縣道ዘ号➡️Yヰン夕ーቻェンジ
「たぶん解決じゃなくて進行のほう」
涼一は答えた。
自身の頬を触ってみる。
触れる。
爽花のいう実体化しているというやつなんだろうか。
カーナビの電波ジャックはここら全域なのか、カーナビ以外にも電波ジャック現象が起きているのか。
自身の見た夢は、けっきょく何なのか。
不動明王は関係してるのかしてないのか。
「あっちはたぶん泣いて情報収集どころじゃねえわ。こっちでやるか、しゃあない」
涼一は自身のスマホでエックスを検索した。
カーナビにふたたびひどいノイズが入る。
「アタラシイからだモラウべ」
「あたラしイからだ。ひやッハー」
「やかましいわ!」
涼一はカーナビを怒鳴りつけた。
「鏡谷くん、ナビおねがい」
土屋がそう声をかける。
「おう」
涼一はエックスの画面を閉じた。
「鏡谷くん、俺のポケットにスマホあるからさ」
土屋が言う。
「そっちのスマホはさやりんちゃんからの連絡用にして、マップとエックスは俺のスマホ使ったら?」
「ああ、そっか」
涼一は、土屋のスーツのポケットのうち手前のほうをさぐった。
「そっちじゃない。逆」
土屋が運転しながら言う。
「わり」
土屋とハンドルのあいだに割りこむようにして手をのばし、ポケットをさぐる。
「借りるわ」
スリープ状態の土屋のスマホを起動させる。
「エックス開いて、さやりんちゃんフォローしといて」
「ん?」
涼一は二つのスマホを両手に持ち交互に見た。
「なに女子高生なんかフォローすんの?」
「さやりんちゃんのとこに来たリプ定期的に拾えるほうが効率いいだろ」
土屋が答える。
「ああーなるほど」
「……つかおまえ、思いつかなかった?」
「副アカつくってフォローしてとか言われたけど拒否した」
土屋が「あ゙ー」と意味不明なうめき声を出す。
「とりあえず行員さんか不動明王の情報ないか? 何かその辺に突破口ありそうな気が」
「行員さんか」
涼一は画面をスクロールして土屋のアカウントのタイムラインを見ていった。
「 "ナゾの行員さんて巨乳なんですか?” 」
何げに目についたリプを読み上げると、土屋が顔をしかめる。
「……巨乳なの?」
「ちょっと巨乳」
涼一は答えた。
「もちょっと具体的に」
「んー」
涼一は、行員の着たベストのひしゃげ具合を自身の胸元でなぞってみた。
「こんな」
土屋が無言で前方を見すえる。
「……何かそんな場合じゃないな」
「んだな」
涼一はあらためてスマホの画面を見た。
「 "なんか友達が津田 梅子さんのホログラムが二人いたってゆってて、五千円のですけど、これってあんま聞いたことなかったから” 」
「五千円もあるのか。まあいちばん遭遇率低そうだからかな」
土屋がつぶやく。
「乗っとる相手さがすためにホログラムにとり憑いたなら、そりゃ札がいくらのものかの区別はないな」
涼一はスマホ画面をスクロールした。
「 ”うちのお母さん、千円札見て北里さんが三人いたってゆってて、そしたら三人に増えてるんだけどこれ自分が糖質になったの?" 」
土屋が無言で前方を見る。
涼一はとくにコメントせず画面をスクロールした。
「 "うちのお姉ちゃんの顔、北里さんの顔に見えんだけど。新紙幣のへんな話聞いてたから、もしかしてこれ怖いんだけど”」
画面をスクロールする。
「 "うちの爺ちゃん、きのういきなり紙幣笑ってるってニタニタしだしたんだけど” 」
涼一はゆっくりとスクロールした。
「……どいつもこいつも、母とか姉とか祖父とか書けないのか」
「鏡谷くん、問題そこ?」
土屋がウインカーを出す。
山あいの道ではじめての信号だ。
道のさきには、やっと鉄道橋らしき建造物が見えてきた。
顔を上げ前方をチラッと確認して、涼一はもういちどスマホ画面に視線をもどした。
ゆっくりとスクロールする。
「 "ネカフェの個室にあらわれたっていう人魂なんですけど”」




