宣告
《――聖光情報大学前》
…
「…――に五月紅璃いるらしいぞ」
「マジ……写真撮れ――」
(……五月さん…?)
「……りしてて――…」
彼女だ
何故ここに?
「……でいいから――」
「――邪魔すんじゃねえよ!」
「……やめろ」
冷たい視線
(……男?)
…
「日下部さん!びっくりしたー!
ありがとうございます!
いつからいら――
……と無防備すぎましーー」
(……日下部?)
「……つけてたわけじゃな――」
間違いない
「あはは!
そんなの疑うわけないじゃないですかー!
でも来てくれたの――」
笑顔
本物
「恭平さんって呼んでもいいですか?」
ああ
そういうことか
(……日下部恭平…お前が――)
(……お前も…)
――大学のHP
【聖光情報大学】
表示された部活動一覧
【CyberNest】
「部長 日下部恭平」
SNS @――…
【日下部】
投稿 フォロワー フォロー
8 24 103
――メッセージ
知っているか。
五年前の廃トンネル。
被害者と五月紅璃は|
■□□■
(……通知?)
机の上で小刻みに揺れる黒い板。スマホを手に取り画面を見ると、一件のDM通知だった。シャドーのアカウントは通知をオフにしている。リア垢に届いたDMだと分かった。普段なら通知はすぐに消すが、差出人は「uC4y」
「……なんで…」
俺が口に出して呟くと、ただならぬ空気を感じ取ったのか木幡が俺を見る。……スマホを置いた。あれからあのDMは開いていなかった。震える手でもう一度スマホを手に取り、SNSを開く。恐る恐る一通のDMを開いた。
【知っているか。
五年前の廃トンネル。
被害者と五月紅璃は交際関係にあった。
守られていない声が、まだある。
掘り返せ。】
(……っ…)
その文面は、俺の中でまだ燻っていたことが合点がいってしまうようで、ゴクリと唾を呑み込んだ。
――お前を視ている
視ているという言葉が頭に浮かぶ。夜の雑踏の奥から感じた視線。まさか、最初から知っていたのか?いや……それとも、紅璃を……?
証人がふざけてリア垢にDMしてくることはあった。普段なら捨て置けるメッセージだ。だがこれは違う。紅璃の名前が刻まれている。
これは「宣告」だ。
「……恭平?」
木幡の声で我に返る。
「……見ろ」
机にスマホを置く。二人の視線が集まった。
「なになに……ww
いやこれユウセイじゃないっすか?w
ほらwww
U、C、4、y = ユ、ウ、セ、イ!!wwww」
羽原は最初は笑い転げていた。
だが突然ピタリと止まる。
「でもこれ加害者の名前でしたよね辻佑清」
部室の空気が一瞬で凍りついた。
木幡が重く口を開く
「……だから…言ったんだよ…」
「……未成年の事件に触れるなって。でもな、俺も興味本位で調べちまった。だからお前だけ責められねぇ。ここまで来た以上もう全力で紅璃を守るしかない」
羽原も頷く。
「……っすね。これはもう遊びのDMじゃないですね」
――
スマホの画面がまだ不気味に光っている。
(……もし俺が軽率に送った一通の返信で紅璃が危険に晒されたのだとしたら?俺のせいで、闇に引き込んでしまったら?)
考えたくもない未来が脳裏をよぎる。
紅璃は光だ。影である俺が、必ず守る。
たとえどんな闇に呑まれても。