白井 雪菜
私、白井 雪菜は試験を受けていた。試験と言っても内容はとても簡単だった。サッと周りを見た感じだと悩んでいる人は少なくない。私は心底呆れていた。
だが、私にとって筆記試験はどうでもいいものだった。私が楽しみにしていたのは次の試験、模擬戦だ。模擬戦の相手は一応大人だ。もしかした自分の目指す目標に成ってくれるかもしれない。そう思っていた。
だが、その期待はあっさりと砕かれた。すごく弱かった。あまりの弱さにため息が出てしまったほどだ。私は今度は他の受験者に注目した。もしかしたら何かあるかもしれないと。
次で最後だ。正直つまらなかったと思った。一応次で最後だからと思いながら期待せず試験官のところへ向かう男子を見ていた。かなりイケメンだなと思いながら眺めていると、その子がこちらに振り向いた。私を見ていることに気づきどうしたんだろうかと首をかしげると彼は試験官と向かい合った。
「っ!!!」
彼がやったのは一見私の真似だった。それでもすごいのだが、それを上回る。彼がやったのは言うならば私の完成系だ。私はいてもたってもいられなくなり、彼に話しかけた。
彼の名前は神威君といい、なんであんなことをやったのかと聞くと私が神威君の暇をつぶしたお礼らしい。私は取り敢えずあの行動によって彼が入学したらイジメにあうのではないかと思った。それゆえに、あの方法だとただ私の真似をしたように見えてしまう。という風に説明している途中に麗華が迎えに来た。私は彼ともう少し話したいと思っていたが迎えが来てしまいどうしようかと思っていると、彼は「用があればギルドに来い。」と言ってくれた。そしてさっさと帰ってしまった。
帰り途中、麗華に尋ねられた。
「彼の方すごくかっこよかったですが、お知り合いですか?」
「違うわよ。今日が初対面。」
「あっ!もしかしてナンパされたんですか?まぁ、雪菜様はお綺麗ですからね。」
私は麗華の勘違いに苦笑いを返した。
「違うわよ。私が彼に話しかけたの。」
「雪菜様も恋ですか?」
「違うわよ!」
ニヤニヤしながら問いかけてきたため、つい強く返してしまい、まるで真実を突きつけられ反発する人みたいに返してしまった。これでは、そうですといっているみたいだとも、おもったが、否定するとまた、泥沼にはまる気がしてできなかった。
帰ると、父様や、母様に色々聞かれた。
「テストはどうだったんだい?受かりそうかな?」
「それは大丈夫です。」
「ハハハ、悪いことを聞いたね。雪菜なら、主席も狙えるしね。」
「今回、もし、私が主席なら辞退してください。」
私がこういうと、両親共に疑問の顔をした。
「なぜ?」
「わたしより相応しい人がいるからです。」
私が言い切ると両親は驚愕している。
「雪菜でも勝てないかい?」
「明らかに手を抜いているにも関わらずわたしより練度が上だとわかりました。」
「その者の名前は?」
「神威君です。」
そこまで言うと、納得したという感じになった。もしかして、神威君の事を知っているのだろうか?
「父様は、神威君の事を知っているのですか?」
「ん?知ってて言ってたんじゃないのかい?」
「いえ、彼とは初対面なので。」
「わたしも詳しくは知らない。本人が秘匿しているからね。わかっていることと言えば、魔術も武術も両方とも優れた天才児。冒険者ギルド所属、ランクはEXの最年少記録を持つ人だよ。そうか、彼が来るのか。雪菜、実力が上の人との戦いは君をさらなる高みに連れて行くだろう。だから頑張れ。」
と言われたが、最後の方は聞いていなかった。彼のランクを聞いた瞬間に決めたことがある。明日、彼に会おうと。ギルドに来いと言われたが、訓練場に合格発表を貼り出されるから、彼とそこで話そうと、決めた。