いきなり主人公な俺が死亡してしまった
勇者や魔王という存在をどう思う?と、質問を投げかけられた時、あんたならどう答る?
勇者は人々の希望で正義。魔王は人々の恐怖で悪。がほとんどの人の回答だと思う。
だけど、俺の回答は“どっちも迷惑“だ。
勇者さま?ああ、はいはい。あの自分が正しいと思い込んでる正義馬鹿ね。
思い込んでるだけであればまだ良いが、他人(主に俺)にそれを強要してくるのがいただけない。
魔王さま?ああ、あの世界で一番偉いと勘違いしている痛い人ね。
勘違いして厨二発言だけならば問題ないんだが、他人(主に俺)を巻き込んで世界征服を始めるのがいただけない。
兎も角、俺は村の改革で忙しいんだ。巻き込まずに二人だけでやってくれ、と言いたい。
「さあ、今日こそ決着をつけよう、魔王!いや、フェンネル=ノヴァースよ!!」
「ふふふ。貴方に出来るかしら、勇者?いえ、アリエール=クルセイド!!」
言ったところで、俺の、目の前に居る二人は聞いちゃくれねぇ。
と、言うか勇者さま?あなたが身に着けてらっしゃる聖鎧と聖剣から非常識なまでの膨大な聖気が溢れているんですが、そんなの振り回したりしたら、俺確実に死ぬよね?
そして魔王さま?あなたが纏っている非常識なまでの膨大な魔力と、右手の上に集まっている圧縮に圧縮を重ねた魔力を魔術に変換したら、此処らへん一帯全て吹き飛んで、俺確実に死ぬよね?
今の状態でも聖気と魔力の余波が辺りを押しのけるように圧力を振りまいてるので、軽く、いや本当だったら俺確実に死んでるし。
そうなっていないのは、俺の周りだけがあまり影響を受けない状態になっているからだ。
聖と魔が中和された“ゼロ地帯”とでも言えばよいのだろうか。
まあ、よくわからんがレベル一桁の村人でも飛ばされないように踏ん張ってられる。
つうか、飛んでくる小石とかが地味に痛い。少しずつHP的なものが減っていくのを感じる。
「フェンネルーーー!!!」「アリエーーー!!!」
あ、ダメだ、これ。流石にこれだけの力がぶつかり合えば、相当な余波が・・・
最後の記憶は、二人がぶつかり合った余波で砕けた地面、大きな岩盤が俺目掛けて飛んでくるところで、最後に聞いたのは、「ぐべぇ」とか人が発しちゃいけない声と「ぐちゃ」って音だった。
「ああ、●●よ、死んでしまうとは情けない。」
「俺は勇者じゃねーよ!ついでに魔王でもねぇぇぇええええええ!!」
これは、異世界に転生して村人になったけど、幼馴染たちがすごい存在になってしまったから、俺まで変な称号を与えられて大変な目に遭う話。