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ショートショート集

『魅惑の宝石』

作者: ふっきー

 とある宝石商が変死をとげた為に遺産整理のために生前所有していた宝石類を売りに出すらしい。

自他共に宝石マニアと認める俺はその話を聞きつけオークション会場に出向いた。


「お次はこの1.5カラットのダイヤです!開始価格は100万スタートですっ!」


 進行係の言葉が終わると周りから相談をする音が聞こえてくる、おそらく他のバイヤーだろう。そしてすぐに買値の札が上がっていき、値段が釣り上がって行く。最終的にこのダイヤは250万で落札されていた。


 ふーむ……先程からあまりいい宝石は出てこないな。まぁ個人でやっていた宝石商なのだからしょうがないと言えばそうなのだが何か掘り出し物があってほしいと思うのは欲張りだろうか。

オークションも終わりに近づき初め期待感も少しは出てくる、大体オークションの最後の方に目玉が出てくる場合が多いからだ。


「続きましては8.7カラットのルビーです!開始価格は20万お買い得ですよ!」


 まぁそこそこ良いものでは有るようだがどうも色が気に食わない、やはりルビーはピジョン・ブラッドが一番いい色だ、あれはおそらくビーフ・ブラッドだろう。買いはしないな。

こうして次々と見送っていく内に最後の品になってしまった、今回はハズレだったかと思い変える準備をする。


「では最後の品です!なんとこの品は変死を遂げた商人が持っていたいわく付きの品です!ですが、とても美しく見るものを魅了してやみません!3000カラット超えの水晶。開始値段はなんと1万円です!」


 なんともふざけた話だ、唯の水晶が最後の品とは……まぁいわくつきの品というだけで飛びつく人もいるから一概には言えないし、オークション側も最後にネタを持ってきたというところだろう。

案の定その水晶は買値が付いていなかった、まぁオークションに来て何も買わないというのも味気ないので安いし俺が買うか。


オークション後に所定の口座に金を払い水晶が家に送られた。


「ほーまぁ水晶にしては綺麗だな」


 水晶は宝石の中でも安い代物であり小さいものは時計等にも使われる、いくらでかくてもそんなに勝ちはないのだ。

だがこの宝石にはどこか底知れぬ美しさを感じた。

成る程、人を魅了してやまない。と言う話も本当かもしれない、他にも様々な宝石を見て目が肥えている私でさえ美しいと思ってしまうほどなのだから。


今日はこれを肴に酒を飲むとしよう。


次の日、起きると何故かあの水晶のことが気になった。何故か水晶を見ないと心がそわそわして落ち着かないのだ、まるで初めての宝石を買った時のようだ。


更に次の日、もはや水晶から目を離すと不安で仕方がなくなった。なので持ち歩こうとした。が、それにはでかすぎるので諦めた。外に出なければ問題あるまい。


3日目、もはや寝るのが怖くなってきた。寝ている間にこの水晶がなくなっていたらどうしようか。そんな思いが強くなってくる。


4日目、何か食事を作ろうとしたらもう材料がなかった、仕方ないのでインスタントにする。


5日目、風呂に入ることすら億劫になってきた。その間に水晶が盗まれていたらどうするのだ。


6日目、インスタントの残りが少なくなってきた、だが買いに行く訳にはいかない。水晶が…


7日目、出前を頼もうかとも考えた。が、もし水晶を狙った泥棒だったらどうするのだ。


8日目、食料がなくなった。だが水晶は無事に有る、問題ない。


9日目、水だけで凌ぐことにする。


10日目、水晶が綺麗だ。



今日未明、マンションの一室で変死した男が発見されました。なお、この男性は宝石を多数所有していたため当初物取の犯行かと見られましたが、警察は否認。衰弱死であろうとのことです。


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