表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第碌話】鬼ਟੋᖾこƽʖˋ ォニサン ⊐チㇻ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/259

目隱ს၈鬼 二

 アパートの階段を土屋(つちや)のサポートでころびもせず何とか昇りきり、共用通路と思われる通路を歩く。


 ややしてから、玄関ドアの鍵を開ける音がした。


「どぞ」

 土屋が背中を押す。

 屋内にすこし入ったあたりで、かたわらから靴を脱ぐような衣ずれの音がしたので、ここが三和土(たたき)かと判断して靴を脱ぐ。

「段差、気をつけて」

 土屋がまた腕をとる。

()り」

 これをさきほどから何回言っているのか。

 あきらかにこれを言うしかやれることがない。

 

 以前来ているので、間取りは分かる。

 

 水場であろうところを通り、奥のリビング兼寝室に通される。

 まえに来たときの、モダンな和室を頭に思い描いた。

「まえと部屋のものの配置は変わってねえ?」

 涼一(りょういち)は問うた。

「まえに来たのって、いつだっけ」

「葬式ループしてたやつらに絡まれたとき」

「あーあのときだっけ」

 土屋が返す。


「別れた彼女があのあといくつか私物とりに来たけど、それ以外は変わってないんじゃないかな」


 涼一は何か複雑な心持ちで眉をひそめた。

「え……ちょっと待て。俺が泊まったとき、彼女の私物あったの?」

「何個かだよ。二、三個。ヘアブラシとかクッションとか」

「……俺、使ってないよな」

「覚えてない」

 土屋が平然と答える。

 あっちが気にするんじゃないんだろうか。

 それとも別れた彼女だから、気にしていようがいまいがどうでもいいのか。

 人のもと彼女なのになぜか心配になる。


「いいから座れば? とりあえず落ちつきたいでしょ」

 

 二の腕を引かれる。

「ここ」

 下のほうから腕を引かれ、かがまされた。

 ポンポンとざぶとんかクッションをたたく音がする。

「ここ座って。すぐ横にちゃぶ台ある」

「あ、ああ。悪り」

 以前きたときの部屋のものの配置を思い浮かべる。

 モダンな和室に合わせた感じの今風ちゃぶ台か。

「いや。まえと配置とか変わってないなら、あとはだいじょうぶだと思う」

「そ?」

 土屋が片腕をとり、ちゃぶ台の天板らしきものをさわらせる。


「ここちゃぶ台。んじゃ俺、ごはんの用意するから」

「……おう」


 ありがたすぎる。

 このさい、みそ汁の味噌(みそ)を入れる順番がちがうなんてささいな問題、ぜったいに文句は言わないつもりだ。

 土屋の手が離れる。

 たたみの上を早足で歩く足音がする。足音はすぐに水場の床を歩くときのものに変わった。

「おまえ、目ぇ見えない人間の補助うまくね? やったことあんの?」

「ないよ。見えないの想像したらこうかなって思ってやってるだけ」

 なるほど。

 会話がとぎれると、とたんに手持ちぶさたになる。

 スマホ、スマホとカバンを置いた位置を探そうとして、この状態ではスマホも見られないことに気づく。

「まじか……」

 ちょっとした情報収集すらムリとか。


鏡谷(かがみや)くんのほうが想像足んなくね? その状態だと風呂もトイレも俺が補助することになるんだけど」


 土屋がそう告げる。

 涼一は動作を固まらせた。

 たしかにそうだ。

「まじか」

 口元が引きつる。

「俺のほうは平気だけど。弟のおしめとっかえるとこ見てたクチだし」

 土屋が言う。

 いきなり乳幼児と同じカテゴリーかと複雑な心境になる。

「やばすぎる……」

「まあ、俺がいられるときはいいんだけどさ。会社行ってるときはどうしようかなって」

 涼一は(ひたい)に手をあてた。


「……そんときはしゃあない。実家帰るわ」

「病院で検査して、何かの疾患が見つかったとかストレスとか言われたなら、そのほうがいいと思うけどさ。――もし怪異が原因なら、それじゃ解決しないし」


「……あーそか」

 ため息をつく。

 とりあえずあしたは休暇とって病院で診察受けるしかないか。

「んじゃごはんにするけど」

「……おう」

「ごはんも介助いるよな」

 涼一は固まった。

 それもか。

 げんなりとちゃぶ台の天板に突っ伏す。

 

「やばい、落ちこむ。せめて見えなくても自分で食えそうなのない?」

「食えそうなのか……」


 土屋が、考えているのかしばらく沈黙する。

「こう、フォークで刺せば何とかなるようなの」

「冷凍のたこ焼きならあるけど、チンする?」

 土屋がそう尋ねる。冷蔵庫を開ける音がした。

 


「つか、まえたこ焼きやっぱ買ってなかった?」



 「たこ焼き好きなの?」とつづけようとした。

 スッと目隠しのようなものがとれ、土屋のアパートの部屋の光景が目のまえに広がる。

「えっ」

 LEDライトのまぶしさに目をすがめた。

 シンクの横で冷蔵庫を開けている土屋がこちらを向く。


 

「見えんだけど……」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ