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長子と渡

 石居長子いしいちょうこ、僕の幼馴染みの長子は、僕を見ながら声をかけてきた。


「おはよう。ちょっと遅くなっただけだろ? どうしたんだ?」


「美紗さんに、いっくんが少し調子が悪そうだから様子を見てって頼まれたの。それで大丈夫なの?」


 ああ、母さんか。

 確かに母さんなら長子に頼むだろうな。


 長子は僕より1日しか早く産まれていないはずなのに、何故かいつも僕を弟のように世話をやきたがる。

 ありがたいのだが、教室では少し恥ずかしいので勘弁してほしい。


「ああ、大丈夫だよ。元気過ぎて走り回るぐらいにね……」


「……なんで、最後の方が小声になるの?」


 あのハイテンション状態を思い出して少し落ち込む僕を、不思議そうな顔で長子が覗き込む。


「確かに顔色も悪くないし、大丈夫そうだね。よしよし」


 一人納得して頷く長子に、ハハハと乾いた笑いを送りながら、僕は自分の席に座った。


「今日は妹のストーキングか? イチ」


 横から声をかけてきたのは高校からの親友?網野渡あみのわたるだ。

 彼は機械オンチの僕とは真逆の機械オタクで、家の機械製品も彼のお陰で何度も助かった。

 二美に言わせると「特にパソコンは神レベル」らしい。


「渡……なんで僕が二美のストーキングをしないといけないんだ?」


「今朝、イチにストーキングされて怖いってTwi〇terで呟いてたぞ」


「馬鹿な!?」


 渡がスマホを見せてきたので見てみると『兄がついてきた。恥ずかしい』と書いてある。


 恥ずかしい……か……


 落ち込む僕を見て渡が声をかけてきた。


「落ち込むなよ。心配なら町中の防犯カメラから、リアルタイムで映像を見れるようにするか? 位置情報連動は基本として盗聴もいっとく?」


「何の心配してんだよ!」


「……ストーキング?」


 渡の勘違いを正そうとしていると、始業を告げるチャイムが鳴り担任が教室に入ってきた。

 朝から注意されるのも嫌なので、しかたなく渡と話すのを止め前を向いた。


「おはよう!みんな席に付きなさい、ホームルームを始めるわよ」


 担任の一声で、雑談をしていたクラスメート達は慌てて自分の席へと戻っていく。

 担任の先生はコホンと咳をしてから、いつものように話し出した。


「では注意事項から……」


 いつものように授業を受け、いつものように長子が僕の世話を焼き、いつものように渡と馬鹿話をしながら昼休みになった。


「そういや、位置情報ゲームやり始めたんだって?」


「そうだけど、何で知ってんの? 二美か?」


 渡がコンビニサンドイッチを片手に聞いてきた。

 また二美が呟いたのか?


「まあ、二美ちゃん情報が発端なのは間違いないが、結構目立ってるぞ。イチ」


 渡が見せてくれた画像には、見覚えのある場所に僕の後ろ姿らしきものがモザイク入りで写っていた。


 『スマホ片手にチョー真剣にゲームする人、発見! ウケるwww』


 渡が画面をスライドさせると、そんな文章が書いてある。

 何でもスマホ片手にモンスターに攻撃を繰り返していたらしい……僕だ。


「……確か位置情報ゲームはモンスターに会っても、指先のスライドだけで大丈夫だよな?」


 渡が可哀想な人を見る目で、こちらを見ている。


「た、確かにそうだけど……」


 もしかしたら皆、魔弾石を使って簡単に倒してる?

 素手で倒すのは恥ずかしいことなの?


「まあ、所詮はゲームだ。どんな楽しみ方をしても構わないが……ちなみにコイツどうする?」


「えっえ? どうするって?」


 僕のパニックを起こした頭では、渡の言っていることが理解できないよ。


「いや、人権侵害だろ、これ? ウィルスいっとく? 裁判は難しいけど、コイツの人生終わらせれるよ?」


「はぁ? だ、駄目に決まってるだろ!」


 渡なら本当にやりかねん。


「まあ、楽しませてもらったし、警告ぐらいで勘弁するか。二美ちゃんに見せたら大笑いしてたぞ」


「見せたのかよ!」


 なんてことだ、兄の威厳が……


 渡はくっくっと笑うと「イチらしくて良いと思うぞ」と言ってきた。

 僕の印象ってどうなってんだ?

 聞くべきか聞かざるべきか悩んでいると、長子が声をかけてきた。


「なになに? いっくんゲーム始めたの?」


 ご飯を食べ終えた長子が、いつの間にか女子グループから離れてこちらに来ていたみたいだ。


「そうみたいだぞ。ほら、このブログ見てみるか?」


「長子! 見るんじゃない! 罠だぞ!」


 僕は焦って訳のわからないことを口走り、長子を止めようとする。


「え? なになに……。へえ、いっくん楽しそうだね」


 やめて! 優しい目でこっちを見るのは……


 僕は位置情報ゲームを始めた中で、一番深刻なダメージを受けていた。


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