表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神威  作者: 桐丸
序章:出会い編
5/25

朱(あか)の世界

現実を突き抜けた突然の白昼夢。夢の中で主人公は『スサノオ』と呼ばれていた。そんな彼の傍らには『アマテラス』という女と『ツクヨミ』という男が。血にまみれた三人は迫り来る闇の化身『魔』と対峙する。そうして彼らは命を落した。最後に、再会の約束を交わして。こうして夢は終わりを告げ、現実が再び動き出す――。


 世界が染まる。鮮血の赤でも絶望の黒でもない。

 迫りくる『死』の世界は突如現れた眩い『光』によってその姿を『白』へと変える。その輝きは、あらゆる闇を消し去るような強さと優しさをもって『異形』を白へと包み込む。場を満たす清浄な白の閃光。余りの眩しさに、思わず俺は瞳を閉じる。

 そうして、世界は音を取り戻す。耳には遠く人々の喧騒。

 恐る恐る、ゆっくりと瞼を上げた先。目に飛び込んで来たのは真紅を纏った夢現。

 世界はすべてを『あかく』染め、心の中を『(あか)く』染める。

 足下には白い光に包まれた異形が、赤く染まって横たわっていた。不自然なほど大きな目は見開かれ、だらしなく開かれた口からは涎と共に赤い血を垂れ流している。


「!」


 声を発する事も出来ず、釘付けになった視線は物言わぬ躯の姿へと。

 潮風が吹き抜け、夕焼けに染まる空へと吸い込まれ消えて行く。

 やがて異形はその姿を塵へと変えて、音もなくその場から消えてしまった。

 潮の香りが俺の鼻腔をくすぐる。そこに血の匂いはない。風に乗って伝わって来たのは、潮の香りに混じったほのかに香る甘い香り。

 誘われる様に顔だけを上げる。



 そこに『彼女』が居た。



 長く美しい髪が風に舞う。小さな唇は優しい笑みを浮かべ、かつての『彼女』をダブらせる。憂いを含み俺の心を貫くのは忘れるはずもない『朱色の瞳』。

 悠久の刻を越えたこの時代で、かつて約束を交わしたこの場所で、彼女の微笑む、この『朱の世界』で……、



「おかえりなさい……スサノオ」


「……ただいま、アマテラス」




 俺達の物語は、幕を上げた――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ