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ログアウトできるデスゲーム  作者: 245
トッププレイヤーズ
23/40

表裏一体

場面が定まらず、申し訳ありません。

 瞬時、轟音。発生源はギルディの刀だ。渾身の一撃が十五の町の石畳を砕く。

 ウィステリアは破片を押しのけつつ、すぐさまショートソードによる左薙ぎ。ギルディはそれを軽く受け流した。


「運ほど信用できないものはないな」

「そりゃお互いさまっすよ……!」


 剣戟は互角に見えた。が、実情は異なっており、ギルティの一撃一撃が要所で一歩先を行っている。

 

「ウィス死ねー! ぶっ殺せ―!」

「ミ、ミンティさん……周りの人が見てますよ」


 再び二人は剣を交える。火花のエフェクトが散り、ウィステリアは一瞬だけ目を閉じてしまった。


「……ふっ」


 その隙を逃さず、ギルディの斬撃が不可視の速度で放たれた。


「っ!?」

「……もういいか」


 小気味の良い音とともに、ウィステリアの剣が折れる。からん、と剣の片割れが落ちるとともに、ギルディは刀を納めていた。

 とほぼ同時に起こったタイムアップ。


「なんだ終わりか……」

「ミンティさんは露骨にがっかりしすぎです!」


 ミンティとリコリスは何処へ去っていき、次第にギャラリーも散っていった。


「剣、すまん」

「い、いえ……」


 ギルディは口では謝罪したものの、態度には出ていない。

 が、それを不服に思うようなそぶりがウィスにはなかった。


「ありがとうございました……!」

「ゲームの仲ぐらい気楽にやろう」


 ギルディはその場に留まることなく、振り返らず手をひらひらと振って去っていった。


「……」


 ウィステリアはその後ろ姿を見ていた。

 己を過信していたわけではない。しかし、ギルディというプレイヤーに対して、尊敬とも畏怖ともとれる悔恨をその眼に宿していた。


「ま、ありゃ勝てなくてしょうがない」


 エルガーはウィステリアの肩に手を置き、一緒になって後ろ姿を見ていたが、そう簡単に諦めれるウィステリアではなかった。


「宣伝はどうするのかしら」

「ん、ああ。今日はもう終わりにすっか……ギルメン大漁大漁」


 ラプラスは二人に別れを告げて宿屋に向かった。

 エルガーはウィステリアの剣を購入する約束をしてから町の外へと向かっていく。


「力が欲しいな……」


 ウィステリアはログアウトする気にも、かといって外に出たり町を散策する気分にもなれず、広場のベンチに腰かけていた。

 このギガリアという町は別名商いの町。その名に恥じぬ商業の盛んさが、広場の端を占領している。

 露天商の元にプレイヤーは集まっていて、ベンチ周りにはウィステリア一人。


「あなたは、ゲーム中最強の七本の武器に、興味がありますか?」

「!?」


 突如として目の前に現れた人物。

 美女。ではなく美男子。声も中性的で立ち振る舞いも女性らしい。しかし、180あるウィステリアよりも高いと思われる身長と、謎の雰囲気が、彼を男たらしめていた。


「驚かせてすみません。怪しい者ではないのですが……分かってもらえませんね」


 そう言って美男子は恰好を見せ付けるように広げた。

 錆びた鎧。ぼろぼろのマント。手入れの行き届いていない槍。どう見ても、怪しい。


「いや……悪い奴じゃ、なさそうだ」


 そうは言ったものの、ウィステリアは内心焦っていた。

 姿が全く認識できていなかった。

 そういった類のセンスかとも思い、悟られないよう警戒態勢をとる。


「おお、それは良かった……それで、興味はおありでしょうか」

「……な、何に」

「最強の武器です」

「……武器、ね」


 ウィステリアの思考は若干停滞しつつ、なんとか稼働していた。


「先ほどの決闘を見させていただきましたが……あなたに足りないものは武器です」

「は、はあ」

「ですから……見たと所武器を持ち合わせていないですね? よろしければ、一緒に行きましょう」

「……ど、どこに」


 ウィステリアは先ほどと同じ表情だ。

 目の前の美男子は静かに言う。


「大罪迷宮第九十三層から下……試練の層です」


 * * *


「いやーよかった。できればウィスには死んでほしかったが」

「何でミンティさんはそんなに嫌ってるんですか……」


 僕はリコリスとともに第十三の町、もとい村で休んでいた。勿論、パンを食うため。


「決まってるだろ。ウィスだからだ」

「理由になってないですよ!?」

「小僧は頭悪いぞぅ」


 頭悪いのはリコリスの方じゃないかな。ヘッズも馬鹿だ。僕以外皆馬鹿だ!


「聞き捨てならないな……僕が頭悪い? この学年三位の僕が!」

「一教科とかいうオチですか」


 あれれー? ばれちゃった☆

 数学とか無理だろ……意味わかんねえよ……。


「……少しは教えられるぞ」

「使い魔に勉強を教わりたくはない」


 そうこうしている内、いつものおっさんがやってきた。


「おいお得意様、呼ばれてるぜ」

「あんた動くのか……誰に呼ばれてるんだ?」

「初対面らしいが……ダーリィという男だ」


 その言葉が終わらない内に、僕は走った。


「ダーリィ!? うまうま!?」

「そういうアンタは血染めのミンティ」


 僕は角を曲がり、パン屋の前に出た。

 そこにいたのは、銀髪の長身男……性?


「あ、こっち系?」

「何よ、珍しい?」


 僕が手を口元に添え、あるポーズをとる。すると目の前の長身の人物は不満げな顔をしていた。


「いやいや、悪く言うつもりはないんだ。それより、何の用だ? ダーリィ……さん?」

「気を使わなくていいわよ。アタシ寛容だから。とりあえず中に入りましょう」

「ダ、ダーリィさんじゃないですかー!?」

「いゃん久しぶりぃ~! リコリス変わんないわねー!」


 なんだこの空間は……どうみても成人男性と思われる有名人が女子高生ときゃぴきゃぴしている。

 僕には理解できない!


「こんな男と一緒にいるの? やめときなさいよ」

「おいそういうのは本人の前で言うな」


 陰口は許す。

 目の前で言われるとどういう顔したらいいか分からなくなるし、そわそわしちゃう。なるべく視線を外して聞いてないふり。


「まあ、こんな男のことなんてどうでもいいのよ。実はリコリスに相談が……そうだわ弁当」


 ダーリィはうまうま弁当を一つ出現させ、リコリスに手渡した。いや、どんだけ仲良いの君ら。滅多に入手できないアイテムが向こうからやってきてるじゃん。僕の分はなしですか?


「ありがとうございます! それで、相談というのは?」

「実は最近アタシのおっかけなのか視線と気配を感じていて……そいつらを返り討ちにしてほしいの」


 オネエのおっかけなんてコアなファンがこの世界にいるのだろうか。いそう。


「ミンティさん! これは引き受けるしかないですよ!」

「やだよ面倒くさい……勝手にやれば?」


 リコリスが掴みかかってきたので、僕は丁寧に引きはがした。

 すると、ダーリィが近づいてくる。


「報酬は特製弁当を」

「引き受けた」


 こうして、僕とリコリスはダーリィの護衛を務めることとなった。

 僕達夕方からしかログインできないけど良いんでしょうか。

この回でとりあえず二章終わりですが、三章に話はそのまま続きます。

大罪はロマンってはっきりわかんだね。

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