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菓子増ましかと三時のおやつ  作者: 闍梨
一章 部活創設編
16/42

十五枚目

七月九日金曜日。

時刻は昼休憩。

俺は生徒会長の弱みを握る為、生徒会室に乗り込んでいた。勿論、芒野に手を借りての事ではあるが。


「いやぁ、しっかし君は中々アクティブだな。大胆大胆。昼休みに会長の弱みを握る為とはいえここまでやるとはねえ」


「いいからしっかり見張ってろ芒野。お前は全く信用ならんからな」


そう言いながら、僕は会長の席を痕跡が残らないよう丁寧に詮索を始めた。


「おやまぁ、ハッチ君にそんな風に思われるとは……。予想どおりだよ。まぁ、今日を含めてあと三日。それまでに会長の弱みを握らないと本当にお終いさ」


「だから、どうしてわかるんだよそんな事が……。本当に『何でも知っている』ってえんなら会長の弱みってのを教えてくれりゃあいいじゃあねえか」


生徒会室のドアの付近で見張りをしている芒野にそう言うと、芒野は大きくワザとらしい溜息を吐き、呆れたように言った。


「全くロマンチックじゃあないな。ハッチ君。君はトランプを全て表にした状態で神経衰弱をしていて楽しいかい? 麻雀やってる時に全ての牌が丸わかりな状態なんて愉快かい? 全く、全てを知っているということは大きな責任を伴うんだよ。こんな力は本当はあってはならない能力だよ」


「ふぅん。何だかよくわからないが、分かりにくい能力なんだな」


「分かりやすいよ! 現代版ドラえもんって解釈をしてもらえればいいさ。とはいっても、僕にはキュートで世話焼きな、黄色い妹はいないんだけれどねぇ」


「いてたまるか! いたら羨ましいわ!」


兄妹っていいよなぁ。一人っ子は何かと淋しいものだ。

そんな事を思いながら、次はロッカーに整理されている色とりどりのファイルに手を伸ばす。これらは、生徒会の経費をまとめたもののようだった。


「なんだい? ハッチ君は妹萌えかい? 近年増加傾向にあるよねぇ~。妹萌え。『萌え』に関するカテゴリ、というよりもジャンルかな……。増えすぎなんだよねー。眼鏡だったり、妹だったり、ツンデレだったり、ロリだったり、ショタだったり、ツインテだったり、ショートカットだったり、三つ編みだったり、巨乳だったり、貧乳だったり、メイドだったり、猫耳だったり、ナースだったり、スク水だったりーーーーしかし、ありていに言ってしまえば『好き』イコール『萌え』という事になってきていると思うんだ。僕は『萌え』に関して深くないからさ、本当のところよく分かっていないんだけれど」


「お前は見張りをしていても口数減らねぇな。しっかり見張れよ」


僕は生徒会室をあらかた探し終えた。しかし、手詰まりだ。何も『会長の弱み』らしきものは見つけられなかった。生徒会室の時計をみると、休憩もあと五分弱だ。僕は弱みの捜索を切り上げ生徒会室を出た。

芒野が生徒会室の鍵を閉め、小さな身体を僕に向けて、おどける様に言った。


「焦らなくても大丈夫さ。ハッチ君なら、会長の弱みを握れるはずだよ」


なんというか、根拠の無い発言だったので、僕は曖昧に「おー」という腑抜けた返事を返した。何か知っている事があるなら教えて欲しいのだが、それはタブーらしいので自分で解決しなくてはならないらしい。全く使えない猫型ロボットだな。

いや、待てよ。別に一人で考える必要はないんじゃあないか?

そうだ! こんな時こその部員じゃあないか!

僕はそう思い、携帯を取り出してメール画面を開き、文章を打ち込み、一斉送信した。


「みんなへ。放課後図書室に集合」


予鈴が高らかに学校を包み込む。次の授業は移動教室だったか、そうでなかったか、分からなかったが授業に遅れる事は慣れていたので、僕は悠々と歩いて教室へ戻った。




「おお、早いな鈴白。もう来てたのか」


「お前が遅えんだよ」


「いや、僕は比較的早く図書室に着いたと思っているんだけれど……。鈴白何時にここに着いたんだい?」


鈴白の前の席に着こうと、僕は椅子を引いて腰を下ろしかけた。


「お前からメール来た五分後にはここにいたよ」


「はぁ⁉」


ビックリした!

椅子に座り損ね、少し後ろに下がってしまった椅子に頭を打った。

こいつ一時頃からここに居たのか。来るの早過ぎだろ。どんだけ真面目な部員なんだよ。こいつ実はあまり不良じゃないんじゃあないか? いや、授業をフケて図書室に来てるんだから、やっぱり不良か。


「ててて……。鈴白、僕が悪かったよ。参りました」


僕は豪快に吹き飛ばした椅子を戻しながら、態勢を整え椅子に座ろうとした。


「かはは! 心配すんな。保健室で早退手続きはしてきたんだぜ」


ガッターン!

僕はまたしても豪快にこけた。

今度は床に頭を打ちつけてしまった。僕はこけた態勢のまま鈴白に言った。


「アウトローな居残りの仕方すんなやー!」


「かはっ。いいじゃあねぇか皮肉屋よ。オレはお前と話せて嬉しいぜ! 先公にも文句は言わせねぇさ。なんたってオレが、このオレが嬉しいんだから、全ての事は丸く収まんだろ?」


「…………」


もしかしてオラオラなのだろうか? だが、嫌いじゃあないぜ。

僕は今度こそ、しっかりと椅子に座って鈴白と向き合った。すると、鈴白と話をするまでもなく図書室のドアが開いた。ましか、御乃辻、切子ちゃんの順に図書室に入ってきた。

みんなが着席したところで、僕は席を立ち、

コホンとワザとらしい咳払いを一つしてから言った。


「今から、みんなに指令を与える!」


「……?」「……?」「……?」「……?」

各々表情こそ違ったが、意見は一致しているようだ。みんな僕の言う事が伝わっていない。

参ったな。説明するのが面倒だ。

時間もないというのに。


僕は席に座り、ゆっくりと説明を始めた。


《芒野に提示された締め切り時間まで、あと五十五時間》

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