転生者はやっぱりチート
チートなんて無い。最初は確かにそう思っていたが、やはり転生して記憶が残っていると言うのはある意味チートだった。
小さな子供、幼児が四則演算を大人以上に出来る。これだけでもとんでもない事だ。
まあ、この所為で村では神童ともてはやされ、普通十歳から始める村の手伝い、主に父親である村長の手伝いを七歳から始めるに至った訳だが。
ちなみに、この世界の言語系スキルを初めとした文系スキルは極めて低い。
会話は出来ても読み書き計算が出来ない、スキルレベルで言えば1が当たり前。
そんな中で《四則演算LV4(最大は5)》《暗算LV3(最大は5)》を持った五歳児なんぞある意味化け物だったわけだ。
「アリエ、ネル。ここにりんごが1個だけある。俺たちは全員食べたい。どうする?」
「りんごのきにのぼって、とってくる!」
「ふたりをたおして、たべる」
「1つを三人で分けると言う考えがないのか!?」
まあ、幼馴染二人は計算以前の問題が多大にあったが。
言語に関しても、営業で必須だった英語をマスターしていた俺には簡単なものだった。
もちろん、記憶を取り戻すまでに得ていた情報が元になっていたが、未知の言語を覚えるという行為自体、高校や大学、英検受験の時に散々体験していたのでその時のノウハウが活かせた。
「アリエ、ネル。これは何と読む?」
「なに、それ?あ、みみずのえだ!」
「げぼく」
「アリエ、これは文字だよ、文字!ネル、何でそんな言葉知ってるんだ!そして読みは人だ、人は下僕じゃない!!」
二人に言語を教えるのは大変苦労した。お陰で教授のスキルレベルが大いにあがったが。
後は、サラリーマン時代に培った観察眼や交渉術、経営術なんかも町の商人や領主を越えたスキルレベルに繋がった。
「さて、久しぶりにこの質問だ、アリエ、ネル。ここにりんごが1個ある。君たちはりんごを丸ごと1つ食べたい。どうする?」
「我慢する!」
「倒してでも奪い取る!」
「アリエ、前提を無視するな!ネル、何でも力任せで解決しようとするな!」
「「じゃあ、どうすればいいの?」」
「話し合って譲ってもらう、とか。りんごを売って、もっと安いりんごを一杯買う、とかだ!」
「「おー!」」
本当に、以前の問題、性格的な要素が強すぎて、あの二人では物差しになっていない。俺の幼馴染たちはどうやら脳筋への道を歩んでしまったようだった。
兎も角だ。俺は身体能力や武芸、魔術を元とした戦闘系のチートは一切なく、完全に内政特化型チートとして転生したのだ。




