約束
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その一週間後、プレゼンの結果通知が来た。結果は鷹森係長から伝えられ、不採用と伝えられた。勿論その後、博巳からもメールをもらい、今は、昼休みという事で、その事について休憩室で話している。そんな隣にいる彼は、いつもと違い酷く肩を落としていた。まあ、周りからの評価が高かったので、その反動が大きいのかおしれない。
(確かに、自分も採用されると思っていたからな)
あまり落胆する彼を見た事がないので、珍しくもあり、心配にもなる。その時、自分達に近づく足音に気づくと共に、声が上がった。
「川蝉、芹沢。お疲れ。結果は聞いたか?」
「菊上本部長。お疲れ様です。結果は鷹森係長から」
「俺も、さっき直属の上司から聞きました」
「そうか、それにしても川蝉。そのハリのない声は何だ?」
「いや…… そんな事は」
「まあ、仕方ない」
「仕方なくありませんよ。本部長…… 俺がもっと頑張っていればこんな結果には……」
「そ、そんな事っ」
「いや、俺がしっかりしなきゃ駄目なんだっ!!」
先日のファミレス同様彼が声を荒げる。と、彼は慌てて、『すいません』と小声で謝りの言葉を口にした。そんな博巳を自分が見つめていると、本部長が項垂れた彼の肩を数回優しく叩く。
「川蝉も芹沢も十分やった。私はそう自負する」
そう言い本部長はその場を後にした。自分は菊上を見送り、博巳を見つめる。すると、彼が鼻で笑う。
「すいません。声上げて。スゲーー 格好悪いな俺」
自分はそれに応えるように首を振る。しかしそんな付け焼き刃的対応では自分達に漂う思い雰囲気は払拭出来るわけもなく、沈黙のままその後の昼休みを過ごし解散した。
この空気は午後も、自身の中で渦巻く。プレゼンの件もさる事ながら博巳の落胆ぶりの方が気になって仕方がない。前回の言葉を踏まえてみても、多分あの発言は自分の分まで頑張ろうとしているように見えてしまう。
(自惚れかもしれないけど)
でもこんな自分の為に、あんなに懸命になってくれる事にうれしく、感謝しかない。しかし、それで良いのだろうか? どう考えても、今の自分は彼の足枷のようにしか思えないのだ。
(あの二人と肩を並べたい思っていたのに、何だよこの有り様……)
そう、これでは絶対駄目なのだ。自分にも、そして彼にとっても…… そんな思いに駆られ、ふと、ファミレスでの田所の言葉が頭を過った。もう、この手しかないと、直感したのだ。
退社後、すぐさま自宅に帰ると、田所の名刺を手に取り、数回大きくい深呼吸をし、電話を掛けた。数回のコールで彼の声がスマホ越しから聞こえる。
「もしもし、こんばんば田所さん。先日はご馳走様でした。で、いきなりの電話申し訳ないのですが、少々いいでしょうか」
自分が会社を暫く離れる事が告示されたのは二週間後だった。思った以上に話がうまく進んだ事が驚きであったが、それ以上に反響が大きく、自身でもびっくりしている。
そんな公表から、午後一番の事だった。仕事中の自分の所に、息を切らしながら、博巳が駆け込んできたのだ。
フロアのすべての人間が彼に注目する中、そんな事は気にする事なく、自身の手をひっぱる。
「鷹森係長。仕事中申し訳ないですが、芹沢借りてきます」
勢いに押され係長は、どもった声を上げ、自分はそのまま、引っ張られ一気に屋上まで連れて行かれた。ドアが閉められ、視界が街を捉える中、彼は自分に詰めよる。その顔は怒りにも悲しにも両方を滲ませた表情を向けられ、こちらまで胸が締め付けられる感覚がした。そんな中、博巳が苦々しく言葉を発する。
「今日、アパートから直接営業先に寄って、今し方出勤した。そしたらっ」
「それは大変だったね。相変わらず博巳の行動力は凄いよ」
「俺は、聞いていない」
「…… ああ。数日前会社で話したけど、今回の事は触れなかったから」
「どうして…… 話してくれなかったんだっ!!」
「…… 言うつもりではいたんだ。でも、博巳と話していると、楽しくて…… それに君の顔見てたら言えなくなってしまって…… でも結局博巳にそんな顔させてしまった……」
「…… 俺の、せいなのか?」
「博巳のせいじゃない。これは自分が決めたんだ。君や菊上本部長までとはいわないけど、博巳の隣で、肩を並べられるようになって、君がこんな思いをしないように…… まあ、今は全然同じ土俵にも上がれてない状態だけど、自分はこの先で、博巳と一緒に仕事したい。その為の一歩なんだ」
「伊都……」
「そ、それに今回はトレーニーという形で田所さんの所に3年ぐらいお世話になる形で…… その後は戻ってくるんだし」
取り繕うように、言葉を掛けたものの、今にでも泣きそうな表情を浮かべる彼に、こっちまで泣きそうになってしまう。それを奥歯を噛みしめ堪え、彼にやさしく微笑んで見せる。と、自分はゆっくり、屋上の手摺りの方へと歩む。
「せっかくのチャンス貰ったんだし自分も、成長して戻ってくるから…… 帰ってきたら、大きいプレゼン一緒にやってくれるかい?」
「…… 当たり前だろ」
すると、背後に彼が立った瞬間、博巳の大きな手が自身の右腕を強く握りしめらた。そして間髪いれずに左肩が一気に重くなると同時に、彼の髪が自身の首元を撫でた後、その肩から熱を感じた。すると、博巳が小声で囁く。
「…… 待ってるから。絶対に戻ってこいよっ」
「…… うん」
そして自分は博巳を宥めるように彼の頭に頬を擦り寄せた。
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