嘘偽りのない真実
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少しでも楽しんで頂けば幸いです
「今日はありがとうな」
「う、うん。自分は何もしてないから……」
修羅場のような場所から解放されて1時間程が経過していた。今は博巳のアパートで息を着いた所である。とりあえず先までの緊張感がやっと抜けた感じだ。
(いやはや本当疲れた)
結局あの後、暫く睨み合った姉弟は姉が別に寄りたい場所があるという事で、解散したかたちである。勿論写真には一切目を通す事なく、持ち帰ってもらう形になった。ある意味こちらの思惑通りにはなったわけで、喜ばしい事なのかもしれないが、やはり自分的には騙してしまっている状況に後ろめたさを感じてしまう。そんな自分とは対照的に博巳は清々しい表情を浮かべ自分の名を呼ぶ。
「ちょっとコンビニいくけど、何か欲しい物ある?」
「じゃああ。お茶ならなんでも良いですっ」
「了解。後ちょっとつまみも買ってくるから、その間に」
「うん。着替えてるよ」
すると、彼はすぐさま玄関に向かうと共にドアの音がした。自分は一回大きく息を吐き、ベッドに座る。その直後一気に疲れが吹き出し、思わずそのまま寝転がり、天井を見つめた。
彼の姉と合って約二時間の出来事が走馬燈の様に頭を駆けめぐる。
(色々ありすぎだよ)
完全に自分の思考領域が狭く、その度に言葉も体も思考停止状況に追い込まれた。まあ名言通り、彼はそんな自分をフォロしてくれたのだが、そんな彼からの言葉もまた、姉の質問内容よりも衝撃に残るものが多かった。
その中でも今でもあの現状と共に鮮明に蘇る一言。
『俺はくるみと一緒になるって決めてるから』
今思い出しただけでも胸が高鳴り、顔全体が熱い。
(しかもあの顔つき…… 真剣だったんだよな)
彼と出会って会う機会も増えたせいか、あの表情の博巳は本気でそう思っていると感じだからだ。しかも昨夜の出来事からの今回の一件である。どうも気持ちが混乱して仕方がない。
昨夜も昨夜で自分がどう対応すべきか困惑するような事が多々あった。それがどれも本当に自分がそのまま受け止めてしまっていいのかわからないのだ。そう今現在、自分の中で感じた率直な思い。
『博巳は自分に好意を持っている』
それが友愛なのかもしれないが、どうしてもそれとも違うような気がして仕方がないのだ。
(そんな事あるか? こんな日頃冴えない自分に対して)
明らかに周辺の人物と比べても劣っている所しかない自分が、ハイスペックの彼から好意を寄せられるなんて思えない。第一に自分自身が独善的な解釈をしているように感じてしまう。
(やっぱりないって……)
そんな事を思うと胸がキリリと痛む。この疼くような感覚は久々だ。ここ最近は彼の何気ない言葉やしぐさに胸を熱く甘噛みのような痛みが多々あったのだが、その感覚とは違う。
(だとしたら何なんだよ……)
深い溜息をつきながら、ゆっくりと体をお越し、そそくさと服を脱ぎジーパン、半袖に着替え、続けてカツラに手を掛ける。かつらも様々な製品や付け方があるが、自分はピンである程度留める為、脱着に暫し時間がかかるのだ。それでもいつもの事なのでピンを外していく。
その時、玄関の施錠が開く音がしたかと思った瞬間部屋のドアが勢いよく開けられると同時に、姉、和葉が声が部屋に響く。
「ちょっと!! 電話したんだから出なさいよ!! こっちだって渡したい……」
彼女の声が徐々にトーンダウンしていくのがわかる。
(終わった……)
今まで生きてきた中で、最大級の惨事に自分の思考は完全停止をして体が動かずじっとその場に立ち尽くす。そんな中、彼女がじっと自分を見ている視線だけをヒシヒシと感じる事暫し。
「く、くるみ? さん?」
彼女の言葉に返答が出来ない。その直後。
「伊都!!」
博巳の叫び声が聞こえたと思いきやドスドスと足音を立て、部屋の方へと近づく音が響く。
「何で勝手にいつも入り込むんだよ!!」
「写真とは別件で渡したい物があったのよ。だいたい電話出ない方が悪いでしょ!!」
すると、彼女が言葉を切ると暫し。
「それよりも、私に話す事あるんじゃないの?」
「ふーん。同期をヒロの私利私欲の為に利用したわけだ」
「何だよその言い方っ!!」
「だってそうじゃない。あんたがおみあいしたくないから彼を利用したんでしょ?」
「俺はそんなつもりでっ」
「四の五の言うな!!」
腕を組みベッドの上にドカリと座る彼女が床にで正座をする自分等を睨みつけると、一回深い溜息を吐いた。
「後、伊都君。君もこんな馬鹿げた事受けちゃ駄目だと思うよ」
「は、はい……」
すると彼女が自分をじっと見つめる。
「喫茶店での違和感の原因がこれだったんだなって感じだけどさ…… まあ。その…… 私もこんなどうしようもない弟でも、店での態度とかである程度のヒロの事がわかっちゃうっていうか…… やっぱり姉としてはそれなりに幸せになってほしいくてね。ぶっちゃけ君とヒロには気持ちの相違があるんじゃないかなって思っちゃうんだよね」
「そ、相違ですか……」
「第一伊都君ってヒロの印象どうなのよ?」
「い、印象……」
いきなり問いに暫し自分は彼女の足下に視線を落とす。
(何と言えば良いんだっ)
これが正しい答えだと断言が出来ないとしても、今、内にある思いをそのまま言うしかない。自分は顔を上げ彼女を見た。
「自分の趣味を知られたのは偶然で、今回の事も博巳に頼まれたとはいえ、承諾したのは自分です。だから、彼をあまり責めないであげて下さい。受けた自分も悪いので」
「でもヒロの性格上断れなかったとかあるんじゃなの?」
「それはそうすね。自分も日頃から彼に助けてもらっているので。でもそれ以上に博巳から沢山の事を学ばせてもらって…… それこそ自分には無理な事を彼が意図も容易くやってしまうんです。仕事も、コミュニケーション能力もずば抜けて。この前なんて、自分が在籍している会社が長年取引ある会社の人からセクハラ紛いの事をされたら、直ぐに助けてくれたり…… 本当に心強いっていうか…… でも今はちょっとわけあって同じ会社には自分いないんですけど、定期的にこうやって博巳と会えて、話せる事がとても楽しみであり、嬉しいんです!!」
すると、彼女が瞬きを数回した矢先ニヤリと笑って見せると、横に座る彼の方に目線を移す。
「だってさ。ヒロ」
その呼び声に合わせ、自分も彼の方を見た。すると手で口で覆い自分達とは反対側を向く彼の姿が視界に入る。そんな博巳の耳は林檎のように赤く染まっていた。
「はぁああ。疲れた。いきなりアパートにおしかけるわ、しかも散々説教された挙げ句、外で一緒に飯食べるとか
言って、蓋を開けてみれば、夕方」
「はははは。怒濤の時間だったね」
あの後、和葉さんが急遽自身の予定を変更し早夕飯を奢るからと言い、ほぼ強制的に連行され一緒に食事を取ったのだ。その間の彼女はすこぶるテンションが高く、豪快に笑い、言いたい事を言ってどうにか宴は終了した。今は、そんな彼女を駅まで送り、博巳のアパートに戻っている最中なのだ。すると、隣を歩く彼に名を呼ばれそちらを見れば、少しばつの悪い顔を浮かべていた。
「それこそ御免。かなりの時間拘束させちゃって」
「良いよ。自分も楽しかったから。それにちょっと安堵もしてる」
「安堵?」
「うん。博巳の家族を騙すような事にならないで済んだから。それに今回、偶然にも自分の事バレちゃったけど、君のお姉さんはあまり気にしてなかったし」
「あーー そうみたいだな。姉ちゃん俺より柔軟性あるから」
「うん。その辺は博巳と同じだね」
「いや、和葉姉ちゃんの方が上手」
「はははは」
思わず声を上げて笑う。その直後鼻先にポツリと滴が垂れた。すぐさま空を見ると、灰色の雲が広がると共に、次々と滴が落ちてきた途端、一気に雨足が強くなったのだ。自分達は慌てて、シャッターの下りた商店の軒先に入る。
「夕立だな」
「昼間暑かったからね」
すると、自分の頭を撫でるように隣に立つ博巳が濡れた髪をハンカチで拭う。
「一気に濡れたな」
「ああ」
少し下から見る彼の濡れた髪に、仄かに匂うグリーティーの香水。いつもの如く鼓動が早く、ハッキリと打ち鳴らされる。昨日までは内心の変化の意味が曖昧だった。でも、さっき彼女の前で言葉にした事で、その答えがわかったような気がする。
天気とは裏腹に晴れ渡った思いに顔が綻ぶと、彼が不思議そうな表情を浮かべた。
「なんかこの前と逆だなって」
「そうだな」
「それに……」
その時、彼の手が、自分の額に差し掛かると同時に尽かさず彼の手首を掴み、手の甲に自身の唇をあて、上目遣いで彼を見た。
「自分にとって博巳が『特別』だってわかったから」
はにかみながら彼に告げると共に、彼の手と表情が止まる事暫し。
赤面しながら、博巳自身の濡れた髪を片手で無造作にかきあげる。そんな様子の彼を見つめながら再度博巳の手に口づけをした。その直後彼の手が先よりも熱く火照っている事を気づき、思わずクスリと笑う。すると、赤く染まった顔を彼が手で覆う。
「勘弁してくれっ」
博巳がこんなにも照れている姿を見た事がない。いつも格好いい彼とは違う一面が見れた事の嬉しさと、どうしていいかわからない彼の姿がとてつもなく可愛く、もう少し見ていたいと思う自分がいた。
最終話までお付き合い頂きありがとうございます
どうにか完走出来ましたのは遊に来て下さった皆様のおかげです
とりあえずここで終焉ですが 加筆等してもう少し深掘り出来たらと思っています
また随時、日頃感想諸々お伺い出来ない為、
星、いいね!、感想(どんな些細なのでも構いません)
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