月光
暗く、冷たく、重くのしかかる部屋で、私は椅子に座り、手に本を取っていた。
といっても、自室なんだけどね。
ドアの下にある隙間を布団で塞いで、月の光が細く入るようにカーテンを微調整した状態で明かりを消し、机上のライトだけを頼りに小説を読む。
一枚のイラストではそれが美しく見えるのに、現実でそれを試してみるとどうしても予想とは何かが違って、つまらない。
多分、私が思っている幻想的な風景が足りない、いやない、と思う。
イラストではそれを助長するような描き方をするから、リアルではこんなにもつまらない。私が超絶美少女だったら、それでも変わっていたのかもしれないけど。
近くに置いてある手鏡で、自分の顔を映し出す。
相変わらずの、あまり特徴がない平凡な顔だ。
いやイケメンの顔って、全ての顔の特徴を足して割ったらなるらしいから、その法則を私に適応すれば美女か?
まあいいや。そんなことを考えて、落ち込むだけだ。
手鏡をベッドに軽くほおい投げ、読んでいたつまらない小説を閉じ机の上に置く。栞は外す。
なんてつまらないんだろう。なんでつまらない事ばかり周りにあるのだろう。
椅子の背に全体重をかけ、首をだらしなくだらーんとかける。
天井は相変わらずの天井だ。見知らぬものではない。
別になんか異世界から門が開いて、そこに行っちゃうとかそこまでのものは求めていないのだけれど、些細な変化がこの退屈な日常に紛れ込んでてもいいはずなのに。
日々同じようなつまらない理由で殺人事件が起き、台風の情報が出て沖縄の人は大変そうだなあと思ったり、全て他人事のように画面に映るそれは、目に反射し、脳が情報を処理する。
この平和で退屈な(幸せかどうかはさておき)私の周りの世界は、つまらない諍いやいじめが当たり前のように存在して。
細い線となった月の光が視界に入って、なんとなくカーテンを全開する。
「今夜は満月か……」
見知らぬ場所へ、行きたい。
ここではない何処かへ。
私たちを照らす、淡い光を放つ丸い月は、それはでっぷりと太って優しそうな人のように、微笑んでいるように見えてしまった。
習作です。何かご意見があればどうぞ。