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偶然が必然に変わる時  作者: カカシ
9/21

決起会

遊びに来てくださりありがとうございます。


少しでも楽しんで頂けば幸いです。

 屋上での出来事から数日後が経ち、今日は約束の決起会の金曜の夕刻。街もどこか賑やかで、多くの人が目の前を通り過ぎていく。そんな中、待ち合わせの駅前のモニュメントの前で川蝉を待っている。まあ、自分は着替える手前、彼より先に退社した経緯があるからだ。


(趣味を理解してもらってるとはいえ、この格好って……)


 何気なく自分の格好を見ると共に、少し緊張してきてしまった。しかも思った以上に決起会が早く行われる事で、心の準備がまだ出来ていないというもの関係している。


(かなりトントン拍子で決まっちゃったもんな)


 あれから、企画の詰めもあり、毎日顔を見るようになった彼が、その時に話を振ってきたのだ。まあ、常日頃からスケジュールがほぼ空いているわけで、二つ返事ではあったが、自分の内面のメンテが滞ってしまっている。お陰で落ち着かない上に、日頃掻くことのない手汗が酷い。すぐさまハンカチを握る。そんな中、自分の前に人の気配を感じ、視線を送ると、息を軽く切らした川蝉が立っていた。


「すいません。待たせちゃって」

「い、いえ。こちらも、移動して今さっき来たばかりなので、そんなに待ってないですよ」

「なら良かった。じゃあ早速ですが行きますか」

「はい。因みに今日って」

「あっ、行く所言ってませんでしたね。この先によく大規模なイベントが催される公園があって、今日から三日間『スペイン、バル祭り』っていうのがあるんです。立ち飲みや、椅子席もあるみたいで」

「へー。バルですか。耳にはした事ありますけど、経験ないので楽しみです」


 そう言い自分達は賑わう街中を歩き出す。その間彼は、女装をする自分に対してもそれなりの気を遣い、車道側を歩く心遣いを見せる。


(出来る営業ってこういう事なんだろうな)


 女装しているとはいえ、中身が男性の自分に対してもこの気遣いだ。勿論女性にも日頃かしている行動なのだろう。


(異性から人気があるもの頷けるな)


 そんな思いで彼の横顔を見ると、川蝉が恥ずかしさを滲ませつつ、こちらを見た。


「あのーー 俺、ガン見されてます?」

「あ、いや。何か気を遣ってもらってるなって」

「? そうですか」

「歩く配置的な」

「ああ。職業がら日頃のくせで」


 すると、彼自身の顔がこちらに寄ってきたのだ。軽く彼の息が耳にかかり、一瞬体がビクリと動くも、そんな自分には気にも止めず、耳元で囁く。


「そう言えば、聞き忘れてたんですけど、その服装の時は『くるみさん』の呼び名で良いですか?」


 彼に振られるまでそんな事を考えていなかったが、確かに大事な事だ。自分は大きく頷く。するとクスリと川蝉の笑いが耳近くで聞こえる。


「わかりました。くるみさん」


 小声で言う彼の声が、どうしようもなくくすぐったい感じと、川蝉のどことなく感じる色気に顔が赤く染まった。だがそんな自分に気づく事なく、彼は目の前に見えてきた会場を指さす。


「見えてきましたよ。結構人多いなーー でも、こういうイベントは人多い方が盛り上がるので。くるみさんはこういう雰囲気ってどうなんです?」

「嫌いじゃあないですけど、そのさっき言った通りでバルっていう形式がよく……」

「大丈夫です。俺がバルの正式な楽しみ方教えます!!」


 すると、いきなり川蝉が自分の手を取る。


(えっ!!)


 驚き目を見開く自分に対し、彼は以前見せたむじゃきな笑顔をこちらに向けた。


「行きましょう!! くるみさん!!」


 そう言い、彼が走りだし、自分もそれに合わせ手を握られたまま彼の後について行った。


 その後は彼の公言通り、自分にバルの楽しみ方を教えてくれた。基本立ちのみスタイルで、ピンチョスと言う一口で、食べれる前菜が数多く並びそこから好みの物を選ぶと言う。基本お酒のつまみなので味はしっかりしていたが、どれもおいしかった。まあ、最初は彼のチョイスではあったが、全て初心者の自分に合わせて食べやすい物を選んでくれたようだ。また、立ちっぱなしは疲れるだろうからと、テーブル席を探し自身を座らせたりと、至れり尽くせり状態だった。お陰でだいぶ堪能出来たし、彼の楽しそうな顔を間近で見れた事が何だか嬉しい。

 

 そんな大満足の中、帰路へとついていた。電車はイベントの影響と、金曜日という日取りのせいで通勤ラッシュ?と見紛う様な状態だ。まあ終電まであまり本数もないせいかもしれないが、少々タイミングが悪い。だが、この電車に乗らなくては、自分は確実に借りているロッカー時間に間に合わない。そんな背景から無理矢理乗り込む車内。運良く出入り口の手すりを確保出来たものの、車内は人がひしめき合っている。そんな中、川蝉は自分の背後に立つと共に、電車はゆっくりと動き出す。だが、お酒を飲み、靴もヒールと言うことで少しの揺れでもしっかり立っていられない。その時だ。急ブレーキがかかる共に、体勢が崩れる。


(ヤバイ!!)


 そんな思いで手すりを強く握るもよろめき膝が折れると、隣の人の肩が顔に当たりそうになったのだ。その直後、背後から手が伸びたかと思うと、戸袋内柱付近に彼の手が勢いよく着く。それにより隣の人の肩がぶつかる事なく済んだと共に、自身に人の圧がかかっていない事に気づく。これだけの揺れだ。それなりに人に押されてもおかしくない。


(まさか)


 川蝉の方に視界を移そうとする前に、背後にいた彼が自分に覆い被さるような体勢で声を掛かる。


「大丈夫ですか?」

「は、はい。それよりもっ」

「俺は、平気ですから」

「あ、ありがとうござい…… ます」


 こんな覗き込まれる体勢は初めての経験であり、一気に顔が熱くなり、手すりにすがりつき、顔を足下に向けた。


(びっくりしたっ)


 速まる鼓動が五月蠅いぐらいに体全体に轟く中、ゆっくり視界を上へ移し、いまだ自身の横に伸びた手が視界に入る。それと同時にドアガラスに写り込む川蝉が目に止まった。そんな彼は、進行方向に目を向け表情を読み取る事が出来ない。だが、微かではあるが耳が赤く火照っている様に見えた。

読んで頂きありがとうございます


日頃感想諸々お伺い出来ない為、

星、いいね!、感想(どんな些細なのでも構いません)

頂けると非常に有難く、励みになります。

もし宜しければ聞かせて頂ければ幸いです。 

またワンオペ作業の為、誤字脱字諸々有り読みにくい事があるかと思いますが

ご了承ください&お知らせ頂ければ有難いです。


次回の更新は4月30日20時以降の予定です

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