表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

03

結婚当初、喜助との生活は幸せだった。越後屋では鈴の染物の才能を活かし、彼女のデザインした着物は評判となった。一年後に茜が生まれると、幸せは頂点に達したかに思えた。


しかし、喜助には隠された顔があった。博打好きだったのだ。最初は小さな負け、それが次第に大きくなり、ついには店の金に手をつけるようになった。


「喜助、どうして……」


博打で負けて帰ってきた夫に問いただす鈴。しかし、喜助は酒の勢いもあり、鈴を突き飛ばした。


「うるさい!俺の金だ、好きに使わせろ!」


それからの三年は地獄だった。越後屋の経営は傾き、借金は膨らみ、喜助の暴力は日常となった。鈴は何度も実家に戻ろうかと考えたが、家族を裏切った自分が帰る場所などないと思い留まった。


父の死の知らせを受けたのは、そんな日々の最中だった。


「藍右衛門様が……亡くなられました」


知らせを聞いた鈴は泣き崩れた。最期に会うことも、許しを請うこともできなかった。葬儀にも参列できず、鈴は自分の部屋で一人、父への贖罪の涙を流した。


そして享保三年の春、ついに越後屋は破産した。鈴が目を覚ますと、喜助の姿はなく、わずかな小銭と簡素な書置きだけが残されていた。


『俺はもう駄目だ。お前と茜には申し訳ない。生きていけ。』


借金取りに追われる身となった鈴と茜は、越後屋を追い出された。行くあてもなく江戸の街をさまよった末、鈴は決意した。


「藍風堂に行くしかない……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ