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「──えっとね。なんか "あっ、どもども。FF外から失礼します。いやー女子高生にリプするなんて初めてで緊張(顔文字)。あ、こっちオジサンだけど、うあーそっ閉じしないでそっ閉じしないで(顔文字)(汗)” 」
爽花が受けとったリプと思われるものを棒読みで読み上げる。
涼一は顔をしかめた。
「それ……何かの伏線か?」
「──ん? リプだから伏線とかないよ?」
爽花が答える。
「要点だけ話せって言ったばっかだろうが! アホのOLになりたいのかゴラァ!」
「……鏡谷くん、話の流れつかめないんだけど。どんな流れでそうなった」
運転席の土屋が眉をよせる。
「人手不足のおりに人事課に異動になって新卒の面接やらされてる気分だ」
涼一は吐き捨てた。
「分かるような分かんないような……」と土屋がつぶやく。
「どっかで下りてコーヒーとか飲んで落ちつく?」
「……運転交代したいわけじゃないなら直行しろ」
涼一は答えた。
「一時間ちょいくらい平気だけどさ」
まあだいたいそうだろう。自分もそうだ。
涼一は自身が持ってきたカバンを開いて確認した。
「なに」
「いや……免許証持ってきたかなって」
「勘弁して。関係者のなかで俺しか車出せないとかキツい」
土屋が顔をゆがめる。
「いや引きこもりの拓海くんとかが……そういやいくつなんだ?」
「引きこもりでしょ? 頼んで車出してくれんの?」
土屋が眉をひそめる。
「……そういや、もしかして警察官とか交通の関係省庁とかも乗っとられ多数になったら、治安ムチャクチャになるのか?」
涼一は目を見開いた。
乗っとろうとしている亡霊たちは、処刑場で処刑された者たちだ。
むかしの時代にありがちな冤罪などではなく、もとから悪行を何とも思わない面々らしい。
土屋が前方を見据えたまま「んー」とうなる。
「そうなったら免許不携帯で車転がしても文句言われなさそう」
「んだな」
涼一はそう返事をした。
相手が違法上等なら、こっちもある程度は見逃されそうだ。
「そのへんはラッキーって取っとくか」
「──りょんりょん、続き読んでいい?」
爽花が割って入る。
「おう、話せ」
「──あのね、要点とか分かんないからぜんぶ読むね」
結局そうなるのか。涼一は眉をよせた。
「──”小生もS県出身ですけど、処刑場ならむかし血洗島にあったはず(顔文字)。現在はS駅のちかくに小さいお不動さまの祠を建てて、処刑された人たちの霊を鎮めてる。さてそこだけど――あ、続きますねー(顔文字)" 」
「お不動さま?!」
スピーカーで聴いていた土屋が声を上げる。
「やべえ! つながった、りょんりょん!」
「……いきなりのその呼び方やめろ」
涼一は顔をしかめた。
「お不動さまがどうかしたか」
「おまえどこの孫! お不動さまって、不動明王だろうが!」
涼一は目を見開いた。
「……お不動さまって不動産業と関係あんのかと子供んときから思ってたわ」
「なにそれギャグ? 鏡谷くん」
「──つづき読んでいい? りょんりょん」
爽花が言う。
「おう。基本、こっちに関係なく読んでいいけど」
「──んと。”続きです(顔文字)。祠は小さいけど、近くにT橋って橋があるからそこ目印にすればたどり着けると思われます。今のT橋は元々水路があった所に明治二十二年頃建設されまして。S県議会の建設予算の記録もちゃんと残ってます。レンガ造りでガッシリした立派な橋で、土木学会の現存する重要な土木構造物三千にも選ばれてる――あ、またまた続きまーす(顔文字)" 」
「……その土木三千とかは必要な情報か?」
涼一は顔をしかめた。
「ん? 三千世界なんたらとかじゃなくて?」
土屋が口をはさむ。
「関係ない。知らんけど」
「──つづき読むよー」
爽花が声を上げる。
「──"そのT橋ですが、江戸時代に千鳥という旅の遊女が悲恋を苦に身を投げたという話がありまして、ここのお不動さまの祠は処刑された罪人と、遊女の千鳥の霊をいっしょに鎮めてるんですね。この千鳥の悲恋というのも実に悲しい話で、ときの代官の”……」
「千鳥?!」
涼一は大声を上げた。
「なに、どうした」
土屋が前方を見ながら言葉を返す。
「元カノとおなじ名前か!」
「──えーりょんりょん、土屋さんがいっしょにいるのに!」
「ネカフェに出た亡霊らが言ってたんだよ。”ホログラムと造幣局のこと千鳥さんに聞いた" って!」
爽花と土屋が同時に沈黙する。
「……なんでそういう情報出さないの、鏡谷くん」
「──りょんりょん後出し多すぎぃ! 人のこと言えないじゃん!」
「オカルト経験値まったくねえんだよ! どれが重要とか分かるか!」
涼一は声を上げた。




