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この教室、俺以外全員腐ってる件について

どーもどーも、引き続きお付き合いありがとうございます。

我らが主人公・**拗らせ界のエース、鷹志 たかし・かける**の、孤独と妄想とバイクの物語。今回もバッチリ拗らせてます。


なんと今回は──

ついに!ヒロイン・白峰アイリちゃんと!再会しちゃいます!


え、

「アイリよりバイク送迎出せよ」って?


うん、わかる。わかるよ。


でもちょっと待ってほしい。これは修行なの。俺の、そして読者の忍耐力を鍛えるための修行。

(あと、エモ描写に尺を使いたいだけっていう説もある)


バイクは第4話から全開になりますんで、それまでは駆のこじらせぶりを生ぬる〜〜〜い目で見てやってください。


では、そろそろ行きましょう。

地雷系ヒロイン(※当社比)との再会劇、開幕です。

昼休み。俺は教室を飛び出した。

踏みにじられたプライドは、千円以下の便所マット以下。

周囲の視線は冷めていた。ニヤニヤ笑うくせに優しいふりをした、無関心の目。


……そんな地獄みたいな空間に耐えきれず、俺は逃げた。


たった一言、「くだらない」で済ませられるような出来事。

だけど、こっちは心臓を握りつぶされるほど、痛かった。

黒歴史まっしぐらの昼休み。

そして俺の《拷問タイム》が始まった。


ぬるいサウナみたいな空気の中、先生の声はノイズ。

教科書の文字はモザイク。

世界の解像度はゴミみたいに低いまま。

俺は、完全に“ログアウト状態”だった。


──そして、掃除の時間。


「なぁ……あのクソ王子、マジでムカつくよな。次は、一緒に戦うからさ」


“陰キャ連盟”構成員No.1、眼鏡の山下が、そう声をかけてきた。


俺は、乾いた笑いをひとつだけ。


「ほぉ。観客席でポップコーン食ってたヤツが、何をおっしゃる。ショーは楽しかったか、山下くん?」


山下は俯き、小さく「ごめん……」と呟いた。


ああ、俺、今サイテーだ。

こいつは悪くない。俺の矛先は、間違ってる。


本当に責めるべき相手は――

臆病で、逃げてばかりの“自分自身”だった。


でも、教室で生き残るためには、見て見ぬフリもまた一つのスキルだ。

山下は、ただそうやって「生き延びよう」としてただけ。

なのに……ザラつく。

なぜなら、俺自身もまた、そうやって逃げてきたから。



---


放課後。

俺は、まるで万引きでもしたかのような顔で、自転車を漕いでいた。


──俺の学生生活は、無意味で、無価値で、無抵抗だった。

そう思っていた。あの日までは。


でも。


その日、ほんのわずかだけど、“世界”が揺れた。


信号待ち。


ふと見上げると、向かいの歩道に──

ボブカットに赤いリボン。猫みたいな目の女の子が、俺に向かって手を振っていた。


「ひっさしぶりだね、駆。鼻血出して以来かな?」


「……誰? マルチの勧誘なら帰ってくれ」


「白峰アイリ! 出っ歯ネズミを正拳突きで倒したヒーロー、あと、駆の初恋の女!」


……は?


あの“騒がしかった女の子”が……

ちょっと美人っぽくなって戻ってきやがった……!


「なんで、ここに……」


「えー、転校してきたの知らなかったの?ひど〜い」


「最近、武者修行してたからな」


「それ、ただのサボりじゃん。ダサ」


うわ、懐かしい。この“言葉の鉄拳”感。嫌いじゃなかった。


「じゃ、気をつけて帰ってね。駆ってさ、死んだ目してるのに、誰か助けたがる顔してる。不思議」


「一言多いんだよ」


嵐のように、アイリは去っていった。


……ただ、それだけ。

でも、それだけで、俺には十分すぎる出来事だった。


バカみたいだけど、人間ってのは、そんな一言で世界が変わる。


---


俺が向かったのは、自宅──の隣にある祖母の家。


目的はひとつ。

封印された“遺産”を目覚めさせるためだ。


錆びたシャッター。埃にまみれた鉄の棺桶。


──それが、“あれ”だった。


トヨタ・セルシオ。

黒光りする巨体。ウッドパネルの古臭さが、逆に渋い。

それはかつて、ひとりの男が駆った、暴走と救済の象徴。


「……久しぶりだな、虎太郎(こたろう)


俺の叔父。鷹志 虎太郎(たかし・こたろう)


元・個人タクシードライバー。社会不適合。無口で頑固。

だけど俺にとっては、数少ない“本物のヒーロー”だった。


……ただし、社会的には死んだも同然。


中学の春、アイリが引っ越したその日に、何かやらかして社会的に消えた。


以来、誰も彼に触れようとしない。

俺の家族すら、彼を“初期化された電化製品”みたいに扱っていた。


俺も、その日から“無色”になった。


誰にも期待されず、誰にも触れられず。


でも、心の中にはずっとあった。

どろりと濁った、ヘドロのような感情。


……それをぶつける“武器”が、ここにある。


俺の手が、セルシオのドアに触れた瞬間──


記憶が、あふれた。



あれはまだ、俺とアイリがガキだった頃


――小五の初夏。

ちょっと陽が長くなって、「俺たち、どこまでも行けるんじゃね?」みたいな万能感に脳をやられていた時期。


「ねぇ駆、今日さ、ちょっとだけ“トンネルの先に何があるか確かめに行こう”冒険しない?」

「“ちょっとだけ”って言ってるやつ、だいたい引き返さないよな」


そう言いつつ、俺はのこのこついて行った。アイリが「見たことない世界に行こう」と言うときは、だいたいロクなことがない。それでも断れないのは


……まあ、小学校男子特有のアホなプライドと、「俺しかついてってやれないしな」っていう謎の保護者感。


結論から言うと、俺たちは歩いて3時間、隣の市の河川敷まで到達した。

マジで何がしたかったんだ、あのときの俺。


「すごいね、駆。こんな遠くまで来たの、初めてだよ」


「それ、俺のスニーカーの底が限界突破した時点で言ってくれよ」


アイリはニコニコしてる。おそらく計画性はゼロ。スマホも持ってなかった。水筒すらない。冒険舐めすぎてる。


で、案の定帰れなくなって、日が暮れ始めた頃――俺の人生に“虎”が現れた。


低くうなるエンジン音と共に、黒いセルシオが川沿いに停まる。


「……お前ら、バカか?とんでもないハリキリボーイどもだな」


サングラス越しに冷えた声。ハンドルを握る虎太郎叔父さん。

親でも学校でもない、“最終兵器”が出てきた瞬間だった。


「なんでわかったの!? ストーカー!?」


アイリの第一声がこれなの、今思い出してもすごい。


「GPS。駆のカバンに仕込んでた」


「うちの親より監視が高度……!」


俺は一応反論しようとしたけど、ガチで迷子だったので、黙ってドアを開けた。

ウィン、と静かに開くドアが、やたら重く感じた。


「乗れ。今回は“未成年特例”だ」


「俺ら、犯罪者みたいな扱いされてない……?」

「違うのか?悪ガキども?」


助手席でビビってる俺の横で、アイリはちゃっかり後部座席に座ってる。

足をぶらぶらさせながら、


「でもなんかこの車、落ち着く~。虎太郎さんって、見た目は無口な殺し屋だけど、案外優しいよね?」


「それ、褒めてるのか?」


「“口が悪いけど味はいいラーメン屋”って感じ! あと常連以外には水すら出さない系!」


叔父はサングラス越しにアイリを一瞥しただけで、無言でアクセルを踏んだ。


走り出すセルシオの中、虎太郎はぼそっと呟いた。


「運転はミスれば暴力になる。プロなら責任持ってやり遂げる。当たり前だろ」

「突然何言ってんの……うちの親が聞いたら笑われるよ」

俺がポツリと言うと、叔父は鼻で笑った。


「ちなみにお前の親は“GPSつける許可”くれただけ、まだマシだろ」


「え、なにそれ……」

「お前の両親はワーカーホリックな部分がある反面、放任主義すぎるところがある。だから、俺が面倒見ないとな。感謝しやがれ」

そして、アイリは神妙な面でシートベルトを握り俺を見ていた。


「アイリ、いま絶対“うちの家系、終わってんな”って思ったろ」


「……否定はしないよ!」


そのまま、俺とアイリは無言で窓の外を見てた。

でも、その車内はなぜか、怒られてる気がしなかった。


ただ、深夜の静けさと、タイヤの音と、エアコンの風だけが流れてた。


家に着いたとき、アイリは後部座席で寝落ちしてた。


「……アイツ、ほんと自由だな」


「だから、お前が守ってやれ。お前の選んだ道でな」


それが、虎太郎から俺への“初めての運転指南”だった。

そしてその夜が、俺にとっての“最初の運ばれ”だった。



あの時、静かに開いたドアの音は、俺にとっての“始まり”だった。


虎太郎。

かつて唯一、俺の話を「聞いてくれた」大人。

笑わないくせに、バイクに乗る時だけは妙に楽しそうだった。


> 「運転ってのは、ミスれば暴力になる。

でもな、やるなら最後まで責任取れ。プロってのはそういうもんだ」




この言葉は、今でも頭にこびりついてる。

けど、もっと強く残ってるのは、その後だ。


> 「もし、やらかしたら――自分でケツ拭け。誰にも助けられなかったとしてもな。

……それが、大人の世界だ」




そう、虎太郎は“助けてくれなかった”。

いや、助け“られなかった”のかもしれない。

でも俺は、虎太郎みたいにはなれない。

破滅して終わるほど、強くない。


それでも、

あの日の、背中だけは。

俺の心に、焼き付いて離れなかった。


真似したいわけじゃない。

なれるとも思ってない。

でも、ちょっとでも――

ほんの少しでも、あの背中に近づける気がしたんだ。


そして今、俺は“武器”を手にした。


財布から取り出した、青いカード。

普通二輪免許。


金だけは出すくせに、干渉は一切しない両親の金で取った免許。

甘えだ。ずるいのも分かってる。

だけど――

俺にとっては、それが革命の引き金だった。


埃をかぶった黒い鉄の塊。

ホンダCB400 SUPER FOUR。

かつて虎太郎が乗っていた、“鉄馬”。


セルシオにはまだ手が届かない。

でも、こいつなら――乗れる。


駆け出す口元が、ぐにゃりと歪む。

笑った。いや、ニヤついた。ブサイクに、未熟に、青臭く。


でもそれでいい。


カッコつけた正義なんて、いらない。

俺の正義は、ただひとつ。


「送る」こと。


それが偏屈な叔父の教えでも、借り物でもいい。


常識? 思いやり? コミュ力?

そんなもん犬に食わせろ。


俺は事故りたいんだよ。

“家畜”のように生きるやつらを、乱暴に現実へ引きずり出してやる。


この腐った日常に、

俺の“革命”をぶち込んでやる。


そうだ、これは俺の――

身勝手な「救済」だ。


あの教室で震えていた誰か。

名前も知らねえ、でも“誰か”。


いつか必ず、迎えに行く。

セルシオじゃなくてもいい。

バイクでも、自転車でも、最悪キックボードでも構わねえ。


“送る”覚悟さえあれば、それが俺の正義。


だから俺は――走り出す。


この腐った日常を、

鉄の咆哮で蹴り倒す!



ここまでの駄文にお付き合いくださった聖人のみなさま、本当にありがとうございます。

まさかのヒロイン再会シーン、**「え、これだけ?」**って声、はい、見えました。知ってました。

でも言っときますね──おっさんとの思い出話が長いのは仕様です! 仕様なんです!!


「ヒロインよりおっさんがメインヒロインかよ」っていうツッコミ、心の中で留めてください。

あと、文句は全部、かけるに言ってください。私は悪くない。悪くないもん。


次回は──そう、革命準備編です。

燃料ガソリン満タンで、あのポンコツな彼が何を始めるのか。

革命って言葉、舐めてるでしょ? でもやるんです。それが駆だから。


「バイクでさっさとぶっ飛ばせ」って? その気持ちはわかる。

でもこちとら**“準備長い系男子”**なんです!!(たぶん)


ではでは、次回もよろしくお願いします。

君たちの心に、エンジンブン回る熱い青春を!

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