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菓子増ましかと三時のおやつ  作者: 闍梨
第二章 部活崩壊編
37/42

三十六枚目

 風紀委員。

 天槻あまつき高校生徒会に次ぐ、権力団体。

 ここ数年の動きは無いようだが、五年前のプチ学生運動を沈めたのも、風紀委員だったらしい。

 彼らは毎年五人で構成され、一般の生徒には知られないよう、秘密裏に動くらしい。

 そして、ある年から明らかになった情報が一つだけあり、彼らは名前に「色」を持つらしい。何故か分からないが、毎年そうなるらしい。

 --らしい、らしい。と言っているのには理由がある。全てよもぎ先生から聞いたものだからだ。

 この風紀委員が、僕達の、先日の騒動を聞きつけ--と言っても、どの筋の情報だよ--何やら動いているそうだ。


「じゃけぇ、あんまり派手に目立つ事するなよ……たいぎいのぁ、ワシなんじゃけぇな」


 蓬先生は本当にだるそうに、紫色した頭を掻く。


「ですが、先生。僕達は……何も」


「そーだぜ! かはっ! 俺はただ、昔の因縁に決着ケリをつけただけだぜ」


 快活に高笑いする鈴白。

 無理してるように見える……のは気のせいではないはずだ。


「じゃけえ、お前らが派手に暴れると、ワシが困る」


「どうしてですか?」


「アア!? 分からんのか! 顧問の先生として責任問題じゃけぇじゃ!」


 なんと、自己中心的な回答だろうか。

 教育者の風上にも置けないな。

 僕は先生から目線を切り、考える事をやめた。先生はぐちぐちと何か言っていたが、僕の耳には届かなかった。馬の耳に念仏だ。


「--とゆー事で、頼むの。騒ぎは絶対に起こすなよ。風紀委員に絡んだりとか、間違っても喧嘩や勝負なんてするんじゃないで」


 そう言って、先生は踵を返し長い廊下を歩き出した。



 部室に戻ると、みんなノートを開き、勉強をしていた。僕と鈴白に気付いた御乃辻は「大丈夫でしたか? 何の話だったんですか?」と質問を次々と投げかけてきたが、僕は出来るだけ上手く誤魔化し、難を逃れた。


「で、三人は一体何をしていたんだ? ノートなんか広げちゃって」


「ハッチ先輩は分かっていないなぁ! ノートを開き、やる事と言えばひとつだろう?」


「……一応、聞こうか」


「すごろく作りだ!」


「聞いた俺が馬鹿だったよ」


「ああっ! 待て先輩! 私はすごろく作りだが、ましか先輩は勉強している様だぞ」


 ましかはポッキーを咥えたまま、真剣な表情でペンを走らせていた。


「ましか……何だっていまのタイミングで真面目に勉強しているんだよ」


 ましかは顔を上げ、くりくりとした大きな目をパチパチっとしばたかせる。


「ハッチ〜。分かってないねぇ。ましかちゃんは夏休みの宿題を先取ってやっているんだよぉ」


「あれ? 宿題の範囲なんて発表されたっけ?」


「ん〜んー。だからぁ、この辺が範囲になるだろうって予想して、勉強してるんだよ」


「何だよ! その出来る奴みたいな行動!」


 確かに、こいつ毎年宿題終わらせるの早かったな……。ましかとの付き合いも長いが、ようやくカラクリが解けたな。

 僕は少々感心し、ましかの言葉に耳を傾ける。


「だぁってさぁ……やるなら早く終わらせた方がオトクだよ? 夏休みに勉強しないために、夏休み前に勉強して、貯蓄しておくんだよ。勉強溜めだね!」


「そうか。いやはや、感心だな」


「ハッチは勉強駄目だもんね!」


「言うなよ」


 掛詞も、ここまでいくと皮肉だよな。

 あなかなしや。


「--で、二人は先生と何を話していたの?」


 ましかが唐突に言ったので、思わず洗いざらい話してしまいそうになったが、なんとか堪えた。流石、僕。


「……何でもないさ。部活、頑張れってさ」


「ふーん……」


 ましかはそう言って、ノートへと目線を落とした。

 ふむう……今日の部活動は「自習」か。

 そう心の中で呟き、僕は空いている丸椅子に腰掛け、読みかけの本を開いた。

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