑われる回数が減ることだろう。
ありがとう木葉の蝶くん、君はとても良い仕事をした。
僕はご機嫌で、次の『レベル5到達プレゼント:卵』を確認した。
卵を右手の上に取り出してみると、30cmぐらいの楕円形をした黄色い卵が右手の上に現れた。
スマホの画面に説明が表示される。
『この卵は貴方の冒険をサポートしてくれる守護獣の卵です。貴方の行動によって生まれてくる守護獣は変化します。レベル10に到達すると守護獣が誕生します。お楽しみに』
「なるほど。お前は守護獣さんだったか。よろしくな」
僕は卵をよしよしと撫でた。
どんな守護獣が生まれてくるんだろうか?
ズボンみたいなのは勘弁して欲しい。
けど、本当に楽しみだ。
そうそうレベルはいくつになってんだ?
僕は人マークをタップしてみた。
『レベル8 Exp782』
「おおっ!! さすが熊怪獣だ。桁が違うぞ」
確か戦う前がExp32だったから750Expか、良いねぇ。
またいたら20km使ってでも倒したほうが良いかもしれないな。
職種は隕石使いと見習い罠師が増えてる。
う~ん、隕石使いは強そうだけど……
それなら再生師になるかなぁ。
とりあえず保留だな。
最後は『ショップレベルアップ』だ。
おっ? 魔弾石改が4kmで売ってる。
魔弾岩は8kmか……
『再生』さんとどっちが良いんだろ。
使いやすさは魔弾岩だろうな。
他にも強化薬5kmや結界石10km、帰還石10km、転移札200kmなど品揃えがだいぶ増えたぞ。
あと、今まで売ってた魔弾石3kmが2kmに値下げしている。
ポーションなんかも値段が軒並み3分の2まで落ちてるな。
ショップレベル……これは、あなどれん。
僕はああだこうだと寝る時間になるまで、楽しくスマホを触り続けていた。




