俺は異世界転生者
俺は日本という国で育った地球人だった。
フェンネル。頭大丈夫?とか心配するんじゃねーよ。と、言うかお前にだけは言われたくない。
アリエール。俺の話に割り込んでくるな。俺は忙しいんだよ。
あー、うん。端的に言えば俺は異世界に転生した元日本人だ。
この世界で生まれた村人なんだが、五歳のある時、幼馴染二人に振り回されて頭を打ってな、思い出しちゃったわけだ。
いきなりすごい量の情報が頭に流れてきたもんだから、高熱で三日ほど寝込んじまった。
両親や兄、他の村人なんかは病に掛かったと思ったらしく、ずいぶんあわてたもんだ(らしい)。
わざわざ高い金を払って、近郊の町から治療術師を雇って治療魔術まで掛けてもらったんだと。
ちなみに、幼馴染二人に関しては、あの時が最初で最後のごめんなさいを聞いたね。
よくよく考えてみると、この時の出来事がきっかけで、幼馴染たちの今の基礎が出来たのかもしれん。
アリエールは善行に、フェンネルは魔術に、とだ。
まだ五歳だった二人は、治療術師のやっていたことがとにかくすごい、と思ったんだろう。
アリエールは、(雇われたから)わざわざ数日も掛けて幼馴染である俺を助けにやってきた治療術師にいたく感動して、一日一善とばかりに他人への手助けを進んでするようになった。
フェンネルは、治療魔術ですぐ治っていく俺の怪我を見て、魔術のすばらしさに感動して、村で唯一の魔術師(と言っても生活魔術しか使えない)のばあさまに弟子入りしやがった。
その時は、ああ、俺の怪我でこいつらも良い方向に進むんだな、とか大人な思考で考えてた。
まあ、その考えが甘かったから、今、とても苦労しているんだが、主に俺が。
おっと、話が逸れてたな、俺が異世界転生者である話だった。
五歳の時に思い出したんだが、俺は日本でサラリーマンをやっていた。
営業職で、残業とか多かったが、学生時代に趣味と専攻していた歴史と経済学の知識を活かして何とか業績を挙げていた。
学生時代は、これなんの役に立つんだ?とか思った勉強も、社会に出てみればちょっとは役に立つんだな、とか思ったもんだ。
どちらかと言えば、趣味の歴史のおかげで、俺の営業トークが何とかなっていた。
歴女ブーム、バンザイだ。
ちなみに結婚はしてなかったが、彼女は、うん、居たはずだがその辺を覚えてない。
ちょっと嫉妬深いが、かわいらしい女性だった記憶もあるし、色々思い出はあるのに、最後どうなったかはわからない。
そもそも、なんで、サラリーマンやっていた俺が、異世界で生まれ変わっているのかもわからない。
始めは思い出そうとやっきになっていたが、思い出せないものは仕方ない、と割り切って今ではまったく気にしていない。