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ログアウトできるデスゲーム  作者: 245
大罪を背負う者達
26/40

絶対に外さないわ

 ゼタのシックス・センスによる隕石は、砦を半壊させた。ニーズヘッグ内でも死者が出ており、このままの状態が続けば流星軍の勝利となるだろう。

 ゼタによる二度目の隕石は未だ落ちてこないが、その他一人一人の実力も相当なものであった。


「ニーズヘッグぶっ殺ー!」

「ミンティさん周りの人達に注目されてますよ」


 ギルド対抗戦は同時に二つ行うことはできず、各町の酒場にて中継されている。ミンティとリコリスも、NPCやプレイヤー達の視線を集めつつも観戦していた。


「ニーズヘッグなんて痛い名前、見てるだけで恥ずかしい」


 ミンティは仮想の酒を一気にあおる。たちまちミンティのステータスバーには酔いの状態異常が現れる。


「顔真っ赤……」


 リコリスはため息をつき、中継のモニターを見た。

 半壊した砦の全景。一定時間毎に画面が切り替わり、各プレイヤーがピックアップされていく。


「ラプラス……」


 画面の中の金髪碧眼少女は、濃い藍色の長弓を構えていた。


 * * *


「ウィステリアさん!」

「どしたー!」


 ウィステリアは崩れかけた壁に背をつけ、外の状況を窺いつつ返事をした。

 一階、砦入り口の横に、ニーズヘッグのギルメンの男が駆け寄ってくる。


「エルガーさんから、突撃命令です。砦の外なら安全だと」

「安全……なのか?」


 ウィステリアは戸惑いつつも、言われた通り外を回って流星軍の陣地――正式なものではなく、プレイヤーが作った場所――に奇襲を仕掛けるべく走る。

 メンバーの男もついて来て、ウィステリアはそれを待たずに陣地近くまで着いた。


「見張り三人て……大所帯は豪勢だな」

「どうしますか?」


 ウィステリアはちらと砦の塔を見てから、ロングソードをを抜いた。


「援護射撃で一人、俺が一人、あんたが一人だ」

「え、了解!」


 二人して飛び出し、急襲。すぐさま察知した三人の武器はそれぞれ片手剣、長槍、短剣だった。


「敵襲ー!」


 短剣の男が叫び、同時に長槍と片手剣が二人を襲う。

 ウィステリアは盾で片手剣を受け止め、ニーズヘッグのギルメンは湾曲した剣で槍を受け流した。


「おらあ!」

「うおっ……」


 力任せな一撃にウィステリアは怯み、剣を地面に突き刺し踏ん張る。

 横から現れる素早い影。短剣が迫る。


「あぶね!」


 ウィステリアは盾で薙ぎ払って二人と距離を取った。

 その時、短剣の男の胸に矢が刺さっていた。


「……?」


 理解できぬまま短剣を落とした男は、麻痺のアイコンを表示しつつその場に倒れる。さらに一本、矢が彼を貫いた。


「くそ!」

「おっとぉ!」


 長槍の男の突き出した穂先を盾で防ぐ。ウィステリアの後ろにはギルメンの男がいた。

 

「忘れるなよ」

「ぐっ……」


 ウィステリアが後ろを振り向いたとき、ギルメンの男の胸から突き出た刃が見えた。

 片手剣の男が彼を蹴り飛ばし、槍使いとともに二人でウィステリアを囲む。


「死ね!」


 片手剣の男が叫び、二人して襲い掛かる。

 ウィステリアはただ槍使いの男の方だけを向いて、低く剣を構えていた。


「後ろは頼んだ」


 誰に言ったわけでもない言葉とともに、ウィステリアは真っすぐ盾を突き出していた。槍が盾をかすめ、軌道がずれる。そして、盾の側面から姿を現すロングソード。

 これまた真っすぐ突き出された刃は、正確に槍使いの胸を貫いた。

 

「死にさ……」


 背後の片手剣使いの男の声が続くことはなかった。砦の塔から放たれた一本の矢が、クリティカルヒットをおこして男を絶命させたからである。


「ナイスエイム」


 ウィステリアは呟いた。味方が死んだことを悔やみつつ。


 * * *


 本陣をウィスが壊滅させた。

 と言えば大事だが、敵は二人しかいなかった。

 本隊は既に、砦の内部に侵入している。


「退屈ね……」


 ラプラスは塔の最上階に備えられていた椅子に座り、砦を眺めていた。

 傍らには、藍色の流麗な長弓が置いてある。

 この弓こそ、シックス・センス中最強武器の一つ、嫉妬の弓である。大罪『嫉妬』を冠するこの弓には、狙ったものを追尾し、三割の確率で状態異常を一つ発生させる効果がある。


「……誰か来ないかしら」


 スナイパーにあるまじき言葉を口にしつつ、ラプラスはその長い髪を払った。


「どうも。可愛いお嬢さん」


 突然の来訪者に、ラプラスは矢を放った。


「速射でも絶対に当たるとは、まさに反則級ですね」


 が、矢は両手斧に弾かれてしまった。

 丁寧な振る舞い、女性のような雰囲気。彼はゼタ。現在ラプラスの敵である。


「こんなもの、ゲームを面白くなくするだけなのに……どうして作ったのかしら」

「おや、折角大罪に選ばれたというのにそんな言葉を口にするのですか」


 ゼタは斧を持ったまま微動だにしない。よってラプラスも迂闊に動くことができなかった。


「大罪に選ばれる……そうね。中々の強敵だったわ」

「それは興味深い。今現在試練にたどり着いたプレイヤーはあなただけですから、話を聞かせてもらえませんか?」


 そう言ったゼタの頬を矢が掠める。


「……もう使いこなせているのですね」


 ゼタが跳躍した。不規則な連続移動。ラプラスとの間合いを確実に詰めていく。


「絶対に外さないわ」


 ラプラスは瞬時に三本の矢を放った。それぞれがゼタを追尾し、吸い寄せられるように向かっていった。

 ゼタの斧が二本の矢をはじき返し、一本のみ当たった。

 状態異常には、ならない。


「外れはしませんが、弾き返されはするのですね」


 ゼタの攻撃を、ラプラスは嫉妬の弓で受け止めた。素材不明の弓は刃をしっかりと受け止める。

 すかさず間合いを開けるようラプラスがバックステップし、矢継ぎ早に矢を繰り出した。

 宙を切って矢が飛ぶ。ゼタは反応できない。


「うぐ……?」


 ゼタに矢が突き刺さるとともに、石化に状態異常が発生して、足から石をなっていく。


「貰った……」


 ラプラスは言いながらも矢を二本放つ。

 一切の間を置かない攻撃は真っすぐゼタに向かい――。


 弾かれる。

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