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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第似話】みィᑐιϯタ ミィッヶタ

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隠ს神၈ɭ ɿʓ村 二

 涼一(りょういち)は、しばらくぼうぜんと画面を見ていた。

 これは、過去の時代か。


 過去の時代にM区で起こっていた「神隠しの真相」。


 もしかすると、車に侵入してドタバタはしゃいでいた子供たちは、(さら)われてこうして殺された子たちか。

 服装からして時代に幅がある印象だったが、こんなことをしていた人間が何人もいたということか。


「──鏡谷(かがみや)くん? なに映ってた? こっちにも動画くれる?」

 

 土屋(つちや)の声がスピーカーで響く。

「わり。送るけど閲覧注意」

 そう伝えてから送信する。

 土屋が見ているであろうあいだ、涼一は前方の車の横にある古井戸を見つめていた。

 成仏していないということなのだろうか。

 スマホのメモのアプリを開く。

 さきほどヤケになって書きこんだ子供らの名前がならんでいる。

 全員の名前を聞けたのか。


「──あー。なるほど、なるほど」


 しばらくしてから、土屋の声がスピーカーで響く。

「キッツいわ……」

 涼一はつぶやいた。

「──やっぱ鏡谷くん、保育士さん向いてるじゃん」

 土屋がそう言う。

「んでなに、これ成仏させろとかなの? できるわけねえだろ。お不動さんのお経ひとつ知らんわ」

「──鏡谷くん、お不動さんはお経じゃなくて真言」

「何でおまえ、寺と神社の区別はつかんくせにそこは分かるの」

 涼一は顔をしかめた。

「──あれ?」

 土屋が不審げな声を出す。

「なに」


「──行員さんじゃね?」


 「えっ」と涼一が声を発するよりさきに、土屋が車から降りる。

 バンッとドアを閉める音がして、前方の車の横にいつの間にか事務員の制服姿の女性が立っているのに気づいた。

「え……おい」

 涼一も車を降りた。


 車外に出てよくよく周囲を見ると、長屋のような集合住宅が奥のほうにならんでいるのが暗い中にうっすらと見えた。

 そのずっとむこうに村のような集落。

 人の気配はないが、むかしの設定ではないのか、それとも昭和の三十年代ごろにはすでに廃屋と廃村だったのか。


 土屋が運転していた車に近づくと、行員さんことお不動さんは土屋と二言三言会話をかわしていたようだった。



「ご健勝でなによりです。つぎは巫女姿がよいとのことで。検討いたします」



 そう言い、いつものきれいなお辞儀をする。

「いまそういう事態? 巫女姿か下着姿かって問題じゃないんだけど」

 涼一は顔をしかめた。

「鏡谷くん、俺は下着とまでは言ってない」

「やかましい」

 涼一は行員さんこと不動明王の化身を睨みつけた。

 

「ご安心ください。お二方が食べていたものはこれです」


 行員が縄のようなものをさしだす。

「なに」

 涼一は目をすがめた。

 先っぽに仏具の独鈷(とっこ)っぽいかざりがついているものの、ふつうの縄っぽい。

「ええーと」

 土屋が運転席側のドアを開け、車内からスマホをとりだす。

 検索している画面を、涼一は上体を少し曲げてのぞいた。


羂索(けんさく)


 土屋がそう言うと、行員がにっこりと笑ってピースする。

検索(けんさく)したら羂索(けんさく)ってシャレじゃないよ?」

 土屋が言う。

「うるさいよ、分かってるよ」

 神仏のピースとか何だかなと涼一は顔をしかめた。

「ミミズですら食わせて殺生するわけにいかんからとか、そういう?」

 土屋が行員にそう尋ねたが、行員はにこにことほほ笑んでいた。

倶利伽羅剣(くりからけん)とともにお不動さんの重要アイテムだってさ、鏡谷くん」

「あそ」

 涼一はそう返事をして、行員を睨むように見た。


「んで、どうしてほしいの。今回は」


 ついポケットに両手を入れて(すご)むような体勢になる。

「ここでもあんた(まつ)られてたのか? あんなガキども作るまえに(さら)うやつらに仏罰でも下せねえの?」

 

「鏡谷くん、言いかた」

 土屋がスマホをいじりながら(とが)める。

「だって思わねえ?」

「まえにも言ったじゃん。べつの次元にいるから介入しにくいんでしょ」

「ようそれで納得できんな、おまえ」

 涼一は吐き捨てた。


「お二人とも、かくれんぼがたいそうお上手で安心いたしました」


 行員がかわいらしくほほ笑む。

「……一生やってろってか?」

「お使いください」

 行員が羂索(けんさく)を差しだす。

「こんな縄でどうしろっての」

「では健闘を祈ります」

 行員が折り目正しいしぐさでお辞儀をする。 

「あのなっ……」



「もういいよぉ」



 行員が唇の横に手を当てて、通る声を上げる。

 さすがの土屋も「おいおい」という顔で上空を見上げた。

 奥にある古い長屋のような建物。

 その建物から湧いて出るように、丸まった格好をした巨大な鬼が現れた。






読みに来てくださる方々、ありがとうございます。

また、ブクマや評価をくださった方々ありがとうございました。


この小説は公式企画『夏のホラー2024』で書いたもので、いちど完結したのですが、2年ほど前から和風ホラーの長編が書きたくてネタを探していたもので、「これでよくね?」としばらく続きを書くことにしました。(和風に入るのか知りませんが)

今後もお付き合いくだされば幸いです。


今年も残すところあとわずかとなりました。

よいお年をお迎えください。  路明



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