作業
魔の昼休みが終わり、午後の授業を灰になったまま受け終えた僕は、できるだけ目立たないようにとぼとぼと帰っていた。
「イチ、煤けた背中してるぞ」
「誰のせいだよ……」
後ろから悪魔の声が聞こえてくる。
「くっくっ……悪い悪い。でも二美ちゃん喜んでたぞ。イチが楽しそうだって」
「……え? 二美が?」
これからは地面を見ながら生活をしていこうと決めていた目が、悪友の渡を見つめる。
「そう二美ちゃん。楽しいこと沢山見つけるんだろ? 俺も手伝ってやるよ」
「渡……お前……」
親友の渡がこちらを照れ臭そうに見ている。
お、男のツンデレなんて流行らないんだからな!
「だけどゲームするのはイチだからな。俺がゲームするとただの効率房になっちまう。あの天然は無理だ」
「天然って……」
しかし、渡がゲームをしたら『最短で最強』みたいな報告になりそうなのも分かる。
そして、『それ』は楽しいものではないだろう。
「だから俺がするのはイチがした行動の報告だ。ブログやTwi〇terみたいなネットの情報をまとめ上げて、これからのイチの情報を探す。あのブログみたいなもんを探すってことだな」
「え? でも、あのブログはたまたまじゃないのか?」
渡は大きなため息をついて、こちらを見てくる。
「百人に一人の偶然でも、一万人いたら必然になるの。まあ、イチの面白話は任せとけってことだ。それに、イチもあのブログの様な情報が世間に出回るは嫌だろ?」
「も、もちろん! 絶対に嫌だ!」
あんな情報だらけになったら最悪だよ。
「だろ? 忘れてたぐらい昔の情報が見つかって、就職とかの影響がでる時代だぞ。その辺を含めて俺に任せとけってことだ。仮に犯罪を犯しても任せとけ」
「いや、そこは任せられないから!」
なんだかんだで、頼りになる親友の助力を受けれることになったようだ。
校門で渡と別れて家路を急ぐ。
強化された肉体は驚く程の速度を出している。
……これは気を付けないとぶつかったら大事だぞ。
僕は十字路や見通しの悪いところでは、一旦停止や徐行を繰り返し家に着いた。
15分か……
息も切れていないのに、最高タイムを3分以上縮めている。
レベル2でこれって今後どうなるんだ?
僕は、はやる気持ちを抑えながら明日の準備を終わらし、ジャージに着替えると鏡の前で自分の顔を確認した。
……ゲームをするときは変装した方が良いかもしれない。帽子とマスクぐらい持って行っても邪魔にならないだろうし、人が多い場所で戦闘するときもあるかもしれないしな。
……ダテ眼鏡やサングラスもいるか? いやいや、逆に二美達に笑われそうだ。
まあ、そのときは出来るだけ目立たないように魔弾石でコッソリ倒そう。
帽子とマスクをポケットに詰め込んだ僕は、ちょっとした変装をすることに少しワクワクしながら外に飛び出した。
「行ってきます!」
庭で準備体操しながらスマホを確認。
「移動距離35.4km、レベル2、Exp17か……骨も芋虫も3Expってところだな。ショップはポーションとか売ってたけど『再生』があるからいいや。そういや職種は……増えてるぞ」
職種に、見習い剣士、再生師、見習い蛮族が増えていた。
再生師が気になったので確認すると『様々な事象を元の事象に戻す『再生』を取得する唯一のレア職種』と書いてある。
『再生』、もう取得してるし……
再生が進化する可能性はあるが、30秒が11年に進化は難しいよなぁ。
他の職種もこれってものがなかったし、また帰ってから考えよ。
僕は地図画面で矢印と距離を確認すると、勢い良く走り始めた。
2km先のごみ捨て場前にいたのは、お馴染みの骨だった。
「またこん棒タイプか……」
周囲には人影はない。……保険で帽子だけでもかぶっておこうかな? 少しは防具の効果も期待できるしね。
「では、いただきます」
ウサギ対策として、モンスターを倒すときに「いただきます」の言葉をかけてみることにした。
食事と同じで糧をもらってる訳だしね。
こん棒タイプは剣タイプより威力重視で、振り抜いた後の戻しは剣タイプより遅い。
つまり楽勝である。
僕は避ける、蹴飛ばす、転がす、踏む、サッカーキック、こん棒奪取、スイカ割りの順番で作業をこなす。
『スケルトンを倒した』『職種無しExpボーナス』『レベルアップ』『アイテム無使用討伐ボーナス』『こん棒を手に入れた』
「おっ、レベルアップか。えっと、レベル3、Exp20だな」
その場でジャンプをして、その伸びを感じながら宝箱に近付く。
宝箱の中身はやっぱり魔弾石一個だった。
これで魔弾石は11個だな。
その後もウサギ、骨、芋虫、骨の順番で作業をこなす。
ウサギと芋虫は錆びた剣で横から真っ二つだった……
素手で倒すのは無理っぽい。ごちそう様です。
骨はこん棒と錆びた鎖を落としていった。
鎖は扱いにくいのだが、何かしら使いどころがあるかもしれない。
次の場所は4km先で、黄色のマークが表示されている。
「黄色か……試してみるか」
僕は初めての黄色との対戦を想像し、ワクワクしながら4km先の山へと向かった。




