星に祈る
最後にお腹いっぱい食事をしたのは何時だったか覚えていない、うだるような暑さと耐え難い空腹で意識が遠くなった所まではなんとなく覚えていた。
突然冷たい水の中に落ちて無我夢中で藻掻いた、足がつく事が分かって立ち上がると意識があった時まで暮らしていた空間ではなく知らない場所にいたんだ。
白い石造りの建物は所々に彫刻が施されていて空中に浮いた石からは細く滝の様に水が流れていたり花がさいている。
ここ、何処なんだろう。
甲高い声を上げながら髪も瞳の色も違う人が集まって来て歌うように喋る内容は知っている言語と違うようで何を話しているか全く分からなかった。
注意深く見回すと建物内部に居る人は男女共に白いワンピースの様な服を着ていた。
爺ちゃんが生きていた頃連れて行ってくれた温泉施設みたいだった。
花や鳥がモチーフの刺繍がされていて刺繍が多く複数の色が使われている人がどうやら偉い人のようだ。
恐らく一番偉い人がゆっくり語るように話してきたがやっぱり分からなくて首を傾げたら困ったような顔で自分を指差し「ヨ シュ ア」と言った。
髪も目も違うのに死んだ爺ちゃんを思い出して泣きそうになったが先に腹の虫が鳴いてしまった。
これがボクとヨシュア大司教との出会いだった。
ヨシュア爺ちゃんの指示て服を着替え温かいスープとチーズを挟んだパンが食事として出され待遇の良さを神に感謝したら祭壇に貴重な薬草が生えた。
ボクが祈ると貴重な花や薬草がポンポン生える。
ヨシュア爺ちゃんが喜ぶからボクは調子に乗って祈りを捧げ続けたんだそれが王族に歪んで伝わり攫われる結果になった。
この国の王子らしい男は女装の趣味はないと言っても恥じらっていると思い込みドレスやアクセサリーを貢ぎやたら身体に触れてきた。
ウェディングドレスを着せられることになったときは焦ったが服を脱いだ事で性別が正確に伝わった。
大騒ぎになったが誤解が解けて神殿に戻れたので本当によかった。
ボクの性別を含めた確認を怠って暴走した王子は幽閉されているようだが未だ此処の言葉は勉強中なので事の顛末に関する細かい部分は理解ができていない。
聖女と誤解されて身を守るためにも此方の事情をつたえるコミュニケーションスキルは上げる必要性を改めて感じているまずは絵本や子供向けの経典から学び始めている先は長い。
言語だけでなく痩せて肉付きの悪い身体が女性に間違われる原因と考えて腹筋や背筋を鍛えるトレーニングも独学だが始めた。
女性に間違われた長髪も切りたかったが魔力は髪に宿るという信仰があって認めて貰えなかったが男性が付ける髪飾りを神官から頂いた。
前髪をオールバックにして髪飾りを付けると何となく男ぽい雰囲気になった。
今日もボクは満天の星が見える神殿から祈る。
元の世界には未練はない。
ヨシュア爺ちゃんが笑ってくれるなら。
…終わらなかった( `ᾥ´ )クッ。
次回、残念な人。