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菓子増ましかと三時のおやつ  作者: 闍梨
一章 部活創設編
12/42

十一枚目

七月八日(木)放課後。

我が料理研究部は永遠に不滅である。


始まってもいない部活が試合終了のゴングを鳴らしたのは七月八日木曜日、昼であった。


僕たちは放課後に再度集まり対策を(どんな対策なんだか)錬る事となった。


「うむむ。困ったちゃんだよ。ましかちゃんは困ったちゃんになっちゃったんだよ。せっかく五人集まったのに、これから沢山出来たてお菓子が食べられると思っていたのに……。うううう……」


今にもこぼれ落ちそうな涙を大きな瞳に溜めながらましかは嘆いた。そしてポテトチップスのりしお味を開封し、机の真ん中にパーティー仕様(包みを全て開いてしまう食べ方。多人数でお菓子を食べる時に便利がいいよなこれ)にしていた。そして一口投げやりに放り込む。


いやいや、喰うのかよ。というツッコミはしないでおいた。すると


「確かにそうですわね。皆さんと楽しくおしゃべりできると思っていましたのに、とても残念です」


御乃辻もましかに続いて嘆いた。

「がっかり」という文字が御乃辻の背景に見えそうな程気持ちが伝わってきた。

御乃辻もましかのポテトチップスを貰いつまんでいた。


いや、お前も喰うのかよ。というツッコミは……やはりしないでおいた。


「カンケーねーだろ。申請とか。活動してるもんは活動してるとして、理解してもらうしかねーだろ」


鈴白が無気力そうにポテトチップスを三枚程掴み、口に放り込む。


いや、だからお前もなのか。何? 今何かいったらポテトチップスを食べる大会か何かが絶賛開催中なのか?


「しかし、そうだな。理解してもらうとは、上の人間という事だろうか、鈴白先輩。では上に……つまりは生徒会に頼みに行かなければならないと、そういう事だな? 先輩」


そういってわざとらしく切子ちゃんは僕に目をやる。……切子ちゃんは動かない。


「…………。いや、ポテチ喰えよ! せっかく出来た流れを断ち切るなよ。オチってのは大事なんだぞ。局切子ー!」


微熱だろうと大熱だろうと言わせてもらおう。声を大にして伝えよう。ボケは奇数回数と決まっているだろうが! 結果としてオチがついていたから結局僕はそれ以上言わなかったけれど。


「にしても、生徒会か。妙案っちゃ妙案だよな。生徒会長に直々に直訴か。うん、どうしてなかなかいい策じゃないか。流石だよ切子

ちゃん」


「いっやぁ、ハッチ先輩に褒められるなんて光栄だ。どうぞ私の事をもっともっと褒めてくれ。なんなら踏んでくれても構わないぞ」


「誰が踏むか! この変態ジャージ娘っ!」


「出来れば陸上のスパイクでお願いしたい」


「ドMじゃねーかよ!」


何が悲しくて僕は熱をだして元気にツッコミをいれているのだろうか。皆目検討もつかない。無常感とはこの事だろうか。


「そうと決まれば、善は急げですわよ。ハッチさん。行きましょう生徒会室」


「待てよ御乃辻。わざわざ五人が五人行かなくてもいいだろ? 生徒会室がそんなに狭い場所だとは思っていないけどさ。しかも僕は今日、熱をだしているんだぜ?」


「でも、部長は来ないとお話にならないでしょう?」


……? 落ち着け僕。一旦落ち着こう。こういう時はなんだっけ? そう深呼吸だ。すーー、はーーー。


「御乃辻、今なんて?」


「部長が来ないとお話にならない。と」


「その前」


「えっ? ええと、善は急げ。と」


「その後」


「ええっ? ですから、部長が来ないと……」


「なんで僕部長になってんだよー!」


聞き直したが、どうやら僕は部長になってしまっている様だ。いつ、どこで、誰が決めたんだ。


「あっはははー! 頑張れー部長っ! いよっ、部長ぉ!」


ましかはくるくる笑っている。こいつの仕業か、と気付き皮肉の一つでもいってやりたかったがましかの笑い顔をみてそんな気分ではなくなった。こいつの笑顔は気分屋で皮肉屋な僕にとっての唯一の天敵だな。


ポテトチップスはもうなくなっていた。僕はその淋しそうな銀色を見ながら立ち上がり言った。


「行こう」



所変わって渡り廊下。

生徒会室へ向かうのは僕と御乃辻と切子ちゃんの三人となった。鈴白とましかは留守番、というよりあいつらは楽したかっただけだろうと推測がつく。


渡り廊下を渡ると三階、一階への中央階段があり、左手には僕たち二年生の教室が一組から四組まで四つ。右手には階段方から生徒指導室、生徒会室、多目的室とつづいている。


「ところで、生徒会室に手ぶらで乗り込んでどうするつもりなんだ、切子ちゃん。何か秘策でもあるのか?」


「またまた先輩は。私の様な若輩者が先輩にできるアドバイスなんてありはしない。正々堂々、威風堂々と『我が部活を潰すな』と生徒会長に直訴するだけだ」


策なしか。まぁそんな所だろうとは思っていたがどうだろう。果たして生徒会長は話のわかる人なのだろうか。そんなフワフワした不安を抱えながら(熱があるので実際にフワフワしていたが……)生徒会室のドアをノックする。


いやな予感はしていた。

薄々、否、はっきりとわかっていた。三時間目に出会った奴が言っていた。「僕は生徒会副会長」云々「困った事があれば……」云々。


中から「どうぞ」という声がして僕たち三人は扉をあける。自分達の、知らぬうちに潰れてしまった部活を復活させるために。

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