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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第逸話】新紙幣怪談 ㇱン ㇱㇸィ ヵィダン

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24/202

K県K駅 一


 考えが(まと)まるまえに着いちまった。


 涼一(りょういち)は、停止した新幹線の窓の外を見た。

 ホームの大きなアナログ時計は、もうすぐ八時二十分。

 女声のアナウンスと男性の駅員の声が飛び交うホームを、せわしなく行き来する人々。

 あのなかに新紙幣のおかしなホログラムを見た人はいるんだろうか。

 目をこらして一人一人の顔を見たが、ホログラムにとり憑かれた自分には、ほかのおなじ状況の人はきちんともとの顔に見えるはず。

 

 つまりとり憑かれた人間に、ほかのとり憑かれた人間をさがしだすのは基本ムリということか。


「なんだそれ……」


 涼一はボソッとつぶやいた。

 ゲームやマンガなんかだと、逆にとり憑かれた同士のほうが見分けやすいってのないか。

 

 爽花(さやか)みたいに周囲から情報を得て、なおかつ関係施設に潜入して受付の呼び出しを盗み聞きするくらいやらないと同じ被害に遭ってる者を特定できないということか。

 亡霊たちがとり憑いた人間同士で手を組むのを阻止するためにそうしているのか、それともたまたまの現象なのか。


 車掌が通路の向こう側から歩いて来る。

 

 こちらを向いて口を開きかけた。

「あっ、いま降ります」

 涼一はそわそわと席を立った。

 とりあえず降りて、会社と自宅アパートの様子を確認しに行ってみるか。

 仮に血洗島(ちあらいじま)にもういちど行くとしても、着いちまったんだ、気になるところは全部見て行こうか。

 



 ホームに降りる。

 世界も驚いた新幹線の八分間お掃除テクニックを窓越しにながめながら、階段に向かう。

 自宅アパートはどうなっているのか。

 そちらも乗っとられているのだろうか。

 貴重品はあまり置いていないが、それでもイヤすぎる。


 実家は。

 

 まあ、それはいいかと涼一は思った。

 高校卒業以来、面倒くさくていちども帰ってない。

 爽花とちがって家族が自分の異変に気づくことはないだろう。

 成りすましたやつもとうぜん実家に顔なんか出すはずがない。


 そういえば、爽花の友だちが造幣局(ぞうへいきょく)で救急車に運ばれるところを見たとか言っていたんだっけ。

 

 何で造幣局なんだ。怪異に関係してるのかしてないのか。


 階段を登りきり、改札を出て駅のテナントのショッピングセンターに出る。

 まだ開店まえで、ほとんどの店舗がシャッターをおろしている。

 歩いている人はなくガランとして静かだ。

 涼一は、スマホを取りだし造幣局を検索した。

 ショッピングセンター内のベンチにいったん浅く腰かける。


 スクロールして画像のアイコンをざっと見た。


 まだ開店前なのに唐突にドラッグストアの幼児声のテーマソングが流れてくる。

 何がボクはアヒルのお薬屋だっての。アヒルが薬剤師免許とれたらだれも苦労しねえわ。


 自分でもよう分からん毒づきをしながらアイコンを選ぶ。

 ほんとうにS県にも造幣局があるらしい。画像から入ったら公式のホームページが出てきた。

 支局か。

 敷地内の桜並木がきれいだとかいうコメントと、満開の並木の画像が表示される。

 


 濃い色彩の桜の並木。赤に近いくらいの。

 ソメイヨシノではない。ほかの種類なんだろうか。



 ここで倒れるわけはない。造幣局の支局なんてあることすら知らなかったのだ。

 行くわけがない。


 念のため造幣局の建物を画像検索してみる。


 いくつか出てきたアイコンのうち、いちばん分かりやすそうなものを表示してみた。

「……あ?」

 涼一は目を見開いた。


 ひと目見て分かる、きのうの気味の悪い夢に出てきた現代風の建物。


 夢のなかで、血でびちゃびちゃになった人々が怨みごとを呟きながらゾロゾロと向かっていた先。

 あの工場か何かの施設のような、真っ白な建物だった。





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