天海の渡し守
天にある海で天海。
私はそこで渡し守をしている。
天に住む星々の隙間を通り、人と人をつなぎ、私はそれで幸せだ。
「こんにちは」
そう挨拶をして、天界の住人たちの間を、ゆっくりと櫂を入れて進んでいく。
「やあ、こんにちは」
挨拶を返してくれる人もいれば、してくれない人もいる。
それでも、私は返してくれる人のことを考えて、みんなに挨拶をしていく。
ゆっくりと進んでいくにつれて、いろんな人と出会うことがある。
だからこそ、楽しんで続けている。
櫂を差し入れて、ゆっくりと、ゆっくりと前へと進んでいく。
まるで、私の生き方のようにゆっくりと。
今日も私は、櫂をこいでいく。
今日は誰と出会えるのかを楽しみにしながら。