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本日は、涼一と土屋がつとめる株式会社わたのはらの女性社員用の制服。
ネイビーブルーのベストとタイトスカートに、青系のストライプ柄のリボン。
「本日はお日柄もよく」
行員の霊池がにっこりと笑う。
きれいな姿勢で礼をした。
やっぱり二人でそろうように仕組まれてたかと涼一は眉根をよせた。
「あ、お世話さまです」
土屋がうしろのシートのほうに体をひねり、あいさつする。
「うちの女性社員の制服もよくお似合いで」
「あんた、いちばんはじめに現れたときそこの銀行の制服着てたじゃねえか」
涼一は社屋の目のまえの銀行を指さした。
「そこのやつ着回しとかしねえの?」
「経費ゼロなんだからいいじゃん、鏡谷くん」
土屋がそう返す。
たしかにホトケが着る服に費用なんかかかってないだろうなと涼一は口元を引きつらせた。
「きょうはどういったご要件で」
「言っとくけど、あんたのお使いさんとやらは二度とやんねえからな。何べんも言うけど、仏さまが頼みごとするなら偉い坊さんとか馬車馬のようによう働く政治家とか」
「目隠し鬼はごぞんじですか?」
行員が問う。
いつものごとく噛み合わない会話だ。
「 “鬼さんこちら、手の鳴るほうへ”ってやつですか?」
土屋が尋ねる。
「俺はやったことないな。ルールはだいたい知ってるけど」
涼一は答えた。
「ああ、俺も。小学校のとき教室でやろうとしたら、あぶないって先生に止められてPTA総会でも取り上げられちゃったよね」
「なにそれ、知らない」
涼一は眉をよせた。
「あんときいっしょにいなかったっけ? ――いっしょにやってたの誰だっけ。まことくんだっけ? そうすけくんだっけ?」
土屋が宙を見上げる。
「……何か、まえのかくれんぼの話を思い出すな。あんな感じの話?」
涼一は顔をしかめた。
井戸に投げ捨てられた大勢の子どもの霊を思いだす。
あのとき成仏から漏れた子はいなかったのかと思うと、いまだに引っかかる。
「あのときの子どもたちは残らず成仏いたしました。ご安心ください」
行員が脈絡もなくにっこりと告げる。
涼一は、助手席シートの上でわずかにあとずさった。
心のなかを読まれたんだろうか。さすがホトケ。
土屋がこちらの顔を見る。
「……何だ」
涼一は横目で見返した。
「いや。なに考えてたのかなって」
「水着とエプロン」
涼一は座り直した。
「この人、こういうこと言ってめっちゃやさしいですからね。俺は行員さんが選んでる理由が何か分かってきた気がしますけど」
土屋がこちらを親指で指す。
「何おまえ。詐欺にあいそうなやつ」
涼一は吐き捨てた。
日々営業トークで上っ面のほめ言葉しか言わんやつのどこがやさしいんだかと思う。
「ともかく、もうあんたのお使いさんとかやらねえから」
「ご健闘をお祈りいたします」
行員がこちらの話にまったくかまわず、座った姿勢で礼をする。
「だからホトケが何に祈るっての」
涼一はそう返した。
まあ、こちらの世界に合わせてしゃべるさいのただの定型文なんだろうと思うが。
行員が、座った姿勢でドアのほうに移動する。
後部座席のドアハンドルに手をかけてドアを開けた。
「ちょっと。ちょっと待ってもらえますか」
土屋が、少々堅い口調で行員を呼び止める。
意外に思えて涼一は土屋のほうを見た。
行員が後部座席から脚を投げだした格好でふりむく。
「できれば、今回は何に関わるのかとかその攻略法とか、もう少し教えてもらえますか? こっちもけっこう鏡谷くん危険にさらしちゃってるんで」
「……おう」
涼一は何となく合いの手を入れた。
土屋のほうが自身の身代わりとかやらされてるんだが。こいつそこは言及しないのかと思う。
行員がにっこりと笑い、口の横に手をあてた。
「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ――つーかまえた」
ささやくように告げる。
「あのなあ、あんた毎度毎度、ちょっとかわいくてホトケでかわいいからってなあっ!」
涼一は助手席のドアハンドルに手をかけた。
いそいで降りて行員を引き止めようとしたところを、土屋がスーツをつかんで止める。
「待ーった。鏡谷くん、つぎの営業あるんでしょ。ここで気絶して遅れたらどうすんの!」
涼一はわれに返った。
「お、おう」
「座って」
土屋がそう指示する。
涼一は言われるままドアを閉めて助手席シートに座り直した。
後部座席を見やる。
行員の姿はなかった。




