対面
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駅前の木々は青々とし、その下で自分等は日差しを避け、彼女を待つ。
ここは博巳のアパートから数駅離れた場所。日曜日という事もあり、大きい駅ではないが、行き交う人も多い。そんな中、自分はどこか落ち着かず、肩にかけていたバックの紐を強く握り締めたまま、木漏れ日指す、頭上の枝を見つめる。これから何が起きるのか、どんな人物なのかもわからない自分は不安の二文字しか今は浮かばない。すると、博巳が自分の片肩に手を置く。
「どうしました?」
「い、いえ。ちょっと落ち着かないっていうかっ」
「まあ、そうですよね。いきなり俺の身内に会う事になっちゃってるんですから」
「ええ。それに…… お姉さんを騙す的な感じですしっ……」
「騙すかーー 表面的にはそうなるけど、俺は割と…… いや…… かなりっ」
彼の言葉が切れたかと思うと、視線が、駅改口へとシフトされると共に、自分もその目線を追う。するとその先に、博巳に似たハッキリした顔つきでショートカットの女性がこちらに向かって闊歩してきた。近づいて来ているとはいえ、まだ遠目でしか彼女を目視していないというのに、その姿がどこか宝塚の男性役を彷彿させる。まあ服装もスタイリッシュな細身のパンツを着こなしているせいだとしても、どこかオーラがある人物だ。
「来た。和葉姉ちゃんだ」
「こちらに歩いてきてるショートカットの女性?」
「ああ」
「だ、大丈夫かな?」
「俺が、守ります」
「え」
いきなりの博巳の発言に彼の横顔を見た。しかし彼は視線を変える事無く、言葉を続ける。
「何があっても俺が守ります。だから、そんなに緊張しないで。すぐに話し終わらせますから」
その言葉は揺るぎなく、彼の信念が滲み出ていた。そんな中、彼女が自分達を見つけたようで、こちらに近づいて来たのだ。自分はすぐさま視線を彼女に向けると会釈をする。
「御免待った」
溌剌した声からして、バイタリティのある人なのだと察することが出来た。そんな彼女がすぐさま自分に目を止める。
「ヒロ。この方は」
「ああ。俺の彼女」
「へえーー 飲み会で会ったんだ」
「は、はいっ」
「そのぐらいで良いだろ、姉ちゃん。くるみも困ってる。しかも同じような話しをさ」
「そうだけど、やっぱり気になるじゃん。姉としてっ。それに今までの彼女達と雰囲気違うし」
「過去の事情は持ち出すなよ!!」
「はいはい」
博巳の過去の遍歴には少しばかり気になってしまったが、自分は笑みでそれを受け答えする。
ここは、駅近くの喫茶店。あのまま立ち話もと言う事で何げに入った店だなのだ。店内はベルベットのエンジ色のソファや年期の入った調度品が店内にゆったりと配置され非常に趣がある。今時とは言い難いものの、落ち着いた感じがあり、居心地は良い。ただ、今はそんな状況ではない為、この雰囲気を楽しむ事が出来ないのが残念だ。
というもの、喫茶に入ってから怒濤の質問タイムの時間が続いているのだ。彼もかなりフォロしてくれているのだが、博巳の話しから感じ取ったままの人物で、かなりアグレッシブである。まあ彼もそんな感じなので似た者同士なのだと理解しつつも、姉の方が上手なようだ。
(営業売り上げ上位の博巳がタジタジだもんな、自分一人だったら直ぐに撃沈だよっ)
内心で大量の冷や汗を掻きながら彼女と応戦しつつ、徐にストローに口をつける。が、氷の音がカラリとした。どうやら、アイスコーヒーを飲みきってしまったようだ。緊張のあまり先から口が非常に乾く事で、度々水分を摂取していたせいだろう。また、自分も彼の姉に意識を集中しすぎるあまり、中身がなくなってしまった事に気づいていなかった。その時だ。
「くるみさん。何か飲む?」
つかさず博巳が、自分に声を掛けると共に、優しく微笑む。
「あっ、はい。では同じ物をお願いしてもいいですか?」
「了解」
すると、フロアにいたスタッフに声をかけ追加注文をすると、再度自分に視線を向ける。
「とりあえず頼んだけど、他に食べたい物とかあった?」
「い、いえ。大丈夫ですっ」
「ならいいけど、でも遠慮なく言ってねくるみさん」
「は、はい。有り難うございます」
その直後、横からの視線を感じすぐさま目先を変えると、自分達のやりとりをじっと凝視している彼女がいた。
「なんだよ姉ちゃん」
難色を露わにしながら博巳が姉の方に目を細くして見つめる。すると彼女はそのままの姿勢で小首を傾げた。
「いやね。何かさっきから思ってたんだけど、くるみさんっていつもこんな感じなの?」
いきなりの名指しで自分も即座に彼女を見ると共に、一瞬息が止まる。
「こんな感じって何? 姉ちゃん」
間髪入れる事なく、ツッコミのような早さで彼が姉に問う。すると彼女が腕を組む。
「うーん。何ていうか、よそよそしい感じがするから」
「そ、そうかっ、いつもこんな感じだし、ねえ、くるみさん」
「え、ええ。私が言うのも何ですが、口重といいますか…… だからそう捉えられてしまうかもしれませんっ」
「ふーん」
「それこそ、全員が全員姉ちゃんみたいに誰でも構わずズカズカと聞けて、話せる人種じゃないんだからな」
「何それーー その言い方だと私がデリカシー欠けてる話し好きみたいな感じじゃん!!」
「実際にそうだろ?」
「はあ?」
すると姉弟がほぼ同時に、テーブルに身を乗り出し睨む合う。すると、博巳が姉の持参した写真入りトートバックを指で指す。
「とりあえず、姉ちゃんあの写真は持ち帰ってくれよ。俺は彼女と一緒になるって決めてるから!!」
その言葉に今度は自分が彼の顔を見る。真剣な表情の彼の横顔を見つめながら、体が硬直し、そのままの姿勢で彼を見つめると共に、緊迫した空気が漂う事暫し。
「お待たせしました。アイスコーヒーでございます」
店員が一声掛けながら、コーヒーをテーブルに置いていく。だが、二人は黙ったまま、睨み続けていた。自分は怖ず怖ずと細長いグラスとストローを手に取ると、緊張のあまり乾ききった喉に、コーヒーを含ませる。その直後瞬時に潤いを取り戻すも、一切味覚を感じる事が出来なかった。
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次回の最終回、更新は5月14日20時以降の予定です




