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ログアウトできるデスゲーム  作者: 245
トッププレイヤーズ
15/40

唐突な攻略は中二病と共に

「……なあメヒティヒ。なんでこんな路地に店を出したんだ? 全然人が来ないだろう」

「ふっ、この店に、メヒティヒの魂が惹かれたからだ……!」


 いちいちマントをなびかせポーズを決めながらメヒティヒは言う。


「つまりお金がなかったってことか」

「今の言葉で理解するとは……やはりメヒティヒと組むにふさわしいのは貴様しかいないようだ」


 なんてポジティブなんでしょう。僕に分けて欲しいです。中二成分は結構です。


「ところで貴様……『大罪迷宮』に顔は出さんのか」

「そんな話はここでしないでくれ。僕はリアルで風邪ひいてて、今日はこっちでのんびりするんだよ」


 僕は向こうじゃ勉強もしないし友達もいない。こっちの方が落ち着くし、楽しめる。

 だから、地下に広がる巨大な迷宮の話を、トッププレイヤーの一人とするなんて気分じゃない。


「まあそう言うな。九十階層のドロップは眼帯だったぞ。CRI値常時10倍、欲しかったなぁ……」

「九十階層ともなると凄い装備なんだな」


 シックス・センスの表の話を全五十の町とすると、裏の話に当たるのが『大罪迷宮』だ。

 全百階層のそれは、フィールド上に点在する『断罪迷宮』という地下経路からたどり着くことができる超巨大な迷宮だ。一般プレイヤーは存在そのものを認知しておらず、偶然行くことになっても断罪迷宮で引き返すか、この世界から永久退場することになる。

 理由は、雑魚モンスターが異常に強いからだ。

 断罪迷宮の雑魚討伐可能レベルは30前後。各断罪迷宮の最深部に位置するボスモンスターに至ってはレベル40越えが推奨されている。大罪迷宮はもっと上だ。


「ふっ。お前も一年前からずっとあのハルバードと剣だろう? 遠征部隊に参加させてもらったらどうだ」


 そんなわけで攻略に行こうというプレイヤーは少なく、裏攻略組と呼ばれる者達が部隊を編成して踏破に当たっている。


「僕は嫌われ者だからな。行くなら……」

「メヒティヒの出番というわけだな」

「それは却下」


 ちなみに、現在攻略が確認されている断罪迷宮は、「夜想」「聖譚」「回旋」「奇想」の四つだ。ボスを倒せるプレイヤーが数人しかいないことと、発見されているのが少ないことが原因だ。

 それでも全ての断罪迷宮は大罪迷宮の前菜でしかないので、どれか一つ完全攻略すればいい話なのだが。


「ふふふ……即答とは……以心伝心ということか? ふふふ……」

「ちょっとずつ近寄ってくるな!」


 メヒティヒは背を低くして笑いながらゆっくりとこちらに水平移動してきた。不気味で仕方がない。


「おい中二病、いるかい?」

「ぬ……エルガーか」

「うわ、ウデガー」


 漆黒の不死鳥は蘇らないの無残な姿のドアを跨いで入ってきたのは、トッププレイヤーの一人であり脳禁右手マンの異名を持つ男だ。武器は持たずその拳のみで闘うという彼のスタイルは、両手で触れたものに強烈なノックバックと狂化の状態異常を付与するセンスによるものだ。


「あんた、ミンティか……本気で死ぬと思ったぜ? 五十階層の時は」

「ふははは! あれは良い見世物だったぞ」


 エルガーは大罪迷宮五十階層攻略時に、腕を根元からばっさりとボスモンスターによって切り裂かれたのだ。その時の叫び声が、腕がー、だ。


「再生のセンス持ちがいてよかったな」


 その時エルガーの腕は再生というセンスを持っているプレイヤーによって止血&接着して元通りになった。


「まったくだぜ……て、そんな話じゃねーんだ。『UWアンチ・ウォー』の連中が、招集だとよ。ミンティ、お前も来やがれ」

「断る。僕は風邪を引いている」

「おい貴様、UWの招集を断ったトッププレイヤー達がどうなったか知っているだろう」


 僕はそう言われて本当に面倒な連中だと思った。

 平和の使者アンチ・ウォー、通称UW。全十名で構成される小規模ギルドだが、もしもギルド対抗戦なんてものが実装されれば、中堅ギルドが十集まっても一人殺すことが叶わないとまで囁かれている。

 全員がトッププレイヤーであり、シックス・センス最強の十人だ。主に裏攻略組のまとめ役となっていて、たまにこういった招集をかける。


「秘密裏に殺される、だろ……、僕は殺されない自信がある」

「いや~、ミンティでも殺されると思うぜ。奴らのセンスは六人のしか判明してないからな。未知のセンスで瞬殺される。そして暗殺なのでばれない、と……」

「正に悪魔の所業……もしや、彼奴らが黒の軍団なのか!?」


 こいつら二人はバカな方だが、ここは言うことを聞いておこう。保身は生きる上で大切だ。

 僕は二人と共に集合場所――第一の町へと向かった。


 * * *


「毎回思うが、何で第一の町なんだ? 表の最前線で集合すりゃいいじゃん」

「お前馬鹿か。トッププレイヤーは序盤の町にいないっつう盲点を突いて隠れる為じゃんか」

「ふっ……やはりミンティは無知で矮小よな……」


 お前みたいな中二こじらせた女に言われたくないわ。

 

「では全員集まったので、今回の攻略内容について説明していきましょう」


 目の前ではテーブルを挟んで厳つい鎧を身に纏う熟練のプレイヤー――UWの一員が説明口調で話し始めていた。

 招集かけられたと思ったら、攻略会議だったでござる。

 第一の町の狭い小屋に十数人で集まり丸机の周りで椅子に腰かけている。暗がりに明かりは蝋燭を一本灯しているだけ。

 これ、余計怪しいだろ。怪しさマックスだろ。


「……で、なんで大罪迷宮に行くことになってるんだ。僕は聞いてないぞ」

「メヒティヒも聞いていなかったぞ」

「いやぁ、俺も」


 いやぁ俺もじゃねーよウデガーさん。

 そうこうして会議は確実に進み、全員が大罪迷宮まで移動することとなった。


「ばらばらに行くのか……」

「ま、固まってたら怪しまれるだろうしな」


 超強そうなプレイヤーが第一の町で歩いているのは怪しくないんですかね……。


「それよりもエルガ―。歩いて迷宮まで行くのか? メヒティヒはもうここに来ることで力を使い果たしてしまった」

「僕もだ。おぶれウデガー」


 あーだこーだエルガーに言ってやると、エルガーは先に走り去っていった。野郎……小屋に中二と僕しかいないじゃねえか。


「貴様……その、いっしょに行くか?」

「結構です」


 僕はそそくさと小屋をでる。AGI七倍をしようかとも思ったがもったいないのでやめた。


「おい! 待て!」

「待たない」


 さささっと町の外へ出て、目的地の「夜想」迷宮へと向かう。夜想迷宮は一番初めに発見された断罪迷宮で、なんと第一の町の隣の畑に入り口があるのだ。


「これか?」


 僕は畑の作物らしきものを一つ抜き、近くの川に投げる。当然作物は流されていく。

 次に僕はその抜いた作物のあった場所に自ら埋まった。

 

「こうして見ると変態のようだ」

「僕だって好きでやってるんじゃない」


 追いついたメヒティヒにこの畑に埋まったミンティ状態を見られた。

 しばらくすると何か足を引っ張られ、僕は地中へ引きずり込まれる。完全に埋まったかと思った瞬間、突然目の前が開け、僕は地面に着地した。

 途端に感じる蔑みの目線達。

 と共に話しかけてくる男、エルガー。


「おー、来たか」

「毎度これ嫌なんだけど」


 今の一連の流れが夜想迷宮侵入に必要な行動だ。他の断罪迷宮も大体同じだ。

 メヒティヒもこちらに到着すると、さきほど小屋にはいなかった女が話し始める。見れば、小屋にいたのは十数人だったの対して、ここには三十人ほど集まっている。


「んじゃ、こっからは全員で行きまっす。死なないよーにねー」


 軽い口調の女だ。彼女の身に着ける藍色のポンチョは、確か大罪迷宮六十六階層のボスドロップだ。彼女のポンチョに施された錆びたの剣の刺繍は、UWのメンバーであることを示している。


「僕は死にたくないからウデガーとメヒティヒ、前衛頼む」

「お前後衛のセンスじゃねーだろ! 俺だって死にたくねえ!」

「無論メヒティヒもだ。現在組んだパーティをミンティが永久的に解散しないというならば前衛に行こう。ああ、エルガーはいいぞ」


 僕、メヒティヒ、エルガーの三人でパーティを組んでいる。はみ出し者の集まりだ。

 どのパーティどのプレイヤーも迷宮の強力なモンスターと真っ先に対峙する前衛には行きたがらない。それも当然シックス・センスが一度の死で永久ログイン不可という仕様のせいだ。


「おい、お前ら全員殺すぞ」

「……」


 巨大な板やら棒やらを背負う男の言葉に、皆一様に押し黙る。

 場を鎮めた男の名はハーケン。UWのナンバー2のサブリーダーだ。

 

 僕たち攻略組はすぐさま隊列を組んで静かに進み始めた。

 この物語に大きく関わるかもしれない『大罪迷宮』その最深部には七つの秘宝があるとかないとか……。

 リコリス達は迷宮の存在を知らない勢ですが、絡んできます。

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