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ログアウトできるデスゲーム  作者: 245
トッププレイヤーズ
14/40

十四の町に行こう! @風邪

 第二章が始まったちゃうわけですが、この章ではミンティ君のシックス・センスのトッププレイヤー達との交流を描きます。皆さまどうぞ、お付き合いください。

 第十三の町ストーリーボス、スケアリー・サーティーンが討伐された次の日。

 月曜日の、学生達は学校にいるであろう時間帯に、あろうことか爽は自室でネットサーフィンに興じていた。


「……討伐者名リコリスか……くそ、僕のペナルティ損じゃないか」


 爽はシックス・センス公式サイトをチェックしていた。

 このサイトには、シックス・センスのお知らせや世界観説明などの他、各ステータス最高値のプレイヤー一覧や、ギルド情報、そして各ストーリーボスの討伐者の一覧が載っている。

 爽はスケアリー・サーティーンの討伐者にミンティの名前があれば、プレイヤーになんらかの印象を与えるかもしれないと思ったのだが。


「ごほっ……まあいい。今日は十四の町に行ってやる」


 御神爽は、風邪を引いている。それでもシックス・センスをプレイしようとする執念は、トッププレイヤー群として必要なものだ。

 爽はベッドに寝転がり、やや大きめの枕に頭を乗せた。

 このやや大きめの枕こそ、シックス・センスへログインする為の機器である。

 内蔵されたなんやかんやが乗っかっている頭にうんたらかんたらし、VRの世界へと誘う。ちなみにゲーム中でプレイヤーが死亡した時、この機器は対象者の脳波やもろもろを記録し運営へと送信する。以後、同じ反応を示すプレイヤーはログインができなくなるという仕様だ。


 * * *


「うわぁ……平日の昼間なのに何このプレイヤーの多さ……」

「小僧も大概だぞぅ」


 僕はベリドゥーナ(第十三の町)の宿屋で目を覚ます。窓から町を見下ろすと大勢のプレイヤーがごった返すのが見えた。

 手早く装備を寝間着から内防具と無彩のマントに変更し、ヘッズはマントの内側にねじこんで外へ出る。

 この町の至る所に設置されている美しい噴水の水は、飲める。が、僕はそんな意地汚い真似はせず水で顔を洗う。もちろん綺麗な場所のやつだ。


「城塞都市らしいぞ……楽しみだな!」

「うはー 夢が広がりんぐ」

「探索は時間かけよーぜ」


 そんなことを口走りながら三人組が僕の後ろを駆け抜けていった。

 浮かれやがって。一日経った今日じゃ廃人様のおかげで町の詳細地図が作成されているだろうに。


「城塞都市……ヘッズ、なんて名前だ?」

「壁の町ウォーフィール。ま、町というには大きすぎるがな」


 ウォーフィール(第十四の町)。一体何があるのだろうか……。さっきの三人組の気持ちは分からないでもない。


「いっちょ、行きますかね」


 僕はAGIを七倍し、全力疾走で駆け出した。

 ベリドゥーナを出て、石の湿原を横目に南下。五秒ほど走ると、一際高い影が見える。

 見るものを圧倒する鉄の壁。それは外敵への威嚇を含めているようにも感じられた。


「このまま突撃だ……!」

「おい坊主。他の皆さんが怖がってるだろうが……」


 っとストップ。僕はこの町に入っていいのか? 見たところ衛兵はいなさそうなのだが。


「ヘッズ。偵察」

「アイアイ」


 ヘッズはふよふよと町、というより都市に入っていった。いくら僕たちが町じゃないと思っても町なんだよなあ。


 道行くプレイヤー達に避けられつつしばらく待っていると、再びヘッズがふよふよとしながら帰ってきた。


「衛兵はいなかったぞぅ。どうやらここは協力な壁のおかげで魔物が入らないらしいな。自警団はいるみたいだが小僧がとっ捕まえられることはないだろうよ」

「オーケィ、じゃあ入ろう」


 僕は町の中へと足を踏み入れた。

 解放されて一日が経過しているこの町は多くのプレイヤーで賑わいを見せていた。心なしかNPCも良い表情をしている。

 武器屋防具屋、雑貨類や道具、立派な宿屋に怪しい謎の店。それらは活発なプレイヤー達が頻繁に出入りしていて、プレイヤーには、ゆっくりと仲間の歩調に合わせて歩く者も、率先して駆け回り仲間が置いてけぼりにしている者もいる。仲間なんて邪魔なものでしかないのに、何故自ら群れようとするのだろうか。

 

 早速僕は速足で路地を歩く。何か面白い店は無いものか。

 メイドin廃人の地図を見て探す。漆黒の不死鳥は蘇らない……これは店の名前か?

 

「NPCが中二病……末期だ」


 だが僕はそこへ行くことにした。漆黒という響きが良い。僕も黒いし。

 僕の歩いていた路地からさほど遠くなかったので、すぐに店に着くことができた。


「ここが……漆黒の不死鳥は蘇らない……」

「店の中も外も全然人の気配がないぞぅ」


 ヘッズがマントの中からくぐもった声を響かせた。人は……いない?

 じゃあ、僕が後ろに感じるその気配はなんなんだ。


「……探知センスに反応しないのか……そこの奴、出てこい」


 言ってみたい台詞トップテンに入る台詞を、僕は振り向かずに言った。ヘッズは驚きの声をあげた。

 

「……」

「何者だ? 僕から隠れるなんて物好きだな」


 背後で物音がし、ブーツが地面を打つ音が続く。依然として背後の人間は声を発さない。

 

「……何か言わないと、振り向いちゃうぞ」


 それでも何も聞こえなかったので、もういないのかな? なんて思いながら素早く振り向く。

 そこには、漆黒のマントを身に纏い背に黒色の大剣を背負う、妖しげな仮面を着けた少女ポーズを決めていた。ずっとスタンバっていたようだ。


「……ククッ……運命を塗り変える者メヒティヒを目にして驚かぬとは……興味深いな……人間」

「そういうのいいですから」


 僕は店に入って力強くドアを閉めた。中二病で有名なトッププレイヤーなんて見てない。

 僕がずっと握りしめたままのドアノブが急に動き出そうとしたので、精一杯の力を込めてドアノブを元の位置に維持する。


「な、何故メヒティヒを見て逃げるのだ!? ハッ……もしや貴様黒の軍団の手先か! おのれぃ殲滅してくれるわ!」


 おしい。僕が所属しているのは黒の旅団だ。


「こうなったら……天よ我に万物を切り裂く強大なる力を……地の深くで眠りし鮮血を求める穢れた魂に誓おう! 破滅の楽園ファイナル・ブラッディユートピア……!」

「えっ」


 ドアが音もたてずに真っ二つになった。飛びのくのが少しでも遅ければ僕も同じ末路をたどっていただろう。

 眼前の、大剣を構える少女は小さく口元を歪ませる。

 これが、通称漆黒のメヒティヒと呼ばれるトッププレイヤーの一人であり、さらに全プレイヤーの中でもっとも高くCRI(クリティカル)数値を持つプレイヤーの力だ。


「破滅を受け入れろ……」

「店の弁償とかいいの?」


 一応ここ店なんだけど……店員の姿が見えないが、いいのだろうか。


「馬鹿が。この店は昨日開店したばかりのメヒティヒの店……何をしてもよいのだ」

「そうだったのか……では失礼」


 だから何にもないのか……でもまさか店を開くなんて。あの戦闘狂いの鉄砲玉とか囁かれているメヒティヒさんが!


「なっ……その剣とマントの赤黒さ……貴様、血染めのミンティか!?」

「今頃?」


 僕がフルンティングを抜くと、メヒティヒは目の色を変えた。


「同志とあらば仕方がない……もしやメヒティヒとパーティを組む為ここを訪れたのか? まあそう急ぐな。メヒティヒの隣はいつでもあいているからな。今すぐにでも組もうか」

「ツッコミきれんぞぅ……」


 ヘッズが辟易とした顔で出てきた。


「なっ……悪魔、だと……? 血染めの名は伊達じゃない……」

「いや、トッププレイヤーで持ってないのアンタぐらいだよ」


 使い魔は第七の町で一匹使役することができるが、稀に適性がないとかで使い魔が現れてくれないプレイヤーが出てくる。メヒティヒもそういう輩だ。


「メヒティヒさんよぅ……アンタまだ仲間と組めないのかい」

「仲間と組めないんじゃなくて組まないのだ! メヒティヒを理解する者はそう……血染め、貴様しかいない」

「アンタと組むのはお断りだ」


 冗談じゃない。何が悲しくてこいつなんぞと組まなければならんのだ。


「おい! トッププレイヤーだぞ!? 万物を両断できるセンス持ちだぞ!? いいのか!?」

「あんたのセンスはクリティカルを上げるだけだろーが」


 メヒティヒのシックス・センスはCRIを大幅に上げる効果を持つ。クリティカルは対象オブジェクトに割合ダメージを与えるため、かなり強いセンスだ。しかし、対象のHPが高いほど成功率は低くなるため、メヒティヒはトッププレイヤーの中でも役立たずの部類に入っている。本人の性格も災いしていると思うが。


「でもしばらくここでゆっくりさせてもらおう。外いっぱい人いるし」

「うむ。人混みとはこちらの世界でも恐ろしいものよな」

「ぼっちが二人……」


 僕は漆黒の不死鳥は蘇らないで休息をとることにした。

 いまさら気づきましたが、各町を繋ぐ定時に出る馬車で、フィールド上のモンスターは遭遇しないように避けることができます。なので、ウィステリアは一度もモンスターに遭遇せずにミンティ達との待ち合わせに行けました。

 各町を全部すっとばして最前線に出ることもできますが、順番に行った方がレベルの上がり方が良かったり、情景や一応のストーリーもわかりやすいので、皆順番に町々をめぐります。

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