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03 一文無し、元メンバーと出会う


「偽物な訳ねぇだろぉが!!!」


自室の机にドンと拳を振り下ろすと

「うるさいです!」と妹であるセルリアの家中に轟く怒号が飛んで来た。

同時に、大きな音を立ててずかずかと自室へと入り込まれる。


「でもさぁ…絶対おかしいって…」


『幻影魔法か何かの類い』


俺が見落としていただけで、実際には

似たようなコメントが続々と書き込まれていたらしい。


「自分で言うのもなんだが、俺は自分自身を強いと思っている。

しかし、それは何年もの努力の賜物。

それを否定されるとなると、少々苛立つのも仕方ない話じゃないか?」


赤の他人は人のことを簡単に傷つけて、責任を負わない。

その思いから出た言葉だった。


「兄さまは天才ですからね。

それ故に人々から妬まれるのです」


「…あれ?それなら俺は今後

どんな強大な魔物を倒しても認められることは

無く、ただの偽物扱いをされるということじゃないか!」


「兄さまは高望みし過ぎです!」


ふんと鼻を鳴らして両腕を腰に当ててセルリアは説教を始めた。


「そんな短期間で人気者になれたら苦労しませんよ!」


「じゃあなんでお前はそんな人気なんだよ」


「それはぁ…」口をもごもごと動かしている。

やがて、閃いたかのように満面の笑みで口を開いた。


「私が可愛いから?」


頬っぺたを人差し指で搔きながら

それはそれは恥ずかしいセリフを恥ずかしそうに言うもんだ。


頬が火照るぐらいなら言わなきゃいいのに。

…なんて言ったらまた怒られそうだから黙っておくことにした。


「まぁいいさ」

咳ばらいを一つして仕切りなおす。


「あの紅龍を一人で倒したんだ。

最低でも登録者は増えてんだろ」


セルリアも興味があるのか、スマホの画面を覗く。

最初のうちは興味津々に目を輝かせて、私の兄様ですから!

というのが見て取れる、これが俗にいう待望の眼差しってやつなのだろう。


「うわぁ…これは酷い」


登録者、現在一桁。

正確には五人である。丁度、二桁まで折り返し時点。

あと、セルリアは顔を悪くしながら哀れみの目を浴びせてきた。


「って馬鹿野郎!」


収益を得るには、最低でも数千の登録者が必要なため

今のままでは夢のまた夢どころの話ではないだろう。


「俺はどーやったら人気出るんだよぉ…」


机に突っ伏す姿を見てか、おろおろと慌てふためくセルリア。


「だ、大丈夫です!兄さまには私という妹がいますから!」

「それは……なんか違う気がする」


「じゃあ」とセルリアは拳を握り締め、決意を込めた眼差しで口を開く。


「まずは小さな積み重ね!兄さまには

私の依頼を手伝ってもらいます!」


「それって俺に得あんの?」


「私とコラボする権利を贈呈します!」


「お願いします手伝わせてください」


膝を地に付け、手と頭を地に擦り付ける。

プライド…そんなものは無い。

所詮兄なんてこんなもんだ。


しかし、俺を見下ろしながらセルリアは

満更でもない様子で口元が緩んでいたのは見逃さなかった。


「で、何をやれば良いんだ?」


「花収集の依頼を兄さまには手伝ってもらいます!」


「サーイエッサー!」


デコに跡が付くのも構わず、力強く敬礼をした。


…俺、良いように使われてんなぁ―――――



「ギルドに来るのも久しぶりなもんだ」


「パーティーが解散したんですよね。

ならここに来るのも久しいものですか」


「いやいや、俺が解雇されただけだよ?」


「そうでしたっけ。数週間前には確かに兄さまにはそう

聞かされましたが、でも、ルイさまが言うには解散したと」


頭にはてなマークを浮かべるセルリア。

最後にこの話題を出したのは数週間前にも遡るが、その程度で

は記憶に引っかからないのだろう。


まぁ、話を吹聴して回ることでもないから……別に良いか。


「いって!」


「きゃあ!」


「わわっ、お二人とも、大丈夫ですか?」


ギルドの扉に手を掛けようとした途端、扉が勢いよく開く。


中から一人の少女が飛び出して来てセルリアと衝突する。

少女は尻もちをついてしまい、痛そうにお尻を抑えていた。


咄嗟に少女に手を差し伸べると

その小さな掌が重なると少女は立ち上がり、軽くお辞儀をする。


「あれ…?どこかで見たことあるような」


魔導士が普段身に着ける帽子を深々と被った少女に

見覚えしかないその容姿。


「お前……ルイか」

「……っ!」


「ルイさま!今日はよろしくお願いします!」


この空間に何も感じ取れないのか、純粋無垢な笑顔を浮かべるセルリア。

普段こそ、ルイとは性格の違いから意見が揃うことなどまずないが

今日だけは、生涯に一度きり、その意見が合致したのであった。


「「お前なぁ!」」


「なんか私しちゃいました?」


「やらかしまくりよ!こんな奴となんか片時もいたくないわ!」


「いや、金ねぇから依頼受けに来ただけだし」


物言いたげに何度も口をパクパクさせるも

やがて諦めたかのように大きく溜息を吐く。


「あんたがパーティーを抜けてから…もう散々よ」


「待て、何かあったのか?」


「アレキサンダーは元々が弱いのに聖職者だからダンジョン

にでも潜らない限り役立たずだし

レイリーは役職上普段から共にできるわけでも

ないしで…あんたがいなくなった直ぐ後に解散したわ…」


だらんと垂らす鼻水に、うわづった声色。

ようやくこの状況を理解したようで、セルリアは申し訳なさそうに口を開く。


「まぁ…ここまで来て帰るわけにも行きませんし…。

みんなで頑張りましょう!」


「えいえいおー!」

ふにゃりとした、情けない声から発せられる掛け声。

結局は行くんかい。と突っ込む雰囲気でもないので憂鬱とした空気が流れる。


…大丈夫かこれ。


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