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菓子増ましかと三時のおやつ  作者: 闍梨
一章 部活創設編
13/42

十二枚目

「やぁ、君か! 待ち兼ねたよ。今か今かと待っていた所さ。全く打ち解けようにも打ち解けられないから困っていたんだよ。うん? 君は、君たちは実に不思議そうな顔をするんだね。そうかそうか、緊張しているんだね。分かる、解る、判るよー! 生徒会室の独特の雰囲気に落ち着かないんだね。しかし安心したまえよ。ハッチくん、僕は君らを食べたりはしないよ」


よく喋るな。ましかも喋るけどこいつもまたよく喋る。芒野秋(すすきのあき)。生徒会副会長。今日始めて知り合った謎の赤眼鏡野郎である。


「あの、ちょっといいですか? 話を訊いてもらっても……」


「やあやあ、硬くなり過ぎだよ。僕たちの仲じゃあないか! 何でも話したまえよ」


大仰に両手を広げながら芒野はそう言った。奥の席に座っているのは生徒会長なのだろうか、腕を組みこちらをギロリと睨んでいる。厳格な雰囲気を醸しているし間違いない。あの人が会長だ。


「あの、会長。僕たちは部活の件で話をしにきました」


「ん? 今会長は居ないよ? 彼は書記の跡部だよ」


ええ⁈ 書記だったの? もう少し自分の風体見直したほうが学校の為だと思うのだが。まぁ言わないでおこう。


「まぁ、その話は知っているよ。僕が対応しよう。生徒会副会長としてね」


どうぞ、と芒野は僕達を椅子に座るように促した。椅子に座ってから一番始めに口を開いたのはやはり芒野だった。


「いやぁ、しかし大変だねー。局切子さんが申請書の日付けを見落とすなんてねー。そして勝手に部長にされたハッチくん。じゃんけんに負けてついて行く羽目になる御乃辻さん

。今の三人は三人ともとても滑稽だよ」


「何で、二人の名前まで知っているんだ? 確か、さっきもこんな感じだったよな? お前は何を何処まで知っているんだ」


「だから言っただろう? 僕は何でも知っているのさ。でないと生徒会副会長と生徒回復会長なんて役職で任務を果たせないだろう」


「え? 今、何か言ったか? 芒野、もう一度役職を言ってくれ」


「生徒会副会長と生徒回復会長だけど?」


「前者はいい。大体分かる。問題は後者だ。なんだその不思議過ぎて何処から何処までも謎の名称を持つ役職を僕は寡聞にして知らないぞ」


「あらら、自分では有名になったつもりでいたんだけどなぁ。自意識過剰だったね。そうさ、生徒回復会長! 生徒の悩みは僕の悩み。生徒の痛みは僕の痛み。生徒の辛みは僕の辛み。ありていに言うと『学生箴言者(カウンセラー)』って所だよ! 解決した悩みは数しれず」


「へぇ期待できそうだな」


「これで計二回目だよ」


「毛も生えない程の素人じゃねぇか」


知れてる数だった。ともあれ、生徒会副会長という肩書きに間違いはないだろう。早い所こいつとの話を終わらせよう。


「宇宙ってさぁ……」


「いきなり長くなりそうな話をするな! 一々面倒な人間なんだな芒野秋」


「嫌だなあ、ハッチくん。心の友と書いて心友だろ? いけずぅすぎるぜ」


「お前とは何時間か前に始めて会ったんだけどな」


もし友達だとしても新しく出来た友達ということで新友になるんではないのだろうか。ふわふわした頭の中で僕はそう感じていた。


「ふーん。まぁ、いいか。部活の件だったね。正直、OKだよ。会長が帰るまでに申請書を書いてくれればだけどね」


そう言って芒野は僕達に背を向けて新しい部活申請書を探した。目的の物はすぐ見つかり、真っ新な申請書を僕たちに向けて一枚置いた。


「済ますなら早く済ませちゃってよ。会長に見つかったらコトだからね。言ってしまえば不正を行うわけだし、生徒会副会長の名を持って僕が対応しようって話さ。これも全て君、心友の為に動く一途な気持ちなんだよ」


僕は御乃辻にペンを借り、素早く作業に取り掛かった。申請書に書かねばならないのは部名、生徒名、所属クラス、クラブの目的というものだった。


「部名は『料理研究部』でいいのか? 切子ちゃん」


「ああ、私は一向に構わないぞ。何なら先輩がカッコいい名前を付けてくれるならそれもいいだろう」


「了承した。今まで通りでいこう。なにせ時間がないからな。時間が許せば何かいいものが浮かんだんだろうけれど」


「そうだな。私もありきたりな名前の部活ではなんだか嫌だな。先輩、その欄は後回しにしてくれないか? ギリギリまで私が案を練っておこう。御乃辻先輩もよろしく頼む!」


「はい。了解です」


さて、では生徒名だな。

僕とましかと鈴白と御乃辻と切子ちゃんだな。漢字に困る事はなかったので以外とすんなり書けた。僕の名前が一番画数が多かったな。

続いてクラス。これも比較的止まる事なく書く事が出来た。そして目的。目的かぁ、適当にでっち上げるべきだよな。こういうのは。


そして最後の文字を書こうとした瞬間に、がらりとドアが開かれた。展開としてはありきたりなのだが、やはりか。やはりそうなってしまうのかハッチよ。ドアを開けた会長らしき女子高生は動かない。


「そうだ! 先輩! 甘々部というのはどうだろう? ふわふわして可愛いとおもうのだが……」


お前の頭が甘々だ。とツッコミたかったが、会長らしき女子高生と見つめあったまま出来るツッコミを僕は持ち合わせて居なかった。


うなじのあたりでまとめた黒髪を右肩から流している。目はタレ気味なのに鋭く感じられたのは背が高く、見下ろされていたからだと思う。175センチはありそうだ。彼女は値踏みするように僕たちを見、副会長である芒野を見ながら訊いた。


「副会長? 彼等は何か御用でしたか? わ、た、し、が話をお聞きしましょうか。生徒会長であるわ、た、しが。そうでしょう? そうですよね」


やはり彼女は生徒会長だった。そして彼女から視線を外し、芒野を見る。明らかに焦っている。挙動不審も恐れをなす事請け合いのオロオロっぷりはまるで道化だった。


「聞こえなかったかしら? 副会長。生徒回復会長さん。私が対応しますわ。そうでしょう? そうですよね」


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