表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第逸話】新紙幣怪談 ㇱン ㇱㇸィ ヵィダン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/202

ネットカフェ 三

「──何か、おまえと話してると脱線多くね?」

 涼一(りょういち)は眉をよせた。

「とくに気にならないけど」

 爽花(さやか)が答える。

「俺はすげえ気になる」

 話のテンポが合わないのは出逢った当初からか。

 相性が悪いんだろうな。しょうがないなと思う。


「つづき。──んで二回目に見た夢。血まみれの川はおなじ、木の台もおなじ。レンガの橋はなくて、こんどは木の台から起きあがって、白い建物をめざして歩いてた。──まわり見たら、何十人か何百人かって人が、いっせいにおなじ建物めざしてる。足元は河原で、血でビチャビチャ」


「──血でビチャビチャ」

 爽花が復唱する。

「──うーん」

 そう(うな)る。

「──りょんりょん、仕事もしかしてブラックなの?」

「ストレスでこんなの見たことねえよ」

 涼一は顔をしかめた。何をいきなりストレス性の悪夢の路線に持って行ってるんだ。


 

「もういい。要点だけ言う──その白い建物ってのが、そっちにある造幣局だった」



 涼一はそう言った。

 やっとこの話にたどりついたか。ここだけ話せばよかったとため息をついて壁に背をあずける。

「画像検索したけど、夢で散ってた桜も造幣局に植えてあるのとおなじ種類っぽいやつだった。紅いやつ。ソメイヨシノみたいに白くない」

「──うーん」

 爽花がもういちど(うな)る。

 言いたいところまでは話したから、あとはどうとでも脱線しろと思う。



「──たぶんさあ、行員さんて味方じゃないかなあ。りょんりょんに何か警告して、安全なとこに逃がしてくれた?」


 

 涼一は、耳にスマホを当てた格好で軽く目を見開いた。

「ん? 何そのとつぜんの結論的な」

「え、だって、霊体験でそういうの聞いたことあるから」

 爽花が答える。

「霊体験……あんのか、そんな話」

「生霊に取り憑かれた人の体験談でさ、夢のなかで生霊に襲われたと思ったら、とつぜん夢の中が一家団欒(いっかだんらん)の場面になったんだって。──えらい霊能者さんが言うには、それ守護霊が先祖の霊的なナワバリにぶっ飛ばして安全圏に逃がしたってこととかだっけ」

 「だっけ」と聞かれても知らんがなと思う。

 ニュアンスは分かった。

 何か知らんがオカルト界隈としてはありえる話なのか。


 味方と聞いて、つい納得するほうに気持ちがかたむいてしまう。

 少なくともあの行員に恐怖感やイヤな感覚はなかった。


 あらためて思い出すと落ち着くと言うかホッとするというか。

「敵じゃないのか……? 少なくともホログラムの亡霊とは別勢力?」

「──味方のふりして騙してくる悪霊ってのもあるみたいだけど」

 爽花がそうつけ加える。

 どっちなんだよと涼一は内心で問いただした。




 午前十一時。


 爽花との通話を終えて約三十分後。

 同僚の土屋(つちや)からようやく電話が入る。

 涼一はあぐらをかいたまま、フラットシートのうえに無造作に置いたスマホを手にとった。

 

「──おう。待ってた」


 スマホを通話の状態にし、そう応じる。

「──んで、いまどこ」

 土屋が問う。

「駅前のネカフェ」

「──何ていうかさ、きのうからサッパリ話見えないんだけど」

「じっくり説明するから、できるかぎり早く来てくれ」

 涼一は答えた。

「──急ぐの?」

 土屋が問う。

「一分一秒争うとかじゃないけど、まあまあ急いだほうがいい」

 涼一はそう答えた。


「──つかさ、ほんとうに鏡谷 涼一(かがみや りょういち)サン?」


 土屋が怪訝(けげん)そうに問う。

「来りゃ分かる」

 涼一はそう答えた。

 来たら渋沢 栄一(しぶさわ えいいち)の顔と対面することになるんだが、そこはパニクったところをガッチリ押さえつけて強引に話を聞かせるしかないなと思った。

 体格も同じていど、年齢も同じやつ相手だ。

 ふいをついて問答無用でやるしかないなと、利き手を開いたり拳を握ったりした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ